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三里塚耕作権裁判―証人尋問で賃借権時効取得を立証

開廷に先立ち、千葉市中央公園で決起集会を開き、反対同盟を先頭に市内デモに出発(12月18日 千葉市)

市東孝雄さんの南大農地をめぐる耕作権裁判が12月18日、千葉地裁民事第2部(齊藤顕裁判長)で開かれた。
開廷に先立ち三里塚芝山連合空港反対同盟が呼びかける決起集会が千葉市中央公園で開かれ、司会を太郎良陽一さんが務めた。
最初に東峰の萩原富夫さんが発言に立ち、元公団職員の法理哲二証人の出廷拒否を成田空港会社(NAA)の差し金と弾劾した。さらにNAAが第3滑走路建設の準備工事に着手したことを、農業破壊、環境破壊として強い怒りを表し、この裁判に必ず勝利する決意を鮮明にした。闘争日程として1月14日に新年団結旗開き、3月には芝山文化センターで空港拡張反対集会を開催することを明らかにした。
動労千葉の中村仁副委員長、関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会の連帯発言を受け、太郎良さんのリードで力強くシュプレヒコールを上げ、市内デモに出発。農地強奪と軍事空港建設への怒りを表し、千葉地裁に迫った。

この日は人証調べの2回目。開廷早々、北海道大学大学院法学研究科教授の吉田邦彦さんが証言台に立った。反対同盟顧問弁護団の主尋問に答えて民法学の見地から、市東さんの南台農地について時効取得の成立を明らかにした。
吉田さんは2022年1月の新やぐら裁判控訴審でも証言し、収用法の代わりに農地法を用いて農地を取り上げる手法は許されないと強調したが、それを無視して今年2・15強制執行に及んだことを「農民つぶし」として憤りを表した。

その上で、不動産の賃借権に関する時効取得の判例を列挙し、父・東市さんから受け継いだ市東さんの農業を「長年の生業としての農業に生きがいを見出し、人格陶冶(とうや)の表裏の問題として、先住者の権利を守ろうとしている」と表した。そして、諫早湾生態系破壊の問題をも例示しながら、補償を金銭換算して事足れりとする昨今の最高裁などに顕著な思想を「国際的に見ても時代錯誤」と指摘し、「人格的財産」(結婚指輪も20年着けていれば人格が蓄積・反映される)としての農地の重要さを強調した。時効にかんする学説を専門的に掘り下げた上で、「市東さんの長年の耕作を前提とする農地賃借権の取得時効の主張は、『誠実な紳士』(時効制度の趣旨を整理する概念。時効で保護されるべき対象は、悪意あるつけの踏み倒しなどは除くべきとするもの)の主張であり、積極的に支持されるべき」と位置づけ、「不法耕作」なる決めつけを打ち砕いた。
そしてNAAが南台のA、C、D土地の明け渡しを求めるのに対し、
(元々の市東家の賃借地、石橋と一時交換した上88年以降耕作)
(71年に石橋家との間でAと交換し、石橋移転後も耕作)
(東市さんは旧地主・藤﨑の所有地と思い71年から耕作し続けていたが、鈴木家の所有だった)
という個別の事情を検討し、市東家は誠実に藤﨑に賃料を支払い、何ら問題が生じていなかったことを明らかにし、すべてにおいて賃借権の時効取得が成立していると明らかにした。特に藤崎が88年に底地を市東家に無断・秘密裏に空港公団に売却した上、15年もたって登記されたこと、その間市東さんが農業を続けてきたことから、時効の成立は揺るがない。

左から、NAA代理人森本哲也、NAA代理人上野至(元千葉地裁判事)、齊藤顕裁判長(千葉地裁民事第2部)

最後に吉田さんは、NAAの明け渡し要求は「法の支配」に反すると断じ、農民強制立ち退き訴訟に対抗して「賃借権時効取得」を主張する正当性を強調した。
原告NAA代理人の上野至、森本哲也は反対質問で、「耕作面積が増えているのに払っている賃料がそのままではおかしいのではないか」などと吉田証人に批判されたばかりの「金銭換算」を持ち出してケチをつけようとしたが、「20年時効が成立していることは疑いない」と吉田教授から一蹴された。市東さん自らも「農地はほったらかしにすれば草だらけになり隣の畑にも影響が及ぶもの。NAA代理人は農家のことが何もわかっていない。当時の事情を法理さんならもっと知っているはずだから証言させるべきだ」と弾劾した。
3時間に及ぶ充実した証言を終えた吉田さんに向け齊藤裁判長は「久しぶりに民法の話を聞けた。非常にわかりやすかった」などと「敬意」を表し、傍聴席からは熱い拍手が湧いた。
弁護団はあらためて法理哲二を証言させるために勾引も含めた手続きを求めたが、裁判長は法理が居留守を使って電話にも出ないことを認めながら、判断を先送りした。
次回期日は1月22日、元反対同盟法対部の元永修二さんの証人尋問と確認し閉廷した。

報告集会で笑顔であいさつする北大の吉田邦彦教授

地裁向かいの千葉県教育会館で、伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。
最初に市東さんがあいさつに立ち「NAAは今回もつまらないところにケチをつけようとしてきたが、ああいうことしか言えないのであきれた。これからも追及し彼らをギャフンと言わせる闘いをしましょう」と訴えた。
続いて吉田教授が立ち、前日まで声が出ないほど体調不良だった事情なども明かしながら、「NAAの反対尋問は揚げ足取りだけ。内容への実質的な質問はできないのかと感じた」と感想を述べた。また、アフガニスタン、パレスチナ・ガザ、ブラジルなどの庶民の現状に深くかかわりながら論考を積み重ねてきた経験を振り返り、今後も市東さんに連帯する意欲を表して大きな拍手を浴びた。
弁護団一人ひとりが発言し、吉田証言が内容の高さと豊富さで裁判所を圧倒したことを勝利的に確認した。
最後に伊藤さんが、1月14日の新年デモと団結旗開きを告知し、「来年もよろしくお願いします!」と2023年の激闘を締めくくった。(TN)

◎農地は金銭換算できない。社会正義的な価値の復権を―吉田邦彦教授の証言より
判例は、(Ⅰ)土地の継続的用益という外形的事実、(Ⅱ)賃借の意思に基づくことが客観的に表現されていることを要件とし、賃借権の時効取得を認めている。
現地を訪れると、市東さんは、有機農法に生きがいを見いだし、ニンニク、カブ、ほうれん草、ネギ、ズッキーニ、トウモロコシ、玉葱、里芋、らっきょうなど実に多様な野菜類を丹精込めて育てている。すべてを「金銭問題」に還元する成田空港側に対して、高額の「離作料」よりも、「長年の生業としての農業に生きがいを見いだし」、人格陶冶の表裏の問題として、「強制立ち退きの地・成田」にならないように、先住者の権利を守ろうとしている。これを便宜主義的な無限の空港拡大論で対処するのではなく、慎重な利益考量が求められるというのが、ここでの根本的な問題意識である。特にわが国では、すべて金目の問題として市場主義的に見る見解が強いので、この点には留意すべきである。

南台農地にともに立つ、吉田邦彦教授と市東孝雄さん。下は南台の農地の関係土地図

賃借権限(小作権限)に基づく市東さんの長年の耕作を前提とする農地賃借権の取得時効の主張は、「誠実な紳士」の主張であり、何ら責められるべきではなく、積極的に支持されるべきものである。
市東さんの主張の大前提となる事実関係は、市東家は先々代の戦前の1921年頃から南台41番の「A・B」土地を地主藤﨑氏より賃借しているという事実である。
すなわち、A土地については、そもそも契約上の賃借権が存在していると言うのが第一義的な考えであるが、予備的には10年の賃借権の時効取得が1998年4月末に成立していると考えている。またC土地とD土地については、いずれも20年の賃借権の時効取得が1992年12月末に成立している。
故に、市東さんとしては、地主の藤﨑氏より農地賃貸借をしたものと考えており、しかも農地賃貸借の時効取得において、(それとともに)重要なのは、平穏公然に過去50年もの間、南台のこの地(A、B、C、D)で耕作を継続してきたことであり、対象地に仮にずれがあっても、先例によると、それは治癒されて、賃借権(小作権)の取得時効ができることになろう。
本件市東さんの賃借権の安定度は、各土地によりグラデーションはあるものの、いずれにおいても、認めることができ、その客観的表現としての長期的・一体的耕作の継続により、肯定できると考えられる。
ブラジルでは司法が取得時効を積極的に運用し、小規模農家に農地が解放されている。
無限拡大を図る成田空港により、先住農民が「あってはならない農地法の適用」により、蹴散らされるように、立ち退き請求の憂き目に遭っている。本来の姿の紳士保護に適合的な市東さんの取得時効の主張に前向きに動くことにより、民法の社会正義的な価値の復権を図ることの意義に、今こそ気づくべきであろう。

★参考
民法第162条【所有権の取得時効】 ① 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。 ② 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

民法第163条【所有権以外の財産権の取得時効】
所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する。

スケジュール
◎三里塚新年デモ&団結旗開き 1月14日(日)午前11時 市東さん南台農地集合→デモ
午後1時 旗開き 福祉センター「やすらぎの里」(芝山町飯櫃126―1)
◎耕作権裁判 1月22日(月) 午後1時45分開廷 千葉地裁(証人調べ第3回 反対同盟法対部で活動していた元永修二さん)

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