三里塚団結街道裁判―成田市の卑劣な文書隠しを厳しく追及
9月18日、千葉地裁民事第3部(内野俊夫裁判長)で団結街道裁判が開かれた。三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、支援の労働者・学生は、農地を守る気概に燃えて、闘いぬいた。
団結街道(成田市道・天神峰―十余三線)は、天神峰で農業を営む市東孝雄さんにとって、自宅と南台の耕作地を直線で結ぶ、日々の営農に不可欠の道路であり、一般的にも利用者が多い重要な交通路であった。その道を成田市は、2010年6月に夜陰に乗じて暴力的に封鎖・廃止し、土地を格安で成田空港会社(NAA)に売り飛ばす暴挙に及んだのだ。
開廷すると最初に弁護団は、陪席裁判官の交代に伴う更新意見を述べ、さらに準備書面29を陳述し、被告のNAAと成田市を完全に圧倒した。
2018年2月に証人として出廷した元成田市土木部長・中村壽孝は、市として団結街道の廃道を決定し実行した経緯・根拠・手続き、責任の所在などについて尋問され、「わからない」「記憶にない」を繰り返すという無責任極まりない対応に終始した。
明らかになったのは、この処分が道路法に基づく通常の手続きに則ったものではなく、政治案件として小泉市長の「ツルの一声」で上から行われたということだ。
09年7月29日に開催された4者協議会(国交省、NAA、千葉県、周辺市町)で、空港の年間発着30万回化に向けて、第3誘導路建設が提案・合意されたが、それにじゃまになるということで、最初から結論ありきで実行された違法・違憲の廃道である。現に耕作している畑に隣接する道を廃止するなどという前例はなく、廃道の要件を定めた道路法10条も一切無視された。小泉市長を証人として法廷に呼び出し、この違法行為を進めた経緯をすべて吐かせることが絶対に必要だ。
今、新型コロナの全世界的拡大のもとで航空需要は一気に蒸発し、成田は発着・旅客数が激減して存亡の危機にある。インバウンド政策のもとで過度の料金値下げ競争、路線急拡大、過大な設備投資が続けられて航空バブルが膨張してきた。それがコロナの直撃で破裂し、実態が顕在化した。
現代資本主義におけるグローバリズムの進展と、無秩序な開拓・乱開発・自然破壊を主な原因として、パンデミックがもたらされた。資本主義自身にこれを止める力はない以上、感染症の脅威は続くし、航空需要の回復はありえない。
第3誘導路の存在意義が消失したことで、団結街道廃道の理由も必要性もなくなった。廃道処分を直ちに取り消せ!
そして弁護団は、09年に4者協議会が開かれる以前の、国・NAA・成田市の間で交わされた説明・協議などの会議記録(メモ・録音・報告書など)について、裁判所が「文書提出命令」を出すように申し立てている。これに対し被告・市は、そうした記録について「証拠調べの必要なし」と反論した上に、「存在を確認できなかった」と白々しく述べた。明らかな虚偽答弁であり、悪事隠ぺいのために官僚などが使う常套句だ。弁護団が、「最初からなかったのか、以前はあったが廃棄されたのか」と詰め寄ると、自信なさげに「少なくとも現時点では存在を確認できない……」などとつぶやく。即座に傍聴席から「うそつくな!」「隠さず記録を出せ!」と激しい怒声が飛んだ。内野裁判長もさすがにこの発言を見過ごすわけにもいかず、「もう少し調査し、作成したのか、廃棄したのかどうかを確かめて」と促した。
弁護団は、成田市の10年1月の「調整会議」の中で、「この(廃道)事案は空港反対派の生活道路の廃止に関するものであり、十分な調整ができていないと、今後、訴訟等のリスクを追う」と記載されている事実を指摘し、「被告らが記録を保管してないことはありえない」と厳しく批判した。
さらに弁護団が、「小泉市長の証人採否はいつ行うのか。この問題を先送りして2年以上も空転している」と詰め寄ると、裁判長は憮然として、「文書提出命令の処理が終わってから」と応じる。傍聴席からは「いつまで遅らせるのか」「直ちに市長の喚問を決めろ」と抗議が殺到した。
次回期日を来年3月5日と確認して、この日は閉廷。
千葉県弁護士会館で、伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。最初に弁護団事務局長の葉山岳夫弁護士が発言し、文書隠しの悪あがきを断罪しながら「反対同盟のめざす空港廃港が現実に視野に入りつつある。市とNAAを一層追い詰めよう」と呼びかけた。
さらに弁護団一人ひとりがあいさつし、小泉市長証言実現への決意と展望を語った。
動労千葉の中村仁さんが連帯発言に立ち、「JRグループ1500億円コスト削減」攻撃と対決し、9・26動労千葉定期大会、9・27三里塚集会に連続して立つ決意を表した。
最後に伊藤さんがあらためて、9・27大結集へ一同に奮起を促した。(TN)
スケジュール
◎三里塚全国総決起集会
9月27日(日)正午~ 会場 成田市赤坂公園
主催/三里塚芝山連合空港反対同盟
◎第3誘導路裁判
10月9日(金)午前10時30分開廷 千葉地裁601号法廷
◎請求異議控訴審(最終弁論)
10月22日(木)
午前11時30分 東京・日比谷公園霞門(かすみもん)集合
正午、裁判所へ向けデモ行進に出発
午後2時開廷 東京高裁102号法廷
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