上海地下鉄事故と中国鉄道労働者の新たな決起
9月27日、上海で271人の負傷者を出す地下鉄事故が起きた。上海の地下鉄で採用され問題になっているATP(自動列車保護装置)システムは、最先端の技術とされ、運転手が乗っていなくても運行ができるシステムといわれている。この「最先端」のシステムが今回と同じ10号線で今年7月28日にも故障を起こし、列車をまったく別の方向に運転するという事件が起きていた。さらに上海では2年前にも1号線で列車衝突事故が起きているが、この事故も同じATPシステムが原因であった。
この上海のATPシステムは、CACOSという仏中共同出資会社のものが使われているが、これは北京や大連、杭州や深センなどの中国各地の地下鉄などで広く採用されている。その背景には、将来的には運転手を合理化し、コンピューター制御による無人運転に移行しようとする狙いがある。
そしてさらに重要なことは、このCACOSのATPシステムが、7月23日の温州での高速列車衝突事故(写真)の原因と指摘されていることだ。この事件はいまだ政府によって真相が明らかにされていないが、公式には約40人の死者、実際には200人以上の死者が出ていると言われる。
ここから見えてくることは何か? 今の「改革・開放」政策のもとでの労働者への大合理化攻撃であり、一方でスターリン主義官僚と資本の癒着であり、その結果としての地下鉄を含む鉄道での連続的な事故の発生である。
鉄道事業は、中国スターリン主義の腐敗の温床となっている。高速鉄道では、未熟な技術にもかかわらず「世界一」のスピードをひたすら追い求め、欠陥だらけのシステム網にもかかわらずあの広大な国土に短期間で高速鉄道網を張り巡らした。高速鉄道の運転士の研修も通常2~3カ月かかるのをわずか10日の短期間で終了とされ、ただちに現場に送られるという滅茶苦茶なことが行われている。地下鉄工事も急ピッチで全国で進んでいるが、将来の無人運転を目指して、技術的にも欠陥があることが明確なATPシステムが各地で採用されているのである。
資本と結託したスターリン主義官僚は、地下鉄や高速鉄道の建設のために「国策」をたてにして農民や労働者の土地・家屋を暴力的に強制収用し、それを資本家に譲渡して賄賂で私腹を肥やしている。前運輸局長の張曙光は、在職中に28億ドルの巨額蓄財をしたとされ、その妻は息子とともに米ロサンゼルスに3軒の豪邸を持っているという。一方で資本家は、見返りとして違法工事を黙認させて安全無視の「おから工事」などが堂々とまかり通ってきた。高速鉄道事故の時には、まだ生存者がいるかもしれない列車を事故発生の翌日の早朝には穴を掘って埋めるという暴挙を行っている。自分たちの権力と利権を守るためには労働者など生き埋めにしても構わない――ここに中国スターリン主義の本性がある。
だがこうした中で、中国全土で労働者民衆の新たな闘いが開始されている。とりわけ決定的なことは、鉄道労働者の決起が始まったことである。高速鉄道事故の起きる2日前の7月21日に、実はこの事故車両を作っていた南車グループの眉山車両工場で、低賃金に抗議して労働者がストライキに立ち上がっている。また8月2日には湖南省長沙市で、やはり劣悪な労働条件に抗議して鉄道労働者がストライキに決起した。世界を揺るがした1920年代の中国の大ゼネストは鉄道労働者が中軸であり、その歴史的な決起が今再び始まろうとしている。いま中国では、治安警察の横暴、土地取り上げ、有害物質の垂れ流しなどあらゆる問題を契機に住民の暴動的決起が全土で次々と起きているが、その先頭に、労働者階級の新たなスト決起の開始がある。
上海地下鉄事故、高速鉄道事故の本質は、労働者の首切り・合理化であり、「安全無視」の運行であり、その攻撃の本質は日本、そして全世界の労働者が直面している攻撃と完全に同じだ。動労千葉が闘っている外注化阻止の闘い、反合・運転保安闘争は、この中国の労働者の闘いと連帯し、ともに勝利できる唯一の道である。壮大な決起を開始した中国の労働者民衆との団結を勝ち取るためにも、外注化阻止決戦を闘い、11・6労働者集会の大結集をかちとろう!(G)
この記事へのコメントはありません。