非常事態宣言を打ち破りパリで交通労働者がスト
◆11月17日に突入
11月17日午後10時、 フランス・パリ交通公団(RATP)のバス労働者4万3千人が24時間を超えるストに突入した。パリとその近郊のバス(4500台、347路線)は、4台に3台が止まり、ストは19日朝8時まで貫徹された。
CGT(労働総同盟)、SUD(連帯労組)、FO(労働者の力)、Unsa(独立組合全国連合)の4組合がスト指令を出したのは、11月10日。
その直後の11月13日、パリでISによる銃撃・爆発事件があった。非常事態宣言が発せられ、交通当局は、これをテコにスト中止の圧力をかけてきたが、Unsaを除く3組合はスト決行を決定し、突入した。ストの実行を躊躇(ちゅうちょ)した本部に対し、現場労働者の強い怒りがぶつけられ、スト実行に至ったと伝えられる。しかし、集会禁止の政府命令に屈服して、パリ交通公団前のデモは中止された。
組合は、「生産性」を口実にしたバス部門での人員削減、現場への重圧に対する反対、具体的には、「要員の最小限までの切り詰め」「運転士と車掌が勤務中の職場においても車庫での休憩時間中でも、分離・分断されていること」「職場での政治的弾圧や処分」に対するバス労働者の怒りによって、ストへの決断を迫られたのである。
このバス運転士のストに先立ち、パリ交通公団のバス運行センターの労働者が6月12日から17日までストライキを闘った。運転中のバスに情報・指示を伝えるバス運行センター業務の合理化による人員の40%削減、労働強化に反対するもので、この職域の労働者のストとしては初めてであった。
さらに、パリ交通公団の労働者は、10月7〜9日、「生産性向上の名による雇用破壊反対」「団体交渉の再開」「公共サービスの確保」の3点を掲げてストに入った。
こうした闘いを引き継いで、今回のバス運転士のストが行われたのである。
フランスでは、鉄道改革法案(1997年以来の民営化の促進法案)が2014年7月に国民議会で成立し、今年1月施行となった。法案阻止の闘いは、同年6月11日をピークとし、パリ首都圏の近郊列車の3分の2が運休、高速鉄道TGVは半数の路線がストップ、ローカル線では3分の2を止めるという2010年以来最大のストを貫徹した。しかし、その後、反対闘争は後退、法案成立を許してしまった。いくつかの交通労組の中でSUDが民営化=外注化反対の姿勢を堅持している。
SNCF(フランス国鉄)の鉄道労働者を含む交通労働者が12月には全日ストを決行しようと構えている。
◆病院にスト拡大
非常事態宣言下でのバス労働者の決起に呼応し、11月23日、フランス西部の都市レンヌの病院勤務者センターの労働者が、入口を閉鎖、時限スト・部分ストから全職場のストへ拡大すると宣言した。医療条件の悪化、人員削減、労働強化、そしてこれはすべて患者の待遇の軽視となる。
このような現実に対決して病院労働者はすでに11月3日から闘争を開始していたが、経営側の対応の冷淡さに怒って、ストに突入したのである。これは、新自由主義のもとにおけるフランスの医療破壊との闘いの一端を示すに過ぎない。
オランド政権の外へ向かっての侵略戦争は、国内で労働者の側からの階級戦争に直面せざるをえない。交通労働者と病院労働者が、現在その最先端で闘っている。帝国主義と大国(ロシア・中国)の戦争策動を粉砕する力は、労働者のゼネストと国際連帯だ。
(川武信夫)
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