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米スポーツ選手が国歌演奏に不起立 警官による黒人虐殺に抗議

20171007a-1.jpg 今アメリカでは、アスリートの反乱が巨大な闘いになっている。1年前、アメリカンフットボールの一人の選手から始まった国歌演奏時の不起立は、この9月から爆発的に拡大している。黒人を虐殺した警官が投獄どころか、逮捕・起訴さえされない現状への抗議だ。
 それに対してトランプは、「国旗・国歌を侮辱するやつは、今すぐグランドからたたき出せ。首だ」と口汚くののしった。それへの怒りが一挙に拡大し、不起立者への連帯が次々と表明されるようになった。
 オバマ政権時から始まったこの闘いは、一人から徐々に人数を増やしてきたが、現在ではコーチも含めて、また人種・出身の差を超えてチーム丸ごと団結して闘っている。写真にあるように、起立を拒否できない選手も、不起立している仲間の肩に手を置き、連帯している。起立しているが、仲間全員が腕を組んで、連帯を示している所もある。

 昨年8月、ナショナル・フットボール・リーグ〔NFL〕からの追放も覚悟した最初の不起立者コリン・キャパニック選手は、2014年8月の黒人青年の虐殺以来全米に拡大した地域の闘いへの連帯を次のように語っている。
 「黒人、有色人を抑圧する国の旗に起立して敬意を示すことはできません。この問題よりフットボールのほうが重要だという利己主義者にはなりたくありません。殺人をやめさせるために、多くの人が有給休暇をとって街頭に出ているのです」
「労働組合の街」で団結が拡大し
 特に、彼が属するサンフランシスコ・フォーティーナイナーズ(49ers)の地元では、ILWUローカル10(国際港湾倉庫労働組合第10支部)が、警察による暴行・虐殺に抗議して、港湾を閉鎖した。この人種・出身の違いを超えて全組合員が団結したILWUの隊列を中心にして、地域ぐるみのデモを何度も行っている。これが、49ersファンも含めた地域全体の団結を強固にしてきたのだ。
 アメリカ最大のプロスポーツ、アメリカンフットボールの有力選手の反乱は、影響が大きい。極右勢力は激しく反応し、「殺すぞ」という脅迫がキャパニック選手に送られた。だが、チームメートは、白人選手を含めて彼への連帯を次々に表明し、49ers経営者側もキャパニックの「不起立の自由」を擁護せざるをえなくなった。
 「労働組合の街」サンフランシスコの地域ぐるみの支援は選手たちを勇気づけたのだ。
 次にこの闘いが広がったチームはシーホークスだ。その本拠地シアトルも、ILWUの中でも強い団結力で名高いローカル19、ローカル52の拠点だ。また、全米で最初に最低賃金の15㌦への大幅引き上げを市議会で決定した所だ。
安全を無視するNFLとの闘い
 アメリカンフットボールでは、全力疾走でぶつかる衝撃で脳震とうが頻繁に起こる。2015年では、1試合当たり0・43回だ。脳の損傷の後遺症で、うつ病、認知症、性格の変貌(へんぼう)、歩行障害などが起きる。
 だが経営側は長い間、深刻な健康被害を認めず、選手が要求する脳震とう対策も、後遺症の補償も拒否してきた。それどころか、倒れてもすぐに試合に出させてまた視聴率を稼ぐ。巨大広告会社はNFLにさらに圧力をかける。資本は「倒れてもまた立ち上がる感動」なるものを金にして、選手を使い捨てにするのだ。
 そして高校・大学の部活もプロになる「夢」を掲げ、安全無視のプロのあり方を基準にして長時間練習や過酷な試合を強いる。資本が支配するプロスポーツが社会全体に与える影響は重大だ。
 しかし、内部からの安全闘争がプロスポーツ界を根底から揺るがしている。これが、NFLPA(NFL選手労働組合)の変革・強化の闘いが行われ、そこでつくられた職場の団結が、極右テロをのりこえた不起立闘争の基盤になっている。
写真〕試合前の国歌演奏で片膝を立てて座り、黒人虐殺に抗議するサンフランシスコ・フォーティナイナーズの選手。後ろに立つ選手も抗議する選手の肩に手を置き、連帯の意思を示している(10月1日)

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