三里塚現地闘争―不当判決弾劾しNAA本社へ向け怒りのデモ
三里塚芝山連合空港反対同盟が主催する三里塚現地闘争が、3月30日に行われた。天神峰・市東孝雄さんに出された農地強奪判決に怒りを燃やし、全国から395人の労働者・農民・学生・市民が係争地である南台農地に結集し、この地を絶対に守り抜く覚悟でともに闘いぬいた。
千葉地裁民事第2部・齊藤顕裁判長は24日の判決で、成田空港会社(NAA)の訴えをそのまま認め、さらに一層悪質な文句を付け加えて、「市東にこの地を耕す権利はない。明け渡して出ていけ」と命じたのだ。断じて認められない。
晴天のもと、いつも通り作物が豊かに実るこの畑の脇を「会場」にして、正午前から色とりどりの旗やのぼりを掲げた参加者が集まってきた。空港敷地との境界は高い鉄製フェンスで仕切られ、目の前の滑走路と誘導路をジェット機が騒音をまき散らして行き来している。大量動員された警察機動隊と私服刑事が、空港側から参加者を監視し威嚇している。
NAAと国家権力への怒りと緊張感の中で、デモ出発前の打ち合わせが行われた。司会の反対同盟事務局の伊藤信晴さんが第一声を上げた。「許すことができない反動判決だ。賃貸借契約には賃借地の場所特定がない、面積によって賃貸借が結ばれた、だからNAAの請求は正当だと。これは暴論だ。位置の特定がなければ面積も出ない、これが社会の常識だ! この司法の腐敗は日本帝国主義の中国侵略戦争策動と無縁ではない。本日、日米防衛相会談が開かれ、中谷防衛相は日米の指揮権の統合が進んだと語った。この戦争情勢との対決なしに控訴審も勝てない。成田軍事空港粉砕、農地死守、実力闘争の原則を打ち固めて闘う」
続いて、婦人行動隊の宮本麻子さんが反対同盟の「弾劾声明」を読み上げた。声明は「19年に及ぶ裁判で明らかになったのは、NAAの側こそが違法・脱法を繰り返してきたこと」と断じ、「位置が特定できないからすべてを奪ってよい」という判決の屁理屈を「恥を知れ!」と弾劾した。そして「今回の判決は軍事空港建設のための反戦運動つぶしの攻撃」と指摘し、控訴審闘争への決起を宣言している。
https://www.sanrizuka-doumei.jp/wp/wp-content/uploads/2025/03/250330dangaiseimei.pdf
主催者あいさつとして東峰の萩原富夫さんがマイクを握った。「位置特定はどうでもいいとする判決に本当に腹が立つ。だが仮執行宣言は付けられなかった。これから控訴審で東京高裁に行くが、傍聴闘争などご支援をお願いします。機能強化、『新しい成田空港』構想で、成田を大規模な物流拠点として造り変えようと、芝山、多古などで山が削られ造成が進み、ふるさとが破壊されている。許せない。反対同盟は、飛行差し止めを提訴した騒音下住民との信頼関係をつくってきた。住民にとっても市東さんの闘いは希望の星だ。イスラエルによる空爆など、世界では戦争を止められていない。農家は追いつめられ、食料危機が迫っている。成田を軍事空港にさせないために農地を守って闘い続ける」
動労千葉書記長の渡辺剛史さんが連帯のあいさつに立った。「農地は命。命を守るために市東さんは先頭で闘っている。われわれ動労千葉も地方ローカル線を守る」と決意を述べ、3・14―15ストライキの貫徹を報告した。
関西実行委の連帯発言に続き、反対同盟顧問弁護団が登壇し、判決内容を批判した。「かつて空港公団総裁は平行滑走路建設のために『あらゆる意味で強制的手段は用いない』と公約した。ところが農地法裁判一審判決(2013年)で千葉地裁・多見谷寿郎裁判長はそれを、『土地収用法に基づく収用はしない』ことを約束しただけで、民事訴訟での土地取得は別だと言い放ち、NAAを手助けした。今回の齊藤判決でも同じことが書かれた」「市東さんは南台で4661平方メートルの土地の賃借権を有すると判決は認めている。その賃借地の場所をめぐってAかE1かと争ってきたわけだが、契約で場所を特定してないからAを賃借地として認めないという。ならば、賃借地Bを差し引いた残りの2千平方メートルはどこに行ったというのか!」
弁護団は語気を強めて判決の矛盾を突き出し、現地の実力闘争と固く一体で控訴審闘争に臨むことを明らかにした。
大きな拍手に迎えられて市東孝雄さんがあいさつに立った。「裁判所は『事実を出せ』というので、こっちは弁護士さんはじめ支援の方々も、一生懸命調べて出した。しかし24日の判決は、結局裁判上で争点になっていたことはまるっきりない。それで、うちのじいさんの時代に契約がなされてないと決めつけるとか、そういう裁判所の作文でした。農地法裁判の多見谷の判決もひどかったが、今回の齊藤のも『やはりお前もか』というもので、あきれました。私たちは農地は命だと訴え、自分なりに一生懸命やってきた。それをあのような形で否定され、A、B、C、Dという位置関係もどうでもいい、南台41―1はどこを耕しても権利がお前にはないんだと。絶対に許すわけにはいかない。控訴して高裁に行っても、もっとひどい判決が出るかもしれないが、皆さんとのきずなを大事にして、この畑で作ったおいしい安全な野菜をこれからも作り続けます」。市東さんの固い信念と覚悟に、共感の拍手が続いた。
市東さんの農地取り上げに反対する会の発言に続き、婦人行動隊の木内敦子さんがカンパアピールを行った。「この場所は国家権力、資本主義との境界線。農民として生きる市東さんの畑を守るために闘おう!」
全国農民会議共同代表の小川浩さんが発言に立ち、米不足に表された農業の危機の現状を説き、「この資本主義社会を変えなければ農民はもう生きられない。農民も日本革命を担う主体として労働者階級と連帯し、市東さんの農地を守る」と訴えた。
続いて、3・11反原発福島行動実行委の椎名千恵子さん、市東さんの農地を守る沖縄の会の川野純治さんが連帯のあいさつを行った。椎名さんは福島から青年が決起し、ともに沖縄闘争へと参加することを報告した。
全学連委員長の矢嶋尋さんが決意表明に立った。「市東さんは今回の判決を『予想していた』と語ったがこれはあきらめの言葉ではなく、裁判所に幻想を持たず国家権力と非和解で闘う三里塚の闘魂そのものだ。今こそ成田軍事空港阻止を! 仮執行宣言を付けられなかったのは、59年の闘い、19年の裁判闘争、一昨年の強制執行との実力闘争が裁判所を追いつめた結果だ。判決日に飛び入りで駆けつけた学生が今日も参加している。80年代の10・20世代のように、この新歓闘争で三里塚戦士を組織していく。南台農地収用を絶対に阻止しよう!」。この鮮烈なアピールに参加者全員が熱い拍手で応えた。
さらに成田の夜間飛行差し止め裁判を闘う住民が裁判闘争の奮闘と前進を報告し、傍聴を呼びかけた(4月16日(水)民事訴訟、5月30日(金)行政訴訟、いずれも午前11時開廷、千葉地裁)。
最後に事務局の太郎良陽一さんがまとめと行動提起を行った。「強制執行攻撃はいずれ来る。三里塚は実力闘争で世の中を変える闘いだ。この空港を物流拠点にして農業をつぶすことを許さない。空港をつぶして資本主義をつぶす、これがわれわれの生きる道だ。7月農楽祭り、10月全国集会へ向けて、各地で集会、交流会を開き、全国から三里塚への結集を呼びかけよう。強制執行に立ち向かおう!」
「3・24不当判決弾劾!」のシュプレヒコールで集会を締めくくり、直ちにデモに出発した。
先頭に掲げられる新調された反対同盟横断幕には「農地強奪判決弾劾!/南台農地を守ろう!/戦争反対!機能強化粉砕!」と書かれている。宣伝カーには宮本さんが乗り、周辺一帯に反対同盟の怒りのコールを響かせた。
公道に出るとすぐさま機動隊が脇に張り付いて規制に入るが、これを蹴散らす勢いでデモは一個の梯団となって南下した。県道との交差点を渡り、取香橋手前を左折、国道295号線(通称空港通り)を空港中心部に向けて行進した。
第3ターミナルとNAA本社ビルが視界に入ってくると参加者の怒りが一層高まり、NAA社長・田村明比古に届けとばかりにシュプレヒコールを繰り返したたきつけた。「南台農地を守り抜くぞ!」「空港機能強化粉砕、第3滑走路建設阻止!」「成田を侵略の基地にさせないぞ!」
白ヘルメットの全学連の部隊は、整然とした行進の中にも「強制執行攻撃には体を張って迎え撃つ」との気迫をみなぎらせて前進した。
再び取香橋を通り、第3誘導路を突っ切って、天神峰の市東さん宅前の開拓組合道路までのコースを進み、全員が約4キロのデモをやりぬいた。(TN)
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