市東さん耕作権裁判、NAAの違憲違法を全面的に暴く
12月14日、千葉地裁民事第2部(岸日出夫裁判長)で、市東孝雄さんの耕作権裁判の弁論が開かれた。市東さんを先頭に三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、全国から支援に駆けつけた労農学市民は、農地強奪攻撃への怒りを一層かきたて闘った。
前回9月の弁論で弁護団は、原告の空港会社(NAA)=空港公団の違法・脱法を以下の5点にわたって明らかにし、断罪した。①耕作者である市東東市さん(孝雄さんの父・故人)に無断で南台農地の底地を買収し、転用計画もなく15年も保有し続けたことは、不在地主による小作地所有を禁じた農地法第6条に違反、②財産権を保障した憲法第29条に違反、③対象地の位置特定の誤り、④時効取得成立、⑤農地法第3条違反。
今回は農地法の理念を一層掘り下げる観点で、⑤の続きから陳述が行われた。もともと農地法第3条は、地主が農地を小作人以外の者に売ることを禁じていた。小作地を解消し自作農にすることが目指されていた。地主が無断で交代し小作人が不安定な地位に置かれるようなことを、農地法第3条は想定していない。小作人の同意のない耕作地の売買は無効だ。
⑥この農地取得の一連の手続きは公用収用、すなわち「公共の利益となる特定事業のため、正当な補償のもとに、私人の財産権を強制的に取得する」ことだ。補償のない収用は成り立たない。NAAは賃借権がある市東さんを完全無視して地主と契約した。これはとんでもない違憲違法だ。
⑦農地法施行規則第7条11号では、成田空港にかかわる農地転用のための土地買収に限っては「県知事許可必要なし」としている。こんな「例外規定」は、農地法の理念を踏みにじる憲法違反だ。
⑧市東さんの南台の耕作地には、告示区域外、つまり空港の敷地にかからない部分が3274平方メートル、全体の4分の1も存在する。NAAは敷地内外の土地が「一体的に運用される」から知事の許可は不要などと言うが、そんなデタラメは通じない。
以上すべてから、NAAの土地取得は違法、無効であり、土地を明け渡しを求める資格は一切ない!
傍聴席から感動の大きな拍手が湧いた。NAAの代理人弁護士は無表情を装っているが、おのれの罪状を全面的に暴かれておののいている。
次回期日を2月29日として閉廷したあと、千葉県弁護士会館で報告集会が開かれた。伊藤信晴さんが司会を務めた。
最初に市東さんがあいさつに立った。「裁判が進むほど、空港側の違憲違法が暴かれる。5万人署名の年内1万達成まであと一息。力を蓄えて、来年も一層がんばりましょう」
続いて葉山岳夫弁護士が弁論を振り返りながら、「NAAは底地の買収を十数年隠し、市東東市さん、孝雄さんに地代を元の地主に払わせ続けてきた。それ自体、農地を農地として取得したということであり、耕作者の同意と県知事の許可は不可欠だ。次回以降もさらにNAAをギリギリと追いつめる」と勝利的前進を確認した。さらに葉山さんは、「市東さん農地法裁判一審で反動判決を下した千葉地裁の多見谷寿郎が、福岡高裁那覇支局長に就任し、沖縄・辺野古埋め立て代執行訴訟で裁判長をやっている。その上この訴訟では、国側の代理人の代表として、法務省訟務局長の定塚誠が出ている。定塚は、東京高裁での農地法裁判控訴審で主任裁判官として控訴棄却判決を書いた者だ。三里塚と沖縄の連関性がますます明らかになった」と解説した。
弁護団全員のあいさつに続き、動労千葉、関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会、市東さんの農地を守る沖縄の会、全国農民会議が次々と連帯発言を行った。動労千葉執行委員の中村仁さんは、労農連帯を強化し外注化阻止の闘いを進める決意を表した。全国農民会議共同代表の小川浩さんは、安倍農政を批判し、「市東さんの農地の取り上げとの闘いは日本農民自身の闘いだ」と訴えた。
最後に萩原富夫さんが発言に立った。「反対同盟は全国に市東さんの農地を守る闘いを押し広げ、沖縄と連帯してこの1年間力強く前進した。来年は50周年。第3滑走路粉砕へ向けさらに闘おう」と呼びかけ、参加者の奮闘をねぎらった。
集会終了後、反対同盟と支援連は千葉市街での5万人署名情宣活動に立ち、年内1万筆達成へ向け全力で闘った。(TN)
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