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成田空港拡張差し止め裁判―「原告適格なし」に徹底反論

閉廷後開かれた報告集会で反対同盟と顧問弁護団が、空港機能強化・第3滑走路を阻む決意を表した(1月26日 千葉県弁護士会館)

千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で1月26日、空港拡張差し止め裁判が開かれた。この裁判は、三里塚芝山連合空港反対同盟が国と成田空港会社(NAA)に対し、B’滑走路の2500メートルへの延長(2006年)、第3誘導路建設(2010年)の違法性を追及し、さらに現在「空港機能強化」として進められるB’の再々度の北延伸による3500メートル化、C滑走路(第3滑走路)新設の工事差し止めを求める裁判である。
被告の国はこの間、天神峰の市東孝雄さん、東峰の萩原富夫さん以外の原告には「原告適格がない」(権利や法律上保護された利益を侵害される者にあたらない)という許しがたい反論を提出していた。これに対し反対同盟顧問弁護団は今回、一人ひとりの名前を挙げて徹底的に反論した。
芝山町の白桝に住む伊藤信晴さんの家は、航空機騒音防止法第一種区域にあり、日々耐え難い騒音に苦しめられている上、空港機能強化策によって移転の対象とされている。相川勝重前町長は、「空港はいずれ24時間化される」などと近隣で放言し、芝山町の廃村化に手を貸しているありさまだ。
成田市の空港に近接する地域の太郎良陽一さんの住居は、騒音被害の上、離陸後の飛行機が頭上を旋回し、いつ墜落するかとの恐怖・威圧感にさいなまれている。もともと豊饒な農業地帯だったが、現在はB’滑走路延長工事にかかわるダンプなどの車両が多数、粉塵、排気ガスをまきちらしながら我が物顔に往来し、地域破壊が進んでいる。

円錐(えんすい)表面の概念図。NAAの資料より

A滑走路南に位置する三里塚、南三里塚地域に住む北原健一さん、戸村和代さん、野平清子さん、さらに空港西側の宮本麻子さんについても、騒音被害の上、航空法に基づく制限表面(円錐表面)の上に出る高さの建物の設置や樹木植栽を禁止されている(違反すると50万円以下の罰金、航空法第150条)。
被告が言う「被害があっても耐え忍べ。国には裁量権がある」は暴論であり、当然にも全員に原告適格が認められるべきだ!

10人を超える国、NAAの代理人たちは無表情を装っているが、機能強化策の罪深さを突きつけられ内心動揺している。
次回期日を5月24日、次々回を9月13日として閉廷した。
千葉県弁護士会館において伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。
弁護団が発言に立ち、空港の存在によって深刻な被害を受けている現実を無視した「原告適格なし」の主張を強く批判した。空港機能強化策、とりわけ第3滑走路建設によって、空港周辺住民が被る生活破壊、人権侵害が今後果てしなく進められる。しかし、国、NAAは、「航空法は住民の個別の利益を保護するものではない。騒音も法律違反にならない」と居直り、航空需要が右肩上がりを続けるとの願望にしがみつきながら「空港の公共性」を強弁し続けている。このような空港の存在を根本的に問う裁判として闘い抜く決意を、弁護団は明らかにした。
また、耕作権裁判において現地闘争本部員の同志たち3人の証人採用が決定し、次回2月19日に尋問が行われることが報告された。

空港機能強化(B’滑走路北延伸と第3滑走路建設)によって、周囲の農地、森林、地形、水系がことごとく破壊され、周辺住民は追い出され、敷地面積2倍、全長12キロの巨大空港が造られようとしている

原告・当事者として、太郎良さんが発言した。「菱田東地区では田んぼの中に重機が入って第3滑走建設工事が始まっている。大事にしてきた場所が空港やそれに関連する工業団地、物流基地、ゴルフ場などの建設でめちゃくちゃにされていく。こうした『金もうけ第一』の空港づくりの対極で、われわれの反対運動は農業、自然、人の命の大切さを守ろうとしている。三里塚闘争のこういう主張を大上段に掲げて訴えていきたい。成田の発着の過密化は明白で、降りたくても降りられない飛行機がいつまでも上空を旋回するようなことが常態化しており、羽田事故と同じことがいつ起きてもおかしくない」
続けて伊藤さんが発言した。「自分も原告適格なしとされたが、国は移転対象となる騒音の基準値を低くしてまで、住民の追い出しをはかり、空港地域から反対者の存在を一掃するつもりだ。今でさえ騒音がひどいのに、機能強化が実行されれば朝5時から深夜1時までもっと激しい騒音にさらされる。芝山町と北総台地全体の存続にかかわる地域破壊であり、その背後には成田の軍事空港化、兵站(へいたん)基地化の攻撃がある、われわれは空港反対運動の原点に立ち戻り、周辺住民とともに闘おう」
最後に関西実行委の安藤真一さんと動労千葉の山田護さんが連帯発言を行った。山田さんは、成田空港の地上業務で深刻な人手不足が生じている現実を指摘し、「だったら拡張など直ちにやめるべき」と弾劾し、2・11国鉄集会への結集を呼びかけた。(TN)

NAA代理人、①上野至 ②長屋文裕 ③森本哲也 ④西岡環

 

 

 

スケジュール
◎耕作権裁判 2月19日(月)耕作権裁判 正午 千葉市中央公園集合→市内デモ 午後1時45分開廷 千葉地裁(三里塚現地闘争本部員など3人の証人尋問)
◎団結街道裁判 3月1日(金)午前10時30分開廷 千葉地裁
◎耕作権裁判 3月18日(月)耕作権裁判午後1時45分開廷 千葉地裁(市東孝雄さんの本人尋問)
◎芝山現地闘争 3月31日(日)午後1時開場 芝山文化センター(千葉県山武郡芝山町小池973)

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