富士康の工場で中国労働者のストが続発、アメリカでも連帯行動
2月11日、中国において、富士康傘下の寧波奇美電子で数千人の労働者がストライキに決起した。低賃金に抗議し、賃上げを要求してのストライキだ。これに先立つ1月9日には、湖北省武漢市にある富士康の工場で、従業員100人が屋上に立てこもり、不当な配置転換に抗議し、賃上げを要求する闘いがあった。発端となったのは、マイクロソフトのゲーム機が販売停止となり、それに伴う配置転換である。抗議する労働者は工場で集団で座り込み・ストライキを行ったが、工場側は「持ち場に戻らないなら、労働契約の解除に同意しろ」と迫った。この対応に怒った労働者たち100人は屋上に上がり、「賃上げが認められなければ、飛び降りる」と決死の闘いを展開した。
富士康(Faxconn)は台湾系資本の企業で、電子機器の生産を受け持つ電子機器受託生産(EMS)では世界最大といわれる鴻海精密工業のブランド名である。マイクロソフト、ソニー、デル、ヒューレットなどのパソコンパーツや組み立てを行い、とりわえアップルのiPhoneやiPadなどの生産を請け負っていることで有名である。中国を主な生産拠点にしている。長時間労働と低賃金による労働者の酷使で知られ、2010年には深せんの富士康の工場で労働者の連続飛び降り自殺事件が起きている。それ以降も毎年のように労働者が飛び降り自殺している。また作業場の状況も劣悪であり、2011年5月には成都の工場で、12月には上海の工場で爆発事件が起き、多数の労働者の死者と負傷者を出している。
こうした死と隣り合わせの非人間的な工場のあり方、そして低賃金と長時間労働に抗議して、富士康とその関連企業で今、連続的なストライキが爆発し、命がけの闘いを闘っているのである。ヨーロッパ経済危機の爆発と中国のバブル崩壊は、先端技術産業であるIT産業をも揺るがし、倒産、清算縮小、中国からの撤退や内陸への移転などをきっかけとしたリストラ攻撃の強まっているが、その中で労働者の本格的な反撃が開始されているのだ。
この富士康の労働現場の現実と富士康労働者の必死の闘いは今、国際的な連帯行動を呼び起こしつつある。1月25日、アメリカのニューヨークタイムズに掲載された「中国で、iPadに組み込まれる人間の値段」という記事は、成都での爆発事件を中心に富士康での労働現場の状況を暴露したもので、アメリカで大きな反響をよんだ。富士康とアップルへの抗議メール・電話が相次ぐとともに、たちまち20万を超える抗議署名が集まった。2月9日、この20万を超える署名はニューヨーク中央駅近くにある全米最大のアップルの販売店に提出された。中国の労働者の闘いに対するアメリカ労働者の連帯行動が力強く始まり、米中労働者の階級的団結の形成が始まろうとしている。この情勢に応えるために、日本における階級的労働運動の組織拡大と国際団結闘争の発展が今こそ求められている。(G)
写真は上から①ストライキを闘う寧波奇美電子の労働者(2月11日)、②武漢の富士康の工場で、ストライキを闘い、屋上に立てこもって抗議する労働者(1月10日)、③労働者の自殺「防止」のため周囲にネットを張り巡らした富士康の従業員宿舎
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