市東さん耕作権裁判、NAAの土地取得違法・無効を突きつける
4月9日、千葉地裁民事第2部(白石史子裁判長)で、市東孝雄さんの耕作権裁判の弁論が開かれ、三里塚反対同盟を先頭に支援の労働者・学生・市民が傍聴席を埋めてともに闘った。この裁判は、市東家が祖父の代から耕してきた耕作地の一部を、成田空港会社(NAA)が「不法耕作」と決めつけて明け渡しを迫っているものだが、この明け渡し請求の前提が崩れる重大局面を迎えている。弁護団は、空港公団(NAAの前身)の土地取得そのものが違法であり無効であったことを全面的に暴き、突きつけた。
公団は1988年に市東家が耕作する南台41番地の土地を、地主の藤﨑政吉から秘密裏に買収した。しかしこの畑は空港敷地(土地収用法で事業認定された空港建設予定地)の内と外にまたがっている。農地法は農地を他の用途に転用することを厳しく制限し、その売買においては県知事の許可が必要としている。ただし、成田空港については、特別に規則を定めて「空港敷地、道路、線路、航空保安施設」に限って例外(知事の許可は不要)とした。この南台の土地は空港敷地の外部を含んでいることによって、明らかに例外規定からはずれ、売買には県知事の許可が必要(したがって耕作者の同意の書面が不可欠)であり、これなしには土地は取得できない。つまり公団は市東さんの耕作地が敷地内外にまたがることなどまともに調べもせずに、当時秘密裏に「買収」へと突っ走ったのであり、違法・無効なのだ。
すなわち、NAAは「地主」の顔をして市東さんに「土地を明け渡せ」と言う権利がそもそもないということだ! この致命的な問題に06年になってやっと気づいたNAAは、後知恵的にその敷地外部分を「空港関連の資材等の置き場として利用するから空港敷地と一体だ」と強弁してのりきろうとしている。まさに居直り強盗の暴論! だがその主張のあまりの無法と非常識さに、NAAの代理人自身が意気消沈しているありさまだ。
さらに弁護団は、署名偽造問題でNAAが警察OBに書かせたインチキな「鑑定書」に対する反論をたたきつけた。また、当時の用地買収に関連する交渉記録、報告書などについて、裁判所がNAAに文書提出命令を出すよう重ねて強く迫った。次回期日を7月23日として閉廷。
弁護士会館で報告集会が伊藤信晴さんの司会で開かれた。
最初に市東さんがあいさつに立ち、「いつにも増して多くの方々の結集に感謝します。この裁判も重大な局面に入ってきたので今後もともに闘いましょう」と簡潔に、しかし自信に満ちて語り、大きな拍手を浴びた。続いて葉山岳夫弁護士が法廷を解説し、NAAを追いつめた手応えを込めて「追及の手を緩めずに闘う」と決意を表した。続いて弁護団全員が、民事第3部の行政訴訟・農地法裁判と併せて、NAAの違法を暴き農地強奪攻撃を打ち砕く決意と展望を語り、参加者の熱心な質問に答えた。
北原鉱治事務局長は、第3誘導路工事の深夜強行を弾劾し、「正義が勝つ闘いをここでやろう」と一層の決起を促した。反対同盟の決意に応え、市東さんの農地取り上げに反対する会の三角忠さん、動労千葉の後藤俊哉さん、関実がそれぞれ連帯発言を行った。最後に萩原進事務局次長がまとめの発言に立った。「今空港周辺の一番の大地主はNAAだ。住民は家も建てられないし、畑を増やすこともできない。そして敷地内外や騒音区域で線引きし、土地の価格で地域を翻弄し分断してきた。空港を粉砕して、これらの土地を人民に解放する日まで闘いぬこう」と熱を込めて訴え、全員が拍手で応えた。(TN)
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