戦争するな、賃金上げろ 英鉄道ストが全土に拡大
物価高に怒り爆発
5月24日、イギリスの鉄道・海運・運輸(陸運)労働組合(RMT)の鉄道部門の組合員4万人のスト権投票が行われた。組合員の71%が参加し、うち89%が賛成という圧倒的多数で全国ストライキが決定された。すべての地域で、圧倒的多数の鉄道労働者がストで闘う意志を示したのだ。
イギリスでも物価高騰は激しく進行している。2020年11月に前年比0・9%増だった消費者物価指数は現在11%増だ。21年から上昇してきたが、ウクライナ戦争・ロシア経済制裁が拍車をかけた。これ自体がコロナ感染爆発の時も必死に鉄道を動かしてきた労働者への侮辱だ。また当局は多くの切符売り場の廃止や保線、守衛、車両の検査・修繕職場の廃止(=大量解雇)など安全破壊の計画も撤回しなかった。組合員の怒りは1989年以来の大規模ストとしてイギリス全土で爆発した。
すでに設定されていたRMTのロンドン地下鉄でのストに合わせ、全国ストの期日は6月21日、23日、25日に設定された。また、この闘いと呼応して、鉄道機関士・機関助士の職能組合で2万人を擁するASLEF、管理職・事務、技術者などの組合であるTSSAもスト突入を決めた。
ストが全社会獲得
これに対して、イギリスの全メディアが「ウクライナ戦争で世界が大変な時にストをするRMTはプーチンの味方なのか!」などとRMTを攻撃する大キャンペーンを張った。デイリー・メール紙は「数百万の一般国民に大迷惑」「労働党は仕事をしていない。党の方針に反してRMTのピケットに参加した労働党議員」「1970年代に戻ってしまった」と、1面全体を使って騒ぎ立てた。
メディアにたびたびインタビューされたRMTのリーダー、ミック・リンチ書記長には、右翼的コメンテーターや保守党議員が居丈高に罵声を浴びせた。だが、彼らこそ現在の地殻変動が分かっていなかったのだ。リンチ書記長が淡々とストの目的を伝えるだけで圧倒的な支持が集まった。
保守党はピケを妨害する者を組織できず、逆に通る車はクラクションで合図して励まし、通行人は拳を上げたりサインを送ったりした。多くの他労組や反戦団体が、早朝からピケの応援に駆けつけた。この連帯の広がりのなかで、RMT組合員はインタビューで「ゼネストにすべきだ。生活費高騰はみんなの問題だ」「保守党を倒さなければ」「カットするのは戦争。安全、賃金、福祉ではない」と答えている。
コロナで多くの労働者人民を犠牲にしたジョンソン政権への不信と怒りの高まりを見据えられなかった政府やメディアのキャンペーンはほとんど効かず、世論調査では58%が「ストは正当」だと回答した。
さらに、国営医療制度(NHS)のもとで働く公共サービス労組(UNISON)や労組ユナイト(UNITE)、全国都市一般労組(GMB)、全国教育労組(NEU)、郵便・通信労組(CWU)などもスト権投票を行い、翌週以降からのスト突入を決定した。すでにRMTと同時にストに入った地域もある。
社会主義を掲げる
かつては労働組合が「社会主義社会の実現」を規約でうたうことは当たり前だったが、新自由主義攻撃のなかで多くの組合がそれを放棄していった。しかしRMTは今も、組合員の団結を形成すること、労働条件のために闘うことと並んで「資本主義体制を社会主義的秩序に変える活動をすること」を、規約の「RMTの目的」に掲げている。ASLEFも同じだ。RMTはまた、2003年からのイラク戦争を推進した労働党中央に反対して反戦を貫いた多くの労働組合の中心的存在となり、労働党から除名攻撃を受けている。
こうして労働組合運動と革命運動との間に垣根をつくらずに闘ってきたからこそ、「国家の危機」をあおった攻撃を打ち破り、戦時下のストライキに立ち上がることができたのだ。この闘いに日本でも続こう!
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