豊洲市場を使用禁止に 耐震偽装裁判で法廷を圧倒
9月21日、豊洲違法建築物除却命令等義務付け訴訟(本訴)の第1回口頭弁論が、東京地裁民事第51部(清水千恵子裁判長)で開かれた。この裁判は5人の築地・仲卸が原告となり、豊洲市場6街区の水産仲卸売場棟が建築基準法令に違反した建物であるとして、行政処分庁である東京都知事・小池百合子に除却・使用禁止命令を義務付けることを求めた行政訴訟である。移転強行前に使用禁止を求める仮の申し立ても行っている。
原告が堂々陳述
原告代表の宮原洋志さんが意見陳述に立った。宮原さんは、東京湾の浚渫(しゅんせつ)工事のへどろで埋め立てた豊洲市場の水産仲卸棟について、柱脚の鉄量が44%不足していることを指摘した。「震度6の地震が起きたら根元から崩れ、地盤が弱いのでずぶずぶとそのまま沈んでしまう。市場で働く人、お客さんの命が非常に危ない」と述べた。さらに、水産卸売場棟の駐車場の杭が114本のうち48本も支持層に届いておらず、杭の上部を切断したため強度が半減していることにも触れて「こんな危険なところには絶対私たちは行くことはできない」と声を強めた。堂々とした陳述に傍聴席から拍手がわき起こった。
都の主張を粉砕
続いて原告代理人の武内更一弁護士が意見を述べた。武内弁護士は「東京都の建築行政の統括者である東京都は、民間の建物に強制する立場にある。その役所自身が所有する建物が違法であれば自ら当然是正措置をすべき」と述べた上で、本件建物が鉄量も構造計算上も建築基準法に違反していることを図面を用いて説明した。
本件建物はセンクシア株式会社の「鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造用スーパーハイベース工法」を用いた非埋込型柱脚であるが、1階柱脚の構造計算においては非埋込型のためSRC造より0・05高い係数の鉄筋コンクリート(RC)造のDs値(構造特性係数)を用いなければならない。ところが被告東京都は原告の主張に対して、Ds値の割増は不要と主張している。武内弁護士は「東京都はセンクシア社が問題ないと説明した資料をつい最近になって出してきた。そんな記述は同社の製品のカタログのどこにも書かれていない。根拠のない記述だ」と批判した。
最後に、後戻りできなくなる前に、仮の申し立てで求めた使用禁止命令だけは早急に出すことを強く求めた。武内弁護士は東京都が裁判所をたぶらかすために出した苦しまぎれの主張を理路整然と粉砕し、正義が原告側にあることを突きつけた。この陳述に拍手が起こり、被告側代理人は一言も発することができず閉廷した。次回は11月1日(木)午後3時、東京地裁で開かれる。
裁判前に午前7時半から地裁前と農林水産省前で行われた街宣では、「裁判所は都と日建設計の耐震偽装を許さず豊洲市場を使用禁止に!」と書かれたビラと訴えが注目を集めた。
裁判後には弁護士会館で総括会議が開かれた。代理人の藤田城治弁護士が今回の裁判の争点について解説し、原告一人一人から最後まで闘う決意が述べられた。(別掲)
11カ所でひび割れ
9月19日、都議会定例会開会の所信表明で小池は、豊洲市場について「安全・安心のための管理と情報発信を徹底していく」「築地再開発や環状2号線の整備など……全庁一丸で着実に進める」と述べ、移転と築地解体の意思をむきだしにした。だが、何が「安全・安心」か。18日には亀裂が11カ所にも及んでいると発表された。水産仲卸売場棟の外の道もひび割れし、建物の外周全体が沈下している。都は「想定の範囲内だ」「沈下は2年程度で収束する」「建物に影響はない」としている。
柔らかい地盤の上に建物を建設した場合、荷重により土中の水が抜けて沈下する。台風21号で浸水し、8千人が孤立した関西空港は開港時から最大で18㍍も沈下した。豊洲の地盤沈下はこれで決して終わらない。建物自体が傾く危険もある。開業を中止し、再調査するべきだ。
とにかく豊洲が開業してしまえばいいという小池のやり方を許してはならない。原告を先頭とする築地の仲間は「ここにとどまって営業を続ける」と不退転の決意を表明している。豊洲建築物除却命令等義務付け訴訟は都を徹底的に追い詰めている。どんなことがあろうと築地市場を守りぬくために団結して闘おう。
<裁判後の総括会議発言>
原告代表・仲卸 宮原洋志さん
われわれの裁判は築地のみなさんに喜ばれているんです。東京都は今度築地を解体すると言っているでしょう。それをわれわれの裁判で止められるんです。裁判をやっている間は崩すな、と主張してやっていますので。それにはものすごく感謝されています。
築地の仲卸さんは、「あんなに立派に建ててあるのにどうして耐震偽装なんだ」と言う人が多いんです。たしかに見た感じは、立派に建ててある。ところが中身の仕組みが全然違う。仕組みを説明しますと初めてわかる。そして下が柔らかい。杭がどこまで入っているかわからない。地盤沈下もしています。今後30㌢は想定内と言っていますけど、30㌢も沈下したらどうするんだと。
われわれは最後まで築地市場にとどまります。それには自分たちの財産を放棄しないことがものすごく重要です。「建物の取り壊しをするな、私有物産だ」と主張してとどまります。
しかし、東京都がこれをたくみに崩しにきている。水道も電力も解消して新たに向こうで契約しなさい、ただで移動させてあげます、残置物を放棄しないと自分で廃棄費用を払わないといけないとプレッシャーをかけています。この同意書にサイン、判子を押してしまってはいけません。これを撤回すれば築地にとどまることができます。
原告・仲卸
こんなに応援していただいて、こちらの方がすごく感激した感じです。私もすごく勇気が出てきました。なお一層がんばっていきたいと思います。
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