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三里塚団結街道裁判―反対同盟側の請求を一切退ける反動判決

 千葉地裁民事第3部で15年にわたり続いてきた団結街道裁判の判決が、7月25日に出された。岡山忠広裁判長は、三里塚芝山連合空港反対同盟側の「団結街道の廃道処分を取り消し、道をふさぎ通行を妨害している障害物を取り除け」という請求をことごとく退ける最悪の反動判決を下した。反対同盟と顧問弁護団は、控訴して闘うことを明らかにした。
開廷を前に、伊藤信晴さんを先頭に反対同盟と支援連絡会議は千葉地裁前で「反動判決を許さない」と情宣活動を繰り広げた。すでに職員が建物内外に数多く配置されており、裁判所の姿勢、判決内容があらかじめうかがえる。
60以上の傍聴席を埋めて、緊張感が漂う中で開廷した。直ちに岡山裁判長が以下の内容の判決主文を読み上げた。
①成田市の廃道処分取り消し請求について、原告らの大半は原告適格がないので却下(=門前払い)、②原告のうち市東孝雄、萩原富夫、萩原静江の請求は棄却、③NAAへの障害物収去の請求を棄却、③訴訟費用は原告の負担、④故人である鈴木謙太郎、北原鉱治、萩原進の請求は、家族への承継を認めず終了。
要するに原告の訴えを1ミリも認めず、市とNAAに全面的に肩入れする判決ということだ。
裁判長の発した一言目より弾劾の声が次々と傍聴席から浴びせられ、廷内は騒然となった。
岡山裁判長は苦虫をかみつぶしたような顔で、続けて「判決要旨」を読み上げる。
「道路法は、公道を自由に通行できる利益については、公道の設置及び供用が開始されたことによる反射的利益であって、不特定多数の者が享受できる一般的公益と位置づけている」「利用者の個別的利益を保護しているとは言えない」
だから「道を日常的に利用しているというだけで、原告適格があるとはならない」……
「反射的利益」とは、たまたま個人が得た利益のことで、法律上は保護されるべき権利ではないとされる。ここではつまり、道路を敷いたり廃止したりすることは成田市の権限によることだから、その道を使うことで恩恵に浴し利益を得ていただけの人や団体には原告適格がない、というのだ。
そして、3人の原告適格だけは認めた上で、何と言うのか。

団結街道(青)の封鎖後、市東さんは南台の畑に通うために大変な遠回りのルート(赤)を往復させられている

市東さんについては、「自宅から南台耕作地へ要する時間は長くなったとは言えるが、進入路の整備・確保の措置が講じられているから、耕作上の不便が生じたとしても著しい支障とは言えない」。
萩原さんについても、「堀之内の田へ行くのに安全上の不便が生じたと言えるが、別の道を通っていくことが可能なので、著しい支障とは言えない」。
さらに、天神峰部落としての所有権も認めず、入会権も否定した。
そして故人である反対同盟3氏(鈴木謙太郎さん、北原鉱治事務局長、萩原進事務局次長)については、道路使用は「一身専属的な利益」(相続されない一代限りの利益)だとして、家族への訴訟の承継を否定し、「終了した」と切り捨てた。
太郎良陽一さんは傍聴席から、「裁判所は農民殺しの手先か!」と激しく声を上げ抗議し続けた。堪りかねて岡山裁判長は太郎良さんに退廷命令を下した。
裁判長による判決要旨朗読の終わりは、次のような「付言」だった。
「路線廃止処分によって、とりわけ原告市東は耕作上の不便が生じたものと認められる。代々この地において生計を営み空港反対を貫いてきた立場から、事前に十分な説明なく通告され、それから5カ月で封鎖措置が執られたことに憤りを感じていることは当裁判所も理解する。成田市はその廃止に当たっては住民に事前の丁寧な説明が必要だったのではなかろうか。蛇足ではあるが以上の通り付言する」
わざわざ「市東さんの気持ちもわかる」的な文章を判決の最後に「蛇足」として付け加えたことは、むしろ傍聴者の怒りを一層かき立てた。「ふざけるな!」「だったら判決を全て取り消せ!」
怒りの声の爆発に追い立てられて険しい表情のまま、岡山は閉廷を宣して退席した。
反対同盟と支援者・傍聴者らは地裁前に結集し、岡山判決弾劾のシュプレヒコールを上げた。
千葉県教育会館で、伊藤信晴さんの司会で記者会見をかねた報告集会が開かれた。
弁護団一人ひとりが発言し、この最悪の判決を怒りを込めて批判した。
道路の廃止は権力側の裁量、住民はただそれを黙って受け入れろ、道路通行は「反射的利益」であり、お上の恩恵に過ぎない……。この「反射的利益」を執拗に連呼する判決を徹底的に弾劾した。
そして市東さんと萩原さんには原告適格を認めた上で、市東さんの被ってきた営農上の不利益を「著しいものではない」と決めつけたことにも怒りが集中した。封鎖以降、代替ルートを4倍の時間をかけて畑との間を何往復もしなければならなくなった負担は「著しい」ものではないというのか。実際に、農作業の手伝いをした仲間がトラクターで畑から戻る途中に追突され重症を負う事故が2016年に起きているのだ。

閉廷後の報告集会(千葉県教育会館)

そして判決では、この団結街道封鎖処分が空港の第3誘導路建設のために行われた政治的な案件であったことにまったく触れていない。だから今回の判決は「空港の公共性」を強調して処分を正当化するような言い回しはしていない。だが実際には小泉市長の「鶴の一声」で、営農上死活的に必要な道路を住民から奪うという前代未聞のことを行政が行った。いやむしろ、市東さんを天神峰から追い出す意図さえ込めて、この廃道が実行された。この廃道処分は「住民生活を犠牲にしても空港建設が優先される」という、自治体の行いとして絶対に認めがたい暴挙だ!
マスコミ記者からは、原告側に苦言を呈したような「付言」について質問が出されたが、これには何の実効性もなく、裁判長が自分に向けられる怒りを少しでも中和させたいというだけの、まさに「蛇足」でしかないことが確認された。反対同盟が求めているのは「丁寧な説明」ではなく、空港廃港だ。
動労千葉の山田護さんが連帯のあいさつに立った。「岡山裁判長は、人の言うことをよく聞くようなふりをしてたが、出されたのはこの判決。絶対に許せない。9月19日には国鉄1047名解雇撤回裁判の控訴審が東京高裁で開かれるが、一発結審を許さぬため結集し共に闘ってほしい。動労千葉は、軍事空港粉砕、戦争絶対反対で共に闘います」
市東さんの農地取り上げに反対する会、成田夜間飛行差し止め裁判原告の住民も発言し、不当判決に怒りを表した。
最後に伊藤さんが、団結街道控訴審へ闘いを進めることを確認し、一同の奮起を促した。(TN)

◎第3滑走路建設阻止・フィールドワーク 8月20日(水)午前10時 成田市天神峰 市東さん宅前集合 呼びかけ/三里塚芝山連合空港反対同盟

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