三里塚請求異議裁判、裁判長の拙速指揮と対決
11月6日、千葉地裁民事第5部(高瀬順久裁判長)で、天神峰・市東孝雄さんの農地取り上げ強制執行に対する請求異議裁判の第4回弁論が開かれた。三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、支援の労働者・学生・市民90人は「農地死守」の決意も固く、ともに闘った。
午前9時、千葉市中央公園で開廷を前にした決起集会が太郎良陽一さんの司会で開かれた。
最初に反対同盟事務局を代表して萩原富夫さんが発言し、米トランプと安倍首相の戦争会談を弾劾した。そして、昨年の農地法裁判での上告棄却・農地取り上げ判決確定から1年が過ぎたが、この請求異議裁判を重ねながら強制執行を阻んできたことを勝利感をもって確認した。
続いて動労千葉の田中康宏委員長が発言に立ち、前日の11・5全国労働者集会の熱気と高揚を振り返りながら、資本主義の危機の時代に労農連帯を貫いてともに闘う決意を明らかにした。
関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会、婦人民主クラブ全国協の発言を受けて、意気高くシュプレヒコールを上げて、快晴のもと千葉地裁に迫るデモに出発した。「強制収用実力阻止! 市東さんの農地を守ろう! 第3滑走路計画粉砕」の鮮やかな横断幕を前面に掲げ、反対同盟を先頭に千葉市の中心部を堂々と進んだ。宣伝カーからは婦人行動隊・宮本麻子さんが、50年以上農地を守って闘う三里塚の正義を訴えた。
デモ後直ちに、一同は地裁正面に集合し、強制執行阻止署名の提出行動に移った。今回は第3次分として1860筆を提出する。署名用紙の合冊を携え、地裁に入っていく市東さんをはじめ反対同盟を拍手と声援で送り出した。4階の民事第5部の書記官室に赴き、萩原さんが申入書を読み上げて受け取らせた。通算で1万684筆となる。
10時30分に開廷。
弁護団は、強制執行が「権利の濫用」であり許されないことを、次の3点において主張した。
①7月15日に成田空港B滑走路で大型貨物機が通常通り離陸できず、あわや東峰に大事故・大惨事をもたらしかねない重大インシデントを起こしていた。
②1971年の第2次強制代執行で取香の大木よねさんに対して、国家権力は非道な暴力をふるい土地と家屋を強制収用した。その違法性をめぐる訴訟が続き、国、成田空港会社(NAA)は、よねさんの養子である小泉英政氏と一昨年に和解し、「話し合いの努力が足りなかった」などと謝罪した。ところが今市東さんに対しては、民事裁判の形をとって農地を収奪しようとしている。
③「離作補償」の支払いについて、農地の賃貸借契約の解約の条件であるにもかかわらず、口頭弁論終結後も一切行っていない。
この批判にNAAは答えてみろ!
そして、今後の立証計画を提出し、証人申請を予定する人びとの名前を裁判所に明らかにした。すると裁判長は「原告の市東さんと萩原さんの証言は聞きたいと思う」と言いながら、唐突に被告NAAに意見を求めた。それに答えてNAA代理人は待ってましたとばかりに「証人は必要ない」と言い放った。この時点で早々と、市東さん本人尋問と、萩原さんの証人尋問以外はやらないと決めてしまおうということだ!
弁護団はただちに猛然と抗議した。特に71年強制代執行の意味を明らかにする上で、小泉英政氏の証言は不可欠だ。農業や憲法についての専門家証人も絶対に必要だ。NAAは主張も認否反論もせず無責任の極みだ。それを放置・容認している裁判所の責任は重大だ。
満員の傍聴席も怒りに満たされ、次々と抗議の声が上がり、廷内は騒然となった。
抗議がやまぬ中で裁判長はまたも唐突に、「次回期日で市東さん、萩原さんの証言をお願いしたい」と、求めてきた。それを認めたら、他の証人を採用せず弁論打ち切りへ一気に進むことは火を見るよりも明らかだ。弁護団は全員が次々と立って裁判長を激しく弾劾した。「弁論を尽くすことなく人証調べに入ることなど絶対に認められない。NAAに答弁させよ。次回に本人尋問など不可能だ」
この猛反撃で、「次回に市東、萩原尋問」という策動はいったん阻止された。だが裁判長は、非常識な訴訟指揮を使ってひたすら拙速裁判の道を走ろうとしていることは疑いない。
次回期日を3月8日として閉廷した。
千葉県弁護士会館で報告集会が伊藤信晴さんの司会で開かれた。最初に市東さんがあいさつに立ち、「弁護団の先生方の力で今日は押し返した。拙速裁判を打ち砕くため油断せずがんばろう」と一同に奮起を促した。
葉山岳夫弁護士をはじめ弁護団一人ひとりが発言し、裁判長の鉄面皮な態度と拙速裁判の衝動、またその裁判長に完全にもたれかかったNAAの無責任で卑劣な魂胆を弾劾した。そしてこの裁判が今重大な正念場を迎えていることを確認した。
最後に萩原さんが、今月20日の耕作権裁判をはじめとした毎回の三里塚裁判闘争への傍聴と署名運動の拡大を訴えた。また、伊藤さんが、今月23日の「農地取り上げに反対する会」シンポジウムへの参加を呼びかけ、この日の闘いを締めくくった。(TN)
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