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三里塚第3誘導路裁判―「航空需要は回復しない」

第3誘導路裁判閉廷後に開かれた報告集会。決戦本部長の太郎良陽一さんが市東さんの農地を守るために天神峰現地への結集を訴えた(4月16日 千葉市)

4月16日、千葉地裁民事第3部(内野俊夫裁判長)で、第3誘導路裁判が開かれた。
この裁判では三里塚芝山連合空港反対同盟が、被告の国と成田空港会社(NAA)に対し、B’滑走路の2500メートルへの延長(2006年)、第3誘導路建設(2010年)という、二つの変更許可処分の違憲・違法性を追及し、B滑走路の使用禁止、飛行の差し止めを求めている。予定されていた1月の期日が新型コロナの「緊急事態宣言」下で取り消されたことで、開廷は約半年ぶりになる。
コロナ感染拡大によって、成田空港が当初の「基本計画」を無視してB’滑走路とその誘導路を建設してきたことの反人民性、違法性はより鮮明になった。今回、反対同盟顧問弁護団は、国とNAAの主張に対し、徹底的に批判する準備書面を陳述した。
国は、「新型コロナ感染は本件処分後に発生したので、違法かどうかを判断することには関係ない」とうそぶく。だがそんな言い訳は通用しない。今や成田空港は飛行中止・減便・路線廃止等が相次いでおり、閑古鳥が鳴く状況が続いている。コロナパンデミックは温暖化による気候変動などと同様に、資本主義経済に対する自然界からの熾烈な「反動・復讐」であり、今後も同様の感染症の周期的発生は必至である。このような自然の摂理に向かい合う観点を欠落し、「観光立国」などの非実体的、非生産的で愚かな経済政策をもとに、本件工事実施計画は遂行されてきた。
「予想できなかった」と言って免罪されるものではない。「コロナのごとき事態は将来あり得ない」との浅慮が、野放しの空港拡大路線に走らせたのだ。
処分当初に「適法」「合理的」と思われたことが時間の経過とともに違法性、不合理が現れた時は、最新の状況に対応して許認可が見直されるべきなのだ。
さらに被告NAAは、「航空需要がなくなったのなら差止請求権の根拠もなくなる」と言う。
まったく本末転倒だ。NAAは今も「航空需要回復に貢献するため」と称して第3滑走路建設を計画し、基本計画の2倍に敷地を拡張しようとし、見通しのない機能強化策に血道をあげ、周辺住民を犠牲にしようとしている。差し止めの必要性は継続している。
また、「航空需要は今減少していても、成田は揺らぐことなく公共的機能を担っている」となどと主張するが、これもまったくの空論だ。
成田は、狭い内陸空港として国際空港としては致命的な欠陥を抱え、農民の農地を奪って建設が強行されてきた。そして羽田との生存競争を繰り広げながら、利益追求に明け暮れ、過大な需要予測に基づく発着枠の拡大を続けてきた。そして、天神峰の市東孝雄さんの農地の強奪をたくらんでいる。人間社会存立の基盤である農業を犠牲にしたNAAの私利私欲の追求である。

4月1日早朝、「空港会社立ち入り禁止」の看板を前に、市東さんの農地を守り抜く決意を表す(天神峰字南台)

新型コロナの影響は一過性のものではなく、これまで観光需要に頼り切っていた航空需要に回復の可能性はない。航空会社の経営破綻、吸収合併などの大再編も止まらない。IATA(国際航空運送協会)によると2020年の世界の航空需要は19年に比して一挙に3分の1に落ち込み、21年にも4割弱の見通しだ。NAAが優先すべきは過剰設備の処理・廃棄であり、さらなる機能強化など論外だ。直ちにB’滑走路の飛行を差し止めよ!
以上のような弁護団の核心を突いた追及の前に、10人以上も並んだ国とNAAの代理人は一言もなく手元に視線を落とすだけだ。
次回期日を7月16日、次々回を10月22日として閉廷した。
千葉県弁護士会館で報告集会が開かれた。弁護団は今回の追及の意義を解説しながら、現在の資本主義体制そのものの根底的危機を指摘した。
請求異議控訴審での反動判決によって、4月1日以降、市東さんの農地の明け渡し強制執行は、法手続き的には可能な状態になっている。決戦本部長の太郎良陽一さんは、4月1日に反対同盟と支援連で早朝行動に立ち上がったことを報告し、あらためて現地への結集と実力阻止陣形の構築を呼びかけた。
そして当面する方針として、5月26日の東京高裁での新やぐら裁判控訴審(霞が関デモと傍聴)への参加を熱烈に呼びかけた。(TN)

スケジュール
◎新やぐら裁判控訴審
5月26日(水)
午前11時30分 日比谷公園霞門集合→霞が関・東京高裁包囲デモ
午後2時開廷 東京高裁

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