3・11反原発福島行動へのメッセージ 核惨事は現在も進行中 核戦争防止国際医師会議(IPPNW)ドイツ支部議長 アレックス・ローゼンさん
3・11反原発福島行動20に寄せられた、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)ドイツ支部議長のアレックス・ローゼンさんの東京オリンピックに反対するメッセージを要約して掲載します。(編集局)
核惨事は現在進行中で、汚染地域に住む人々に深刻な影響がもたらされています。しかし日本政府は東京オリンピックを利用し、被災地が平常に戻ったかのように見せようとしています。福島市では野球・ソフトボール競技と聖火リレーが行われます。
聖火リレーの出発点Jヴィレッジでは複数のホットスポットが見つかっています。最大は地表面で毎時71㍃シーベルト、1㌔グラムあたり103万ベクレル。これは、選手や観客らの健康を害するものです。これについてIOC(国際オリンピック委員会)にコメントを求めましたが、責任者の回答は「開催地の空間線量は世界の他の主要都市とあまり変わらないと理解している」というものでした。
今も数万人の人々が福島に帰ることができずにいます。この人たちは地震や津波だけでなく、核惨事ですべてを失ったのです。しかし日本政府は「住んでも安全」と宣言し、以前住んでいた場所へ人々を帰還させています。被災地の汚染状況を見れば、国際基準をも踏みにじるものです。
原子力産業と日本政府が影響を過少に見せようとしているもう一つは、放射能による小児甲状腺がんです。福島県立医科大学が2月13日に発表したデータでは、疑いを含めて237人の子どもが甲状腺がんであるとされています。この数字は今まで知られている小児甲状腺がんの発生率の数十倍です。
福島における甲状腺がんの増加は「スクリーニング効果」によるとされていますが、正しくありません。なぜなら、福島で約30万人の子どもたちに行われた先行検査で116人の子どもたちに甲状腺がんが見つかりましたが、その後2014年から行われた本格検査で新たに71件の甲状腺がんが見つかっています。これらは先行検査で見落とされたか、14年までに成長したものです。福島の子どもたちが甲状腺がんになる割合の増加は、チェルノブイリ周辺を除いて世界的にも前例のない事態です。
もう一つの問題は、放射能汚染水の海洋への放出です。政府や東京電力は「十分な場所がない」「海洋放出は最良の方法」「処理水に含まれる放射性物質は無害」と説明していますが、調査によれば汚染水には非常に危険な高濃度のトリチウム、ストロンチウムなどが含まれています。希釈は解決にはならず、海洋を放射能で汚染することになります。多くの人々や水中の生態系も影響を受けます。
医療従事者として、原子力産業と日本政府とが福島での核惨事の影響を小さく見せようとしていることを憂慮しています。日本の人々も、地球上の他の地域の人々と同様に、健康的な環境で生活する権利と知る権利とを持っています。これらが日本政府によって侵害されているのです。
(ふくしま共同診療所・布施幸彦院長の監修のもと、若干数字の補正などがなされています)
この記事へのコメントはありません。