一坪共有地裁判 「文書提出命令でNAAの抗告棄却」を弁護団が報告
7月24日、千葉地裁民事第5部(松並重雄裁判長)で、一坪共有地裁判の弁論が開かれた。
この裁判は、三里塚芝山連合空港反対同盟の故鈴木幸司さん、いとさん夫妻が名義人となっている駒井野の一坪共有地を強奪するために、千葉県が2006年に提訴したものだ。
県は千葉新産業三角構想の「成田国際物流複合基地計画」の一環として、この土地を造成して成田空港会社(NAA)に売り渡すという。ところがそんな仰々しい大プロジェクト自体がとうの昔に破綻し、「千葉県企業庁は2015年度末に清算を終え、500㌶の土地を不要財産として売却する。130億円が負債として残る」との新聞記事が昨年夏に掲載された。県はこの現状を認め、提訴を取り下げろ!
今回、反対同盟顧問弁護団は準備書面を提出し、「国際空港の公共性」をたてに一坪共有地取り上げ攻撃を続ける県側に対し、旅客数・貨物量などの推移を含め、地位低落の一途をたどっている成田の現実を突きつけた。さらに、地元農民の農地を奪って進められてきた暴力的な建設の経緯を厳しく指摘し、今また破綻した事業のために悪らつな土地取り上げに及んでいることを弾劾した。特に「全面的価格賠償方式」、すなわち一定の金額を支払う形で、手放す意思のない人から土地を奪い取るやり口を適用しようとしていることを徹底的に批判した。
事業破綻の現実を誰よりも痛感している県の代理人弁護士たちは、苦虫をかみつぶしたような表情で聴いていた。
次回期日を10月23日として閉廷したあと、千葉県弁護士会館で、伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。
葉山岳夫弁護士を始め弁護団全員が発言し、「提訴から8年もたって事業は破綻」という現実を敵に強制している勝利を確認した。
さらに、千葉地裁民事第2部での天神峰・市東孝雄さんの「耕作権裁判」において、重大な進展があったことが弁護団から報告された。千葉地裁が出した文書提出命令を不服としてNAAが昨年末即時抗告を行ったことに対し、7月17日、東京高裁第7民事部(菊池洋一裁判長)が抗告を棄却したのだ。
ここで焦点となっている「文書」とは1987年秋から88年4月にかけて空港公団(NAAの前身)が作成した、藤﨑政吉(市東さんの農地の元の地主)との農地買収交渉に関する報告書や会議録のことだ。公団は当然にも、こうした文書を必ず作成してきた。
NAAは「探しても見つからなかった。そういう文書を作成するかどうかは担当者(故人)にまかされていた」などとシラを切り、約2年もの攻防になっていたのだ。この恥知らずなうそを東京高裁もさすがに認めるわけにいかず、「ないはずがない。出せ」という決定を下したのだ。
NAAは決定的な窮地に立たされた。これまで通り「いくら探してもない」と言い張り、文書提出命令に応じなければ、市東さんに「不法耕作している土地を明け渡せ」という主張が根拠を失う。しぶしぶ文書提出に応じれば、畑の位置の特定をめぐって、市東東市さん(孝雄さんの父、故人)の署名や印鑑まで偽造して、偽造文書を作成した経緯が暴かれる。
このことは、現在東京高裁第19民事部(貝阿彌誠裁判長)で闘われている農地裁判控訴審にも連動し、NAAの主張の根幹が決定的に崩壊するということだ。親子3代100年に渡って耕作し続けてきた農地を、あらゆる違法・脱法を用いて力ずくで取り上げようとする矛盾、その犯罪性を、今こそ反対同盟を先頭に労農学人民の力で徹底的に暴かなければならない。
10・8農地裁判控訴審第3回弁論と10・12三里塚全国総決起集会の連続闘争を全体で確認し、報告集会を締めくくった。
反対同盟と支援連はこの日の午後も、炎天下、農地取り上げに反対する3万人署名を訴える千葉市繁華街での情宣活動に打って出た。集団的自衛権に踏み切った安倍政権の戦争政策と、市東さんにかけられている農地取り上げ攻撃が一体であることを真剣に訴えると、多くの人びとが足をとめ、署名に応じた。(TN)
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