空港拡張差し止め裁判―更新意見で成田を全面批判
千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で6月2日、空港拡張差し止め裁判が開かれた。この裁判は、三里塚芝山連合空港反対同盟が被告の国と成田空港会社(NAA)に対し、B’滑走路の2500メートルへの延長(2006年)、第3誘導路建設(2010年)の違法を追及し、さらに現在「空港機能強化」として進められるB’の再々度の北延伸による3500メートル化、C滑走路(第3滑走路)新設の工事差し止めを求める裁判である。
裁判長が交代したことで更新手続きとして反対同盟顧問弁護団が意見陳述に立ち、最初に市東孝雄さんの天神峰農地に対する強制執行を弾劾した。
2月15日の夜に機動隊の暴力を使って行われたこの強制執行は、最高裁で確定した農地法裁判判決、やぐら裁判判決に基づいて行われたというが、これらの判決の前提が間違っている。小作者である市東家の承諾なく秘密裏に行われた1988年の底地買収は無効だ。
千葉県警はこの強制執行に抗議した支援者6人を公務執行妨害などをでっち上げて逮捕したが、これはG7広島サミットの予防弾圧である。
この「差し止め裁判」の重要論点は、第一にNAAによる基本計画の無視だ。B’の3500メートル化や第3滑走路などは、成田の敷地面積を2倍に拡張するものであり、こんな基本計画の大幅逸脱は許されない。
第二に被告らは、「市東は自分の意思で帰還し空港敷地内に住んでいるから騒音をがまんすべきだ」などと暴論を吐き、市東さんの原告適格を否定している。「市東の土地は強制収用で取られるべきだったのだから、法的保護は受けられない」とまで言っている。
第三に、これら空港の変更許可に至るまでに、具体的にいかなる行政庁の組織や部局がどのように判断したのか。担当責任者の氏名・役職を挙げて明らかにするよう再三釈明を求めてきたが、被告・国はこれを拒否している。隠ぺいは許されない。裁判所は釈明権を行使すべきだ。
空港機能強化論自体が誤っている。今後航空需要が右肩上がりで増大するとの見込みは、感染症の脅威、世界戦争の危機の時代においては実現不能な夢想だ。発着容量が30万回に増やされたが、コロナ禍前でも成田の年間発着回数は26万回程度で頭打ちだった。このような空港の機能強化のために4260億円というむだな設備投資を行うというのか。全世界的食料危機のもとで、かけがえのない農地をつぶし3本目の滑走路を建設する変更許可処分など、絶対に認められない!
弁護団による空港の存在意義そのものを撃つ批判に対し、10人もの国・NAAの代理人は無表情でだんまりを決め込んでいる。
次回期日を9月8日、次々回を来年1月26日として、この日は表面上は波乱なく閉廷した。
千葉県弁護士会館で、伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。弁護団がそれぞれ発言に立ち、でっち上げ弾圧を打ち破って6人が不起訴奪還された地平を確認し、今後騒音問題も一大争点としてこの裁判を徹底的に闘う決意を明らかにした。
動労千葉書記次長の佐野正幸さんが連帯発言を行った。「強制執行は成田の軍事空港化と反対同盟の闘いをつぶすことが狙い」と怒りを表し、職場にかけられている「労組なき社会」化攻撃を打ち破り、反対同盟と車の両輪として闘い抜く決意を述べた。さらに関西実行委、市東さんの農地と利上げに反対する会が発言し、最後に伊藤さんが、「6人の仲間を取り戻した勝利の上に、新たな闘いに突入しよう。7・2現地闘争&農楽まつりに集まってください」と一同に呼びかけた。
今自民党・岸田政権は「食料安全保障」を前面に掲げながら、食料・農業・農村基本法改悪、新法制定へとうごめいている。これまでの農業農民切り捨て政策(もうかる農業だけ生き残ればよい)の上に、戦時における戦争遂行のための食料確保をめざす法整備を行おうというのだ。「不測の事態」が発生した時に政府が農家に穀物増産の指示ができる、例えば花卉(かき)農家にコメやイモをつくるよう命令するような措置も検討されている。
まさに農民に戦争協力を強い、戦争に動員する攻撃だ。これを粉砕する道は、三里塚労農連帯の強化拡大にこそある。(TN)
スケジュール
◎7・2天神峰現地闘争&農楽まつり 7月2日(日)午前11時 市東さんの南台の畑集合、萩原さんの清水の畑までデモ
12時15分農楽まつり(@清水の畑)バンド演奏など
※飲食あり 昼食は持参してください(雨天中止)
主催/三里塚芝山連合空港反対同盟
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