韓国民主労総が非正規職ゼネスト 5万7千人がスト突入 〝私たちの手で社会変える〟
6月30日、韓国・民主労総(全国民主労働組合総連盟)は、「最低賃金1万ウォン」などを掲げて初の「非正規職ゼネスト」を打ち抜いた。公共部門の非正規職労働者を中心に5万7千人がストに立った。パククネ打倒から約4カ月、新政権発足から2カ月、革命の第2段階へ労働者階級の力強い前進が始まった。
●非正規職が主力のストは史上初めて
6月30日の社会的ゼネストは、学校や清掃、警備、病院など公共部門の非正規職や財閥大企業の下請け労働者、「一人親方」とされて労働者とみなされない建設現場の請負労働者など、非正規職労働者が主役となった全面ストライキとして闘われた。民主労総の歴史においても初めての画期的なゼネストだ。その主力は公共部門、とくに学校非正規職を先頭とする圧倒的な女性労働者だ。
打倒されたパククネに代わって登場したムンジェイン(文在寅)政権は社会の「改革」を口にするが、労働者の状況、とりわけ非正規職労働者に強いられている極度の低賃金、強労働、人間扱いされない過酷な現実は何も変わらない。だがその非正規職労働者が組織的に団結し、自ら社会変革の主体として決然と立ち上がったのだ。
●じっと待つのではなく闘って勝利を
午後3時から光化門広場で開催されたゼネスト大会には組合員など5万人が集まった。民主労総を先頭に70以上の諸団体で結成された万ウォン行動(最低賃金1万ウォン・非正規職撤廃共同行動)のもと、農民、貧困者、障害者、学生やアルバイトの青年労働者、未組織労働者、民主労総には未加盟の労組も参加した。
民主労総のチェジョンジン委員長代行は、「最低賃金1万ウォン! 非正規職撤廃! 労働組合の権利! 今すぐ!」を掲げて闘いとられた今回のゼネストを、「無視と差別、幽霊扱いを受けてきた労働者が社会の主人であることを堂々と宣言するゼネスト」だとし、「非正規職ゼネスト」と名づけた。その要求は「時代の要求」であり、全労働者、全人民の生きる権利を守るものだと宣言した。そして「今が積弊(パククネのもとで積み重ねられた弊害)清算と社会大改革のゴールデンタイム」であるとし、「今を逃せば財閥と保守反動勢力の反撃が始まるのは明白だ。闘いを止めることはできない。より速く、より大胆に、より適切な方向での大改革を求める」と強調した。
学校給食の調理員として20年働き、あと6カ月で定年という女性労働者は「私の夢は退職する前に後輩や子どもたちに非正規職のない世界をつくって渡すこと。政府はじっと待てと言うがこれ以上待ってはいられない」と語った。全国教育公務職本部のアンミョンジャ本部長は、「私は7年働いて無期契約職になったが校長が代わるとすぐに解雇された。無期契約職が正規職と同じだと言うのはペテンだ」と語り、「学校非正規職の大半が最低賃金以下の時給で働いている。政府にお願いするのではなく、私たちの労働条件は私たち自身の手で直接もぎとろう」と訴えた。
●2000校以上で学校給食が中止に
この日のストは実際に、団結した労働者の力の大きさを全社会に衝撃的に突きつけた。政府発表によれば私立を除く韓国全土の小中高校のうち3704校で非正規職労働者がストライキに入り、給食が中止となった学校が2171校に上った。保守マスコミなどが非難の声を上げる一方、保護者が率先して「スト支持」の壁新聞を教室に張り出す学校も出た。
全教組(全国教職員労働組合)の組合員も、非正規職労働者と連帯し年休をとって闘いに参加した。パククネは全教組の法的権利を暴力的に奪い、新政権はその撤回を公約したが極右勢力の反発を恐れていまだに実行しない。これへの怒りがたたきつけられた。
翌7月1日には、大型トレーラー車両運転手の組合である貨物連帯がソウル市内で集会を開き、大統領は公約を守れと怒りの声を発した。「自営業主」扱いされてきた貨物連帯など特殊雇用労働者にとって、労働基本権の獲得は切実な課題だ。労働者の団結した力こそが歴史を動かし、社会を変える! この確信のもと不屈の進撃が始まった。
〝財閥との妥協ありえない〟 革命の第2段階へ進む
6・30ゼネストは、ムンジェイン政権の発足後に行われた初の全面ストライキとなった。このストは旧パククネ勢力による敵対だけでなく、新政権と与党=「ともに民主党」の「今この時期にゼネストなどやるな」という非難の声をも正面から打ち破ってかちとられた。
ムンジェイン政権は、パククネを罷免(ひめん)した民衆の巨大な「ろうそく決起」の力に押し上げられて登場した。打倒されたパククネと支配階級は、大統領選挙過程で極右勢力の再結集による必死の巻き返しを狙った。それを全力で支えたのが、北朝鮮の核・ミサイル開発を絶好の餌食として朝鮮半島での戦争突入をあおった米日帝国主義の行動だった。これに対して、パククネの復活は断じて許さないという労働者人民の固い決意が、保守派をたたき落としてムンジェインを圧勝させたのである。
だがムンジェイン政権は労働者階級の政権ではまったくない。「ともに民主党」の本質は資本家階級の党、第2ブルジョア政党である。ムンジェインは労働者が掲げた「財閥解体」などのスローガンを選挙公約に掲げて当選したが、本気でそれを実践しようとは思っていない。逆に、政権発足後には「社会的大妥協」を口にし始めた。財閥の解体ではなく、財閥と労働者階級が「相互に譲り合い」「和解」せよというのだ。そして実際、パククネが推進した政策の一部を廃棄するなど「改革政権」としてふるまっているものの、獄中のハンサンギュン民主労総委員長の釈放や全教組弾圧の中止などは拒否したままだ。
●ムンジェイン政権の「改革」はペテン
その中で決定的な焦点に浮上したのが非正規職問題だ。ムンジェインは「労働が尊重される社会」をつくるとし、そのためにまず公共部門の非正規職の「ゼロ化」を宣言した。しかしその中身は「非正規職撤廃」とはおよそ似て非なるものである。政府の構想は公共機関の業務を分割し分社化して、新設の子会社に労働者を「正社員」として雇用するというものだ。
そこでは本体とは異なる賃金体系が最初から導入され、賃金はこれまでの正規職の7〜8割に引き下げられる。これは非正規職の正規職化ではまったくない。また、パククネが強制した成果給の導入を撤回する代わりに、職務給の導入が新たに画策されている。これらは労働者の分断をさらに進め、逆により大量の非正規職をつくりだし、全労働者の賃金を引き下げていく結果しかもたらさない。
労働者が求める最低賃金1万ウォンについても「すぐには無理」がムンジェイン政府の立場だ。資本の側はこれを受け、来年度の時給を6625ウォン、わずか2・4%の引き上げにとどめると回答してきた。
6・30ゼネストは、非正規職労働者自身の現場からの実力決起をもって、こうした状況を突き破る歴史的闘いとしてかちとられた。非正規職労働者は政府による救済の対象では断じてなく、資本主義・新自由主義の社会を根底から覆す革命の主体であることを公然と全社会に示したのだ。ムンジェイン政権の「社会的大妥協」路線をきっぱりと拒否し、「財閥解体」をあくまで掲げて進むことこそ、パククネ打倒として始まった韓国における革命をさらに発展させる道である。連帯してともに闘おう。
〔写真〕上から
①緑とピンクのベストを着た学校非正規職の労働者がゼネスト大会の中心にすわった(6月30日 ソウル光化門広場)
②「最低賃金1万ウォン!」の壇上からの掛け声に応え、「非正規職完全撤廃!」「今すぐ!」のボードを一斉に掲げるゼネスト大会参加者。最前列右から2人目がチェジョンジン民主労総委員長代行(6月30日)
③給食が中止になった学校の食堂に張られた「スト支持」の壁新聞
④「法外労組即刻撤回」「労働基本権戦取」のスローガンを掲げて集会を開く全教組の教育労働者(6月30日 ソウル)
⑤公共運輸労組貨物連帯本部の総決起大会で、労働基本権を認めよと声を張り上げる貨物労働者(7月1日 ソウル)
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