三里塚耕作権裁判―更新意見でNAAを追及
G7広島サミット粉砕闘争の高揚を引き継ぎ、5月22日、千葉地裁民事第2部(齊藤顕裁判長)で、市東孝雄さんの耕作権裁判闘争が闘われた。
開廷に先立つ午前9時、三里塚芝山連合空港反対同盟の呼びかける決起集会が千葉市中央公園で開かれ、80人の労働者・学生・市民が結集した。太郎良陽一さんの司会で、最初に東峰の萩原富夫さんが発言に立った。耕作権裁判の重大性を訴えた上、2・15天神峰農地強制執行に対しともに闘った仲間6人へのでっち上げ逮捕を徹底弾劾し、「許せない! サミット警備で弾圧やっているという公安警察のポーズとしか思えない。援農に来てくれる仲間が逮捕され、私たちも困っている。千葉地裁に徹底弾劾の声を!」と呼びかけた。
続いて動労千葉の川崎昌浩さんが連帯発言に立ち、現在JRでかけられている業務融合化攻撃、久留里線廃止攻撃との闘いを報告し、反対同盟と車の両輪として戦争絶対反対でともに闘い抜く決意を表した。
さらに関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会、市東さんの農地を守る沖縄の会の発言を受け、太郎良さんのリードでシュプレヒコールを上げて千葉地裁に向けたデモに出発した。
宣伝カーからは婦人行動隊の宮本麻子さんが、千葉市内繁華街に「強制執行弾劾、南台農地死守」の声を響かせ、出勤途中や開店作業中の労働者が注目した。
この日も裁判所内外に職員と県警を大量動員した警備態勢が敷かれる中、60以上の傍聴席を埋めて開廷。前任の本田晃裁判長から齊藤裁判長に交代したことで、反対同盟顧問弁護団が更新意見陳述を要旨以下の通り行った。
機動隊の暴力を使った夜間襲撃として強行された2・15天神峰農地強奪の強制執行と闘った6人に対し、「公務執行妨害」などをでっち上げた逮捕が行われた。G7広島サミット=帝国主義首脳会議に反対する声をつぶすための予防弾圧だ。千葉地裁は、6人の勾留理由開示公判開廷を速やかに開かねばならない。
この耕作権裁判が始まった時、市東さんは「成田空港会社(NAA)の土地を不法耕作する男」と報じられた。祖父の代から100年耕してきた土地を受け継いで誠実に営農してきた市東さんにとって、これほど屈辱的なことがあるか。
市東さんに土地の明け渡しを迫るNAAの主張は、この裁判の中で矛盾・破綻を露呈し、裁判所による文書提出命令にも従わない。
NAAは、孝雄さんの父・市東東市さんの署名押印があるとする「同意書」「境界確認書」を自らの主張の唯一の根拠としながら、それらが偽造文書であることを暴かれるのを恐れている。
新型コロナ感染症の影響で航空需要の拡大のもくろみは吹き飛び、回復の見込みもなく、空港機能強化の根拠が消失している。
原告NAAによる、市東さんに対する農地の明け渡し請求は許されない!
さらに弁護団は準備書面を陳述し、NAAが自ら犯した土地の位置特定の誤りについてこの間苦しまぎれに述べた憶測や主張の数々を追及した。
NAAは言う。「市東東市は図面を自分の目で確かめて、自分が耕している土地の位置はこれで間違いないと署名押印した。なぜなら東市は賃借地の買収には反対していたので、そんな重要な図面を確かめないはずがない。位置の特定を間違えるはずがない。
それが間違っているというなら、ろくに図面も見ずに署名した当人の過失だ。あるいは、公団の用地買収を混乱させ妨害するために悪意でうそを言ったのかもしれない」
よくもこんな憶測を並べ立てたものだ。そもそも空港公団の用地買収に向けた文書であることが明らかなら、東市さんは署名などするわけがない。
実際には、賃借権がついたままの土地を公団が買収することは当時前例のないことであり、東市さんが「買収を妨害するために悪意でうそを言う」など成り立ちようがない。
これらの詳細な矛盾点について徹底批判し、求釈明が突きつけられた。
また当時、反対同盟法対部の元永修一氏が東市さんから直接聞いて作成した耕作地の位置・現況を表す報告書「元永メモ」について、NAAは「信用できない」「同意書、確認書に対抗して作られたもの」と難癖を付けている。だが、同意書・確認書と関係なく、しかも時間的に先だって作成されているところに、元永メモの重大な証拠価値があるのだ。
また、土地の位置特定の過ちが発生した背景には、旧地主の藤﨑政吉が空港公団に対し根強い不満・不信感を抱いていた事情がある。藤﨑は条件派として1972年にホテルを開業したが、成田開港の遅れもあって経営が悪化し87年に倒産し手放した。藤﨑は南台農地をできるだけ高額で売り払うために、自ら描いたずさん極まりない手描きの「藤﨑メモ」に固執した。「市東はもともとの自分の耕す場所はここだと言った」との藤﨑の強い主張に従う形で、空港公団は市東家が過去に一度も耕したことのない土地を賃借地であるとする誤りに陥った。それが同意書、確認書に添付された図面となって現れた。これらの文書の作成事情は、今NAAが「不存在」と言い張って隠匿している文書類に書かれていることは間違いない。
弁護団の鋭く詳細な批判に対し、NAAの代理人弁護士たちは青ざめた表情で沈黙を守るのみ。
齊藤裁判長は口調だけは穏やかに手続きを進めるが、千葉地裁に良い判決を書いた裁判長がいた試しはない。次回期日を7月24日、次々回を9月25日として閉廷した。
千葉県弁護士会館で、伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。弁護団それぞれが発言して法廷を解説し、NAAによる文書隠蔽の悪辣さについて改めて厳しく指摘した。また、旧地主藤﨑が、小作農家に対して権利として賃借権を認めるというより、「温情で使わせている」という、傲慢で反動的な考えの持ち主であったことも明らかにされた。
ユニオン習志野の菊池 晴知さん、全学連の矢嶋尋副委員長が連帯発言を行った。矢嶋さんは、三里塚闘争に触れた学生が今回の広島G7サミット粉砕闘争にも全力で立ち上がったことを報告した。
最後に市東さんがあいさつに立った。「不当弾圧の逮捕は許せません。強制執行の時は皆さんご苦労様でした。夜に来るとは思ってもいませんでしたが、次の朝の皆さんの顔を見たらさわやかで、それなりにみんなやったんだなと一安心しました。今日の裁判ですが、新しい裁判長が17年間分の文書にきちんと目を通すか、それだけの根性のある裁判長かどうか。小手先で『このくらいでいいだろう』と開き直ることを許さず、今日のようにゴリゴリ追及しないと国とNAAを相手にする闘いではとても勝てません。これからも証拠をどんどん突きつけて闘っていきたい」
市東さんの発言を受け、一同は気を引き締めて裁判勝利の決意を新たにした。
集会後に千葉地裁前に布陣し直し、矢嶋副委員長のリードで「弾圧粉砕、6人の仲間を釈放しろ」と怒りのこぶしを突き上げた。(TN)
スケジュール
◎空港拡張差し止め裁判 6月2日(金)午前10時30分開廷 千葉地裁
◎天神峰現地闘争&農楽まつり 7月2日(日)午前11時 市東さんの南台の畑集合、萩原さんの清水の畑までデモ
12時15分農楽まつり(@清水の畑)
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