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三里塚耕作権裁判―土地の位置特定でNAAを追及

耕作権裁判開廷を前に反対同盟を先頭にして千葉市内をデモ。「農地死守」のアピールを繁華街に響かせた(12月8日)

12月6日、千葉地裁民事第2部(本田晃裁判長)で、天神峰・市東孝雄さんの南台耕作地をめぐる耕作権裁判が開かれた。三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、支援の労働者・学生・市民70人は、「農地死守」の決意も固くこの日も全力で闘いぬいた。
午前9時、開廷に先立ち千葉市中央公園に集合し、決戦本部長の太郎良陽一さんが司会を務めて決起集会を行った。
まず東峰の萩原富夫さんが発言に立ち、「市東さんはこの裁判でNAA(成田空港会社)によって『不法耕作の男』という汚名を着せられ、15年にもわたり被告席に座らされている。許せない! 本田裁判長は直ちにNAAの訴えを却下すべきだ」と怒りをたたきつけた。
続いて動労千葉の中村仁副委員長が連帯発言に立ち、「われわれの実力で市東さんの農地を守り、成田を廃港に!」と訴えた。
関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会の発言に続き、反対同盟事務局の伊藤信晴さんが、「中国侵略情勢の激化のもとで、成田の兵站基地化が狙われている。反戦の砦として三里塚が立ち、農地を守り軍事空港を阻止しよう」と呼びかけた。
意気高くシュプレヒコールを上げ、反対同盟を先頭に千葉地裁に向けてデモに出発した。宣伝カーからは婦人行動隊の宮本麻子さんが、農地を守り戦争を阻止する三里塚の訴えを千葉市内に響かせた。
午前10時30分に開廷。「コロナ情勢」のもとで約1年ぶりの開廷となり、傍聴者は座席数の半分の30人強に制限されている。この日は陪席裁判官の交代に伴う更新手続きとして、まず市東さんが意見陳述を行った。

「私は1999年に亡くなった父・東市から南台農地にかんする小作権を引き継いで耕してきました。『関係土地図』のABCDの土地を耕してきました。NAAは不当にも、06年に南台のA・C・Dの土地を不法耕作と決めつけ、明け渡しを求めて裁判にかけてきました。08年にはBの土地を小作権解約を理由に明け渡しを求めてきました。

市東さんの南台農地の「関係土地図」(左)と最近の衛星写真(右)

私は声を大にして訴えます。成田空港は一日も早く廃港にすべきであり、空港が農業を破壊していることは絶対に許されません。機動隊の暴力と札束で、大切な農地を強奪してきた空港建設は完全に間違っていたのです。私は父の闘魂に学びNAAと闘う決意です。NAAは『不法耕作』と言いますが、C・Dの土地は父が地主・藤﨑さんの承諾を得て1972年ころから賃借し時効取得が成立しており、不法耕作ではありません。何より許しがたいのは、戦前から市東家の耕作地であるAを『不法耕作』ということです。Aは約100年近く耕作してきた土地です。
NAAはE1が当初のうちの小作地だと言いますが、これままったくのでたらめな主張。うちではE1を一度も耕作したことがありません。私が小学生のころ、A・Bを父が耕していたことをはっきりと覚えています。E1がもともと石橋家の小作地であり、市東家のではないことは、十分わかっていたのに、この裁判ででたらめな主張を言っているとしか考えられない。
完全無農薬有機農法で南台では野菜が順調に育っています。私は自分の農地、農業に自信と誇りを持っています。裁判長は先入観を捨てて、NAAに関係書類をすべて出させ、NAA関連の証人を出廷させるよう強く求めます」

耕作地の位置特定問題に具体的に踏み込んだ市東さんの意見は、NAA代理人を鋭く突き刺した。
続いて、弁護団が意見陳述に次々と立ち、やはり位置特定問題を中心にNAAを追及した。
NAAは、市東さんがNAA所有の土地を不法耕作していると決めつけて裁判を起こしながら、その位置特定がまったく間違っている。NAAの主張の根拠になっているのは、旧地主の藤﨑による南台農地の耕作状況についての手書きのずさんな地図(藤﨑メモ、1987年12月作成)だ。原本すらなく入手経過も不明なこの藤﨑メモは「市東家の賃借地はBとE1だ」と図示しているが、実際にはE1(南台41―9)は石橋家の小作地であり、決定的に誤っている。藤﨑は地主でありながら、耕作状況の実態を把握していなかったのだ。
この藤﨑メモの内容で、「同意書」「境界確認書」と添付の地図がつくられ、本裁判に「証拠」として提出されているが、そこに記されている東市さんの署名と印影は偽造である。
これらの矛盾と誤りに満ちた主張をあくまで押し通すために、NAAは「E1はもともと市東家の賃借地だったが、地主藤﨑に無断で石橋家との間で土地を交換したと考えられる。交換は2回行われたはず」などと憶測を並べ立て、「とにかくAは不法耕作地だ」と強弁しているのだ。
また、「同意書」「境界確認書」と同時期に、反対同盟法対部の元永修二氏が作成したメモについて、NAAは根拠もなく「信用できない」と切り捨てる。だが実際には、東市さんからの入念な聞き取りに基づいて南台の耕作現況を報告した元永メモの正しさに圧倒されているだけだ。
最後に弁護団は、公団による土地買収の交渉記録などについて「ない」と言い張るNAAの卑劣さを断罪し、一切の関連文書を提出させ、法理哲二(当時空港公団用地部用地課長代理)などの証人尋問を行うよう裁判所に強く求めた。

NAAの卑劣な姿勢を弾劾し、農地を守る決意を表す市東孝雄さん。左は葉山岳夫弁護士(報告集会で)

NAA代理人の上野至、和田衛、森本哲也は、自らの罪の重さを自覚しながら口をつぐむばかりだ。
次回期日を4月25日、次々回を8月22日と確認し、閉廷した。
千葉県弁護士会館で、伊藤信晴さんの司会を務め報告集会が開かれた。
最初に市東さんが、「何も言わず書類も出さないというNAAのやり方を許さず、今後も勝利まで闘います」とあいさつした。
続いて顧問弁護団事務局長の葉山岳夫弁護士が、NAAを追いつめている手応えを勝利感をもって語り、この力で強制執行を阻止することを呼びかけた。さらに弁護団が次々と発言し、提訴から15年という年月がたっても肝心な土地の位置特定もままならないNAAの破産ぶりを確認し、徹底的に攻め続ける決意を表した。
質疑応答ののち、最後に萩原さんが今後のスケジュールとして、1月9日の現地デモ・団結旗開き、同19日の新やぐら控訴審を告知し、全員で2022年の一層の奮闘を誓い合った。(TN)

閉廷後に千葉県弁護士会館で開かれた報告集会

スケジュール
◎天神峰カフェ 12月26日(日)正午 市東さん宅離れ

◎新年団結旗開き&デモ 1月9日(日)

◎新やぐら裁判控訴審 1月19日(水)午前10時30分開廷 東京高裁

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