三里塚新やぐら裁判、内田裁判長の拙速指揮と対決
1月22日、新やぐら裁判が千葉地裁民事第2部(内田博久裁判長)で行われた。三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、支援の労働者・学生・市民は、2018年初の三里塚裁判に「農地死守」の決意もあらたに臨んだ。
この裁判は、天神峰の市東孝雄さんの畑に建てられたやぐら、看板などの4つの物件について、成田空港会社(NAA)が所有者である反対同盟に対し、「収去と土地の明け渡し」を求めて提訴したものだ。
もともとこれらの物件については、市東さん個人の所有と誤って決めつけたまま、農地法裁判一審で千葉地裁・多見谷裁判長がずさんな農地強奪判決を下してしまった。ところが実際にはこれら物件が反対同盟の所有である事実を突きつけられ、このままでは判決の執行に矛盾をきたすことから、この新やぐら裁判を起こしたのだ。
今回顧問弁護団は準備書面を提出し、千葉県知事が下した賃貸借契約の解約許可処分は、「土地の位置特定」で重大な誤りがあることによって無効であることを主張した。
南台と天神峰、市東さんの2カ所の耕作地について、NAAは地主の顔をして「賃貸借契約は終わりだ。知事の許可が下りた。農業をやめて土地を明け渡して出て行け」と市東さんに迫ってきたわけだが、南台農地においては周知のように、重大な「対象となる土地の特定の誤り」の問題が明らかになっている。市東家が一度も耕したことのない「南台41―9」を、誤って賃借地だと決め付けている。
南台農地の解約許可手続きが無効であるならば、やぐら・看板が建てられている天神峰農地も含めての解約許可全体が無効である。なぜなら「空港の完全化」を目指して市東家の耕す土地を奪うために、NAAが一体のものとして行っていることだからだ。
さらに弁護団は、NAAによる土地取得が無効であることを突きつけた。NAAの前身である空港公団は、農地を空港施設に転用する目的で旧地主から底地を買収したと言い張るのだが、実際には耕作者である市東家に無断で行われたものであり、転用を進めるめどもないまま市東家が耕作することを黙認してきた。これは明白な農地法違反であり、NAAに地主を名乗る資格はない。公団と旧地主とが交わした覚書を提出せよ!
このように違法脱法の限りを尽くしながら、NAAは「早く土地を明け渡せ。看板・やぐらを撤去しろ」と迫っている。そして内田裁判長はそうしたNAAの意を汲んで、またしても拙速審理・早期結審の意図を露骨に表した。弁護団に向かって「主張はいつまでに出そろうのか」「専門家の意見書はいつまでに出せるのか」「人証について概要を示せ」などと立て続けに迫った。現在の進行状況などをていねいに説明しても、裁判長は聞く耳を持たずに進行を求めるばかりなので、弁護団は「市東さんの人生がかかったこの重大裁判で、拙速審理は許されない」と強く弾劾し、裁判長の姿勢を追及した。傍聴席からは「内容は無関心で、早く進めることしか頭にないのか!」「NAAに出すものを出させろ!」などの怒りの声が次々と飛んだ。
さらに内田裁判長は性懲りもなく、「進行協議を持ちたい」「次々回の次の日程も決めたい」などと求めてきたが、弁護団は断固これを拒否した。
次回期日は4月16日、次々回は7月19日と確認し閉廷した。
千葉県弁護士会館で、伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。
最初に東峰の萩原富夫さんが、「向こうのスケジュールどおりにはさせない。このやぐら裁判を市東さんの農地を守る闘いとしてしっかり取り組んでいく」とあいさつした。
続いて弁護団事務局長の葉山岳夫弁護士は、裁判長が密室での進行協議に持ち込もうとしたことを弾劾し、「みなさんの傍聴闘争が非常に大事だ」と参加者を激励した。
さらに弁護団全員が発言し、国家権力の意図を体現した裁判長の思惑を打ち砕いた勝利を確認した。
質疑応答の後、市東さんの農地取り上げに反対する会が連帯発言を行った。
最後に伊藤さんが、「2018年、敵の攻撃との闘いは一層厳しくなるだろうが、勝てる年だ」と決意を表し、2・19耕作権裁判、3・4芝山町現地デモ、3・8請求異議裁判、4・1三里塚全国総決起集会(成田市栗山公園)という連続した春の重大闘争スケジュールを確認し、全力で取り組むことを確認し合った。(TN)
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