中国 工場移転を許さず、日系水谷製造工場で連日のストライキ
中国深せん市龍崗区にある日系香港水谷有限会社の製造工場(社長・水谷保彦)で、1月16日より全工場労働者による1200人の大規模ストライキが爆発し、今も続いている。この会社は、社会候保険や住宅公共積立金などの社会保険料を支払わず、残業代を切り下げてきた。会社がフィリピンへの工場の移転を進め、それに伴って労働者の賃金の切り下げが進み、このまま全員が解雇されようとしていることへの怒りのストライキである。
労働者は、次の8つの要求を掲げている。
1、労働者への補償金が未処理の状況で、資産を移転させることはできない。
2、工場が労働者に通知しない状況で資産を移転し、労働契約を一方的に破棄するならば、それは労働契約法第40条第3項に規定にしたがって、賠償金を支払わなければならない。
3、入社から今に至るまでの社会保険金を支払え!
4、入社から今に至るまでの住宅公共積立金を支払え!
5、土、日、休日の残業代の不足分を支払え!
6、最低賃金に至らない賃金の不足分を支払え!
7、有給休暇の不足分を支払え!
8、工場が原因でストライキに至ったのだから、(ストライキ期間の)賃金を支払え!」
こうした要求を掲げてストライキを闘い、団体交渉を要求する労働者の前から、社長の水谷保彦は逃亡した。そして27日には巡防隊員を工場に導入し、労働者に暴力をふるった。そしてこの巡防隊員の暴力的な工場制圧のもとで、工場の資産を運び出そうとしたのである。これに対して労働者は、あくまで資産を死守して闘いぬき、会社の狙いを粉砕した。
この水谷製造工場は、「三来一補」企業(実質はほぼ100%外資だが、形は中国資本)と言われる形式の日本資本による委託加工工場で、ディズニーのおもちゃの生産を行っている。現場労働者の70%が女性であるが、それは非正規職である農民工である。その労働実態はひどく、香港に拠点を持つ中国労工研究センターが行ったこの水谷製造工場への実態調査が、「労工状況調査報告」(2009年10月)にまとめられている。
この報告書の中でもすでに、会社が医療保険や養老保険などの支払いをしていない事実が指摘されている。また、一日平均4時間という違法な残業時間になっていることや、労働者が生産ノルマを果たせなかった場合は居残り労働をさせられ、それは賃金を支払われない。また食堂の食事のひどさ(時々虫がいる)や劣悪な宿舎(8人一室で、清掃用具はない)、さらに作業場は粉塵がひどくてもマスクは支給されず、労働者が自分で手製のマスクを作って仕事をしている。あるいは長期にわたる裁縫労働のために、指が変形している女性労働者の手の写真も報告書には紹介されている。また、あらゆることに罰金の処分が課せられ、遅刻をすると1分ごとに5元の罰金、許可を取らずに残業をしなかったら50元の罰金が課せられる。トイレに行くのは4時間のうちに一回と決められており、10分を超えてはならない。労働組合には毎月2元の組合費が取られているが、誰も自分が組合員だということを知らず、実際に労働組合は何もしていない。
驚くべきことに、こんな劣悪な工場を経営する水谷保彦が2008年に、深せん市龍崗区政府によって「労働者を愛する優秀企業家」として表彰されているのである。
こうしたすさまじい監獄工場のような現実の中で、労働者を徹底的に搾取して儲けてきた水谷製造工場であるが、中国バブルの崩壊が進み、中国経済が行きづまる中で労働者への大リストラを強行して、フィリピンへの移転を進めようとしているのである。
この資本の暴挙への長年の怒りが爆発したのである。「ここで働く労働者は、勤続年数が短くて3年から5年、長い人では17年になります。私たちがここで働くことで、会社が大きく発展したなら、ここは私たちの生活の支えになるだろうと願っていました。しかし願ったようにならず、悪い社長と遭うことになり、彼は最大限の自分の利益を得ようとしたのです」と、水谷製造工場の労働者たちは語り、逃亡した社長水谷保彦を徹底弾劾するとともに、「心ある人、社会公益団体は支援の手を差し伸べて欲しい」と訴え、労働者の団結を求めて現在も闘い続けている。
同じ深せん市で昨年12月以来のユニクロ衣服生産工場での大争議も、警察隊の工場制圧、大弾圧と対決して闘われたが、この水谷製造工場での争議も、政府が動員した巡防隊員の暴力的な制圧と対決しながら日々闘われている。天安門事件以来の中国スターリン主義の大弾圧体制を打ち破る新たな労働者階級の戦闘的な闘いが力強く始まっている。それは新たな世界戦争の焦点となろうとしている東アジアの大激動の中で、戦争を阻止し、新自由主義を粉砕する労働者の国際的団結と国境を越えた闘争を実現していく壮大な現実性を示している。
水谷製造工場の闘う労働者、そしてすべての中国の労働者階級との連帯をかけて、「非正規職撤廃」「外注化阻止」、国鉄闘争を基軸に闘う労働運動の発展と組織化を大胆に進めよう!(K)
写真は、上から
1、「社長はどこに行った!」との横断幕を掲げて、逃亡した水谷保彦を徹底弾劾し、ストライキを闘う水谷製造工場の労働者
2、工場の門に「不良日本の企業家は農民工を抑圧・搾取している。『調和の取れた社会』というのは、誰が責任を取るのか?」「我々の血と汗の賃金を払え!」などの横断幕を掲げて闘う
3、巡防隊員が工場を制圧する中で、闘いを継続する水谷製造工場の労働者たち
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