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国側の医師、尋問で破産 星野国賠訴訟 「書き過ぎた」と連発

無実なのに無期懲役とされた星野文昭さんが殺されてから5年、国に損害賠償を求める訴訟の第21回口頭弁論が5月23日、東京地裁民事第14部(村主隆行裁判長)で開かれた。医師意見書を提出した原告側2人、被告側1人の医師の証人尋問が午前・午後計6時間余に及び行われた。星野さんの兄・治男さんが原告席に座った。今回は、意見の違いがある時に行われる対質(たいしち)の尋問形式が採用された。午前中は2人、午後は3人の医師が並んで尋問を受けた。
午前中は徳島刑務所の医療放棄が問題となった。2018年8月22日に星野さんが激しい腹痛で作業中に倒れた時、その後食欲不振と体重減少に苦しんでいた時、さらに翌年3月1日にようやく広範な血液検査と腹部エコー検査を行った時の刑務所の対応が争点だ。
原告側内科医は、星野さんは急性腹症であり、消化器の疾患を疑って検査をしっかり行うべきだったと証言した。特にエコー検査、CTスキャン、血液検査を行う義務が徳島刑務所にあったとして、診断せず放置したことを弾劾した。
被告側証人は高松刑務所第4医務課長の内科医で、法務省の役人だ。彼は「検査前確率」などという理屈を持ち出して、まともな検査をしなかったことの合理化を図った。しかし原告側内科医に「確率の高い方だけやって終わる医師はいない」と一喝されてぐうの音も出なくなった。
午後は東日本成人矯正医療センターの責任について審理が行われた。原告側に肝臓外科の専門医が加わって証人は3人になった。
最大の焦点は、術後約2時間、午後6時50分に血圧が急降下した時の対応である。120台を維持していた血圧が64/43に下がり、星野さんは「白い馬が何頭も見える」というせん妄を疑わせる言葉を発した。
専門医は「この時になぜ血液検査とエコー検査をしなかったのか」と怒りを込めた。何よりも疑うべきは術後出血であり、術後出血があれば再開腹止血術を行う以外に救命の手段がないとして、自分もそのような再開腹止血術を行ったことがあると語った。午後8時過ぎに手術の助手を務めた外科医が帰ってしまったことを聞かれると「私なら帰りません」と答えた。
被告側証人は、意見書に「この時に再開腹すれば水枕をナイフで切るように血が吹き出して術中死していた」と書いたことを問われると「あれは書き過ぎ」と言い、「世界に4例しかない症状」ということも「それも書き過ぎ」と言って傍聴席に失笑が起きた。自分の書いた意見書も維持できず、医療センターの対応が「理にかなっている」と擁護する始末。被告側意見書は完全に崩壊した。
対質での証言で国側の主張のでたらめさ、原告側証人の道理の対比が鮮明に。
今後は、留保となっている徳島刑務所長(当時)と医療センター医務部長の証人採否が焦点となる。8月20日に非公開の進行協議が行われ協議される。

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