三里塚一坪共有地裁判、鎌倉証言で「物流事業」破産の実態暴く
12月17日、千葉地裁民事第5部(鹿子木康裁判長)で、一坪共有地裁判が開かれ、3人目の証人として鎌倉孝夫・埼玉大学名誉教授(経済学)が証言を行った。
この裁判は、三里塚芝山連合空港反対同盟の鈴木幸治さん(故人)、いとさん夫妻が共有権を持つ駒井野の一坪共有地について、2006年に千葉県が「成田国際物流複合基地事業」のために明け渡しを求めて起こした訴訟である。だが、そんな事業と成田空港自体に「公共性」があるのかをテーマに、今回の証人調べが行われた。
反対同盟顧問弁護団の質問に答えて鎌倉証人は、12月15日に天神峰を訪れた時の印象を語った。「土地はわが命」という考えをもとに、空港施設に囲まれながら手塩にかけて作った土で市東孝雄さんが農業を続けていることに感銘を受けた。そして成田空港が掲げる「公共性」は、企業に利益にもたらす意味でしかなく、労働者人民の生活を豊かにするものではないことを批判した。「経済大国にふさわしい一流の国際空港を持たねばならない」との宣伝で造られた成田が、現実には社会の生産基盤である農地を破壊し、地域の経済を過度に空港に依存させる構造を作り出した。
そしてその空港を中心とした「物流事業」の計画なるものは、千葉県企業庁が空港周囲の土地を買収し造成して空港会社(NAA)という営利企業に転売するというものであり、証人は「県は地上げ屋に転落した」と厳しく指摘した。
そしてこの大仰な計画は根本から破産し、2015年度に企業庁は清算され「後継組織」が引き継ぐとされているが、実際には何の見通しもない状態で、「清算期にはいっている事業がなぜ、土地の買収にのりだすというのか。全面的価格賠償方式を使ってそんなことをする”特段の理由”は成り立たない。地域経済の活性化などという目標はうそだ」と厳しく断じた。
そうした背景として、戦後高度経済成長とその終息、80年代の国鉄分割・民営化に始まる新自由主義の登場、証券ブームやバブル経済とその崩壊、今日の新自由主義の全面的展開などへの経済分析を随所に織り交ぜ、資本主義がすでに歴史的生命力を失っていることを明らかにした。
そして鎌倉証人は一坪共有地運動の意味について、「農業・生活を破壊する成田空港に対抗し、破壊を食い止め、生存権・生活権を防衛するための運動」と明確に述べ、「拒否している人に土地を売れと強要することは、法を逸脱した権力行使。暴力と言わざるをえない」と弾劾した。
この容赦ない批判に打ちのめされた原告・千葉県は、卑劣にも反対尋問を一切放棄した。そして裁判長から今後の立証計画、とりわけ証人の人選や尋問事項の予定について質問されると、県の代理人弁護士は互いに顔を見合わせながら「今から検討して……」などとしどろもどろの対応に終始し、失笑を買った。
次回期日を2月18日として閉廷した。
近くの会場で報告集会が開かれた。最初に2時間近い証言をやりきった鎌倉さんが笑顔であいさつし、事前に三里塚現地を訪れたことが大きな力になったことを語った。さらに葉山岳夫弁護士が「成田空港と県企業庁の破産の実態について、経済学的分析にもとづいて暴露した今日の証言は、県側を完全に粉砕し、対応不能に追い込んだ」と完勝を宣言した。さらに弁護団全員が勝利の手応えと決意を述べた。
司会の伊藤信晴さんは、この日までの集計で最高裁へ向けた農地を守る緊急5万人署名が1万400筆を超えたことを発表した。参加した労働者・学生・市民一同は確信を一層固め、「農地死守・第3滑走路粉砕」を誓い合った。(TN)
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