市東さん裁判、「不在地主問題」の違法ますます明白
10月20日千葉地裁で、三里塚反対同盟・市東孝雄さんの農地をめぐる二つの裁判(①行政訴訟、②農地法裁判)が連続して開かれた。反対同盟とともに闘う労働者・学生・農民・市民が、10・11三里塚全国集会の大成功の熱気を携えて、支援・傍聴に参加した。
農地法第6条1項には「国以外の者は、何人も次に掲げる小作地を所有してはならない。――その所有者の住所のある市町村の区域の外にある小作地」と書かれている。
空港公団(後の空港会社=NAA)が市東さんの農地を旧地主から買収したのが1988年。この時公団の本社は東京にあり、成田に移転したのは96年だ。つまり買収から8年間空港公団は農地法6条が禁止している「不在地主」そのものだった。したがって、買収は違法であり無効だ。NAAが市東さんに向かって地主のような顔をして「土地を明け渡せ」などという根拠は完全に崩れた。
10時半から、市東さんが耕作権解除の許可を出した千葉県を訴えた行政訴訟が開廷。被告の千葉県は、反対同盟と顧問弁護団の「不在地主」問題での追及に対し、「NAAが農地法6条に反しているかどうかは考慮されることではない」などと「反論」した。とんでもないことだ。行政が「違法をやっても問題ない」などと臆面もなく言い張っているのだ!
さらに、成田市農業委員会、千葉県農業会議での審議過程の問題については「釈明の必要はない」と居直りを決め込んだ。裁判長はこうした千葉県代理人の逃げ口上と居直りに、たびたび助け船を出した。傍聴席から怒りの声が次々と浴びせられ、「公正にやれ!」との弾劾に、裁判長は思わず「公正にやってます!」などと必死に弁明する始末だ。
11時10分から、NAAが市東さんに対し土地の明け渡しを請求した農地法裁判が開廷した。ここでも「不在地主問題」が鋭く追及された。NAAの弁明はなんと「一時的に不在地主と同様の状態が生ずる」としても問題ないという、これまた驚くべき暴論だ。8年間が「一時的」だと? こんなデタラメがあるか! しかも買収の事実をひた隠しにして、旧地主に市東家から何食わぬ顔をして地代を取り続けさせたたことについて、反対運動からの「いやがらせを加えられる恐れがあったから」だというのだ。何という卑劣さ。まさに盗人の居直りだ。
裁判終了後、弁護士会館で記者会見と報告集会が開かれた。この日は成田空港内で前原国土交通相や森田千葉県知事が来て、2日後に控えたの暫定滑走路北延伸供用開始のセレモニーが大々的に行われている。絶対に許すことはできない。
冒頭に事務局の鈴木謙太郎さんが、10・22前倒し供用への「弾劾声明」を読み上げた。
北原鉱治事務局長が怒りの発言に立った。「ここに43年間闘っている農民がいる。この千葉県民を無視して森田が騒いでいる。物取り主義の典型だ。廃港まで闘います」
続いて市東孝雄さんがあいさつした。「裁判で県は肝心要のところで逃げるばかり。さらに追い込んでいく。22日から供用開始されてもこれまでどおり闘うのみだ」と鮮明な決意を表した。
葉山岳夫弁護士を始め弁護団が次々と発言し、県とNAAのデタラメで傲慢不遜な居直りを徹底追及していくことを明言した。
最後に萩原進事務局次長がまとめの発言を行った。「記者からは大臣や知事に何か言うことはないかという質問もあったが、こっちから頭を下げて言うことは何もない。彼らの頭には利権のことしかない。われわれの闘いにこそ正義性、勝利性がある。空港は完成しない」と不動の決意を示した。この反対同盟の断固たる記者会見が、仰々しい空港内のセレモニーがまったくの空騒ぎに過ぎないことを容赦なく暴いた。
三里塚裁判は、11月9日に市東さんの耕作権裁判があり、11月12日にはいよいよ現闘本部裁判の最終弁論だ。全力で結集しよう。(TN)
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