三里塚フィールドワーク―工事現場に徹底弾劾の声響く
三里塚芝山連合空港反対同盟が呼びかける、成田空港の拡張・機能強化に反対するフィールドワーク(現地調査)が8月20日に猛暑の中で行われた。
現闘、支援連、さらに首都圏から駆けつけた参加者は天神峰の反対同盟会議室前で出発前の打ち合わせを行った。芝山町・白桝の伊藤信晴さんが状況を説明した。
「NAAは機能強化の本格着工を打ち出しており、たしかにB滑走路の北延伸に向けた東関東自動車道のトンネル化工事は激しく進められている。その一方、第3滑走路建設予定地の菱田地区では、今目に見える形では進んでいない。しかし測量が各所で行われており、第3滑走路を横断して多古町方面へ抜けるトンネル(滑走路横断道路)への着工が狙われているのかもしれない。NAA新社長の藤井直樹は毎月、用地取得のために住民のあいだを回っているという。われわれのフィールドワークの闘いは、住民の怒りとしっかり結び付いて空港拡張を阻止する闘いだ。がんばろう」
直ちに車両に分乗し、B滑走路北延伸の現場に向けて出発。東関道の付け替え道路とトンネル化工事を見下ろせる場所に陣取った。付け替え道路はすでに上下線とも開通しており、ひっきりなしに車が通行している。その脇を通る元々のルートには、「カルバート」と呼ばれるトンネルとなる構造物が設置されつつある。足場が組まれ、資材が置かれ、クレーンなどの重機と作業員が激しく動いているのが見える。カルバートをつなぎ合わせて長さ430メートルのトンネルができたら、付け替え道路を撤去し、誘導灯なども移転した上、この一帯は途方もない量の土砂で、現在の滑走路と同じ高さ(標高41メートル)まで埋め立てられる。
トンネル化工事の請負業者は大成建設(契約金額212億円)、B滑走路延伸の造成・舗装工事は大成建設と日本国土開発のJV(合同企業体)で進められる(同145億円)。
途轍もない自然破壊、地形破壊だ。
参加者は怒りに燃えてシュプレヒコールを目の前の工事現場にたたきつけた。「工事をやめろ!」「第3滑走路粉砕!」「住民とともに闘うぞ!」「市東さんの南台農地を守り抜くぞ」「トランプ・石破打倒!」「軍事空港建設を許さないぞ!」
頭上20メートルをけたたましい騒音を発してジェット機が数分おきに通過し、B滑走路へ着陸して行く中、工事を徹底的に弾劾した。
さらに一行は、芝山町菱田地区に向かった。かつて成田用水決戦が闘われた水田地域だったが、NAAは住民の耕作を一律禁じており、それに従わない農家だけが田を守り稲作を続けている。
鉄板で囲まれたセメント施設前の道路に車を停め、参加者はシュプレヒコールを上げた。「機能強化粉砕!」「第3滑走路建設阻止!」「住民と共に闘うぞ!」
設置されている移動式セメントタンクには、「太平洋セメント」と企業名が書かれている。
たちまち山武警察署の警察官が、「自動車が通るから危ない」などとわめきつつ規制・妨害に入って来た。全員これを歯牙にもかけず、こぶしを突き出した。
しかし、この工事現場は閑散としている。動きと言えば、わずか一カ所で地質調査らしきボーリングが行われているのみ。小さなやぐらが組まれ、数十センチのハンマーを落として地盤の強さを測るものだ。
たしかに滑走路横断道路(トンネル)建設へ向けた作業とも言えるが、2029年完成、第3=C滑走路供用開始という計画からすれば、今その直接の造成工事を急ピッチで進めなければ、到底間に合わないはずだ。だがそういう熱量はまったく漂っていない。警察もそんな状況に意気上がらず、手出しを途中であきらめた。
買収を拒む住民が確固として存在し、用地確保が進展していないことが、機能強化=空港拡張の見通しを失わせているのだ。
伊藤さんは、「今後もこのフィールドワークに継続的に取り組んでいこう」と一同に呼びかけた。(TN)
【NAAは用地確保に向けた自分たちの取り組みを、次のように説明している。
「国、自治体、民間不動産会社からの出向、用地取得業務経験者雇用による要員確保で193人をそろえた」
「移転や相続の相談に乗れる弁護士5人、司法書士2人、税理士2人の専門家体制を構築した」
「移転対象戸数約200戸に対して、代替地を確保・造成するなど、126区画を整備中」
「説明会開催は総計230回を超え、地権者との話し合いは計50万時間になった」
……(2025年5月27日付資料より)。
だが話し合いや説得の装いをとりながら躍起になって人員を投入しても、「国策遂行のために住民生活を破壊して当然」という彼らの本性は、多くの住民に見透かされ、見放されているのだ。】
スケジュール
◎10・12三里塚全国総決起集会 10月12日(日)正午 成田市赤坂公園 主催
/三里塚芝山連合空港反対同盟
この記事へのコメントはありません。