三里塚農地裁判控訴審、裁判長の早期結審策動と対決
6月25日、三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、全国から駆け付けた労働者・農民・学生・市民は、東京高裁第19民事部(貝阿彌誠裁判長)で開かれた市東さん農地裁判控訴審第2回弁論を全力で闘った。
午前10時30分から、裁判所前で婦人行動隊の宮本麻子さんの司会で、リレートークが繰り広げられた。国策による農地強奪攻撃と、安倍政権の戦争政策に対する労農学の怒りが、マイクを通して次々と語られた。
正午を前に日比谷公園霞門に集合し、デモ出発前のアピールが行われた。北原鉱治事務局長は、「この国際情勢のもと、何かのきっかけで戦争が起きれば、成田は軍事使用される。三里塚は戦争に絶対反対し、平和のために闘う」と宣言した。動労千葉の田中康宏委員長は、「韓国鉄道労組ソウル本部長のオムギリョンさんが三里塚を訪れて、日本の労働者・農民の闘いに心から感動して帰国した」と報告し、農地裁判必勝を訴えた。
発言の間にも続々と参加者が増え、デモ出発時には170人になった。市東孝雄さんを始め反対同盟が「耕す者に権利あり/貝阿彌裁判長は審理を尽くせ」と大書された横断幕を掲げてデモの先頭に立った。霞が関中枢に現れた「三里塚農民のデモ」は熱い注目を浴びた。
午後2時、反対同盟と顧問弁護団は、農地取り上げに反対する3万人署名の分厚い合冊を携え、拍手で見送られながら裁判所内に入り、東京高裁第19民事部書記官室を訪れ、北原事務局長が申入書を読み上げ、第2次分5135筆を提出した。3月26日に提出した第1次分と合わせて1万3154筆となる。
午後3時、100人もの傍聴者で満席となった102号法廷で開廷した。冒頭、貝阿彌裁判長が成田空港会社(NAA)、千葉県、県知事の代理人に向かって控訴答弁書の提出を確認しようとしたその時、すかさず葉山岳夫弁護士が「裁判長!」とさえぎった。「われわれの控訴理由書に対し、彼らの答弁書は、具体的な反論は皆無で、ただ“一審判決の通り”と繰り返すのみ。こんなものは認められない」と鋭く批判した。裁判長はうろたえながら、「原判決に付け加えることがないというなら、それはそれで一つの主張だ」などと精一杯かばい立てするが、弁護団は追及の手を緩めず次々と弾劾した。
「こちらは新たな事実を述べ、新たな法律論を展開した。それに一言も触れないのはおかしい」「187㌻の理由書に対し、答弁書がたったの数ページ。反論の体をなしていない」「NAA・県が裁判所の判決を当てにして、まともに議論することを放棄していることこそが大問題だ」
裁判長はすっかりマイペースを崩され、「今日控訴人から出された求釈明はよく読ませていただく」などと述べた。
この応酬で機先を制した上で、弁護団は前回に続いて控訴理由書の要旨の陳述を行った。
祖父の代から100年近く耕作し、実質上の自作地になっている農地を、耕作者である市東孝雄さんの同意なく秘密に売買したことは違法・無効だ。農地法を悪用した農地強奪は、「耕作者に権利がある」とする農地法の基本原則に反する。空港敷地(告示区域)からはみ出た土地までも敷地と一体で強奪する違法は許されない――。
裁判長による度重なる「終了」圧力をはね返して、弁護団は約1時間にわたる陳述を堂々と貫徹した。
裁判長は最後に、「被控訴人が釈明をすべきことがあるかどうかについては後で連絡する」と伝え、市東さん側に向けては「主張の補充はあるのか。これで尽きているのか」と聞き、結審への露骨な意図を表した。
次回期日を10月8日として閉廷した。
日比谷図書文化館のコンベンションホールを会場に、伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。北原事務局長に続き、市東孝雄さんがあいさつした。「今日は弁護団が間髪入れず裁判長の訴訟指揮を止めたことが決定的でした。早期結審を許さず闘います」
市東さんの気迫に応えて、弁護団一人ひとりが法廷での闘いを振り返り、勝利への決意を述べた。さらに動労千葉の川崎昌浩さん、全国農民会議の小川浩さん、関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会などが連帯発言を行った。
最後に、事務局の萩原富夫さんが一日の激闘をねぎらいながら行動方針を提起した。「第3滑走路に対する7・13現地闘争に結集してください。われわれは地元住民を組織して闘います。早期結審策動があらわになる中で、次回期日へ向けて、3万人署名に最後のふんばりをお願いします」と熱烈に訴え、会場全体の熱い拍手で確認された。
(TN)
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