三里塚 土地明け渡し請求権時効裁判 第1回―市東さんが怒りの意見陳述
千葉地裁民事第5部(鈴木秀隆孝裁判長)で10月1日、土地明け渡し請求権時効裁判の第1回口頭弁論が開かれた。成田空港会社(NAA)は、天神峰の市東孝雄さんに対し南台農地の一部について、NAAに明け渡し請求権があることの確認を求めて裁判を起こしたのだ。2016年の「明け渡し判決確定」から10年、時効成立の直前になってNAAは「このままでは土地がとれなくなってしまう!」とあせりに駆られて、「時効更新」を求めてまたも市東さんを被告席に座らせたのである。
三里塚芝山連合空港反対同盟と支援の労働者・学生・市民は怒りをかきたて、60を超える傍聴席を埋めて共に闘った。
開廷し、証拠提出の手続きなどを行った上、市東さん本人の陳述が行われた。
市東さんはまず、「NAAが5月に、私を被告にして、南台農地のB土地に対する明け渡し請求権の消滅時効の完成を妨害するために、新たに裁判を起こしました」「明け渡し請求権自体が間違っている」と強い怒りをあらわにした。
そして耕作の現況とこれまでの経緯について明らかにした。
市東家は現在の成田市天神峰で祖父・市太郎さんの代から農業を始め、100年になる。孝雄さんは、父・東市さんから農業を継ぎ、「南台農地」「天神峰農地」(どちらも賃借地)を中心に耕作し続けてきた。
NAAは2006年に唐突に、旧地主から底地を買収していた(市東家に無断で!)ことを明らかにし、千葉県知事から農地賃貸借契約解除の許可を取り付けた。そして天神峰農地および南台農地のBについて、明け渡し請求の裁判を提訴した(農地法裁判)。2016年に最高裁の上告棄却で、市東さんに明け渡しを命じる不当判決が確定した。
天神峰農地は23年に強制執行で奪われたが、南台Bでは市東さんは、A・C・D(耕作権裁判で係争中)と一体で今日まで営農を続け、毎年賃借料を供託し続けてきた。
「NAAは約10年間、私に対して明け渡しの催告はおろか、何らの協議の申し入れもなく、完全な沈黙を保ってきました。ところが、明け渡し請求権の消滅時効の完成までわずか6カ月という段階で、時効完成を妨害するためにこの裁判を提起してきました。私を新たな裁判に巻き込もうとしているが、著しく不当であり不公平です」と弾劾した。
そして、B土地に対する明け渡し請求はもともと、「平行滑走路の誘導路が南台農地によってへの字に湾曲していること」の解消を目的とするものであったが、そもそも滑走路の建設許可は湾曲を前提に出されており、しかも11年にはNAAが湾曲改良工事を行っている。その上13年には第3誘導路が造られ、今日においては空港機能強化としてB滑走路を3500メートルに延長し、新C滑走路(3500メートル)を新設するとして拡張工事を始めている。
「こうした拡張計画のもとで、NAAにとって南台農地を取得する必要性はまったくなくなっています」「私の営農権等の基本的人権を犠牲にしても保持すべき高い価値や合理性は認められません」
さらに市東さんは、23年2月に行われた天神峰農地に対する強制執行について強く弾劾した。「NAAは私の作業場・離れ・農業機械置き場、農地を奪いました。それから3年半が経ったが、空港施設ができたわけではない。年3回の草刈りをするだけでまったく使用されていない。怒りがこみ上げてきます」と述べ、鉄板に囲われ、荒れるにまかせた天神峰農地跡地の写真を示した。
「空港施設を造る目的もなく、私に対する営農妨害のためだけで行った強制執行です。南台農地についても、時効延長の目的は、同様の営農妨害の強制執行だとしか言えません」
そして最後に、「本裁判は強制執行の効力を維持するためだけに裁判所を利用し、私をさらに10年間、いつ執行されるか分からないという極めて過酷かつ不安定な地位に拘束し続けるもの。裁判所は慎重に審理をつくし、私の裁判所への強い不信を払拭してもらいたい」と締めくくった。
この怒りに満ちた20分に及ぶ堂々たる陳述に、傍聴席から大きな拍手が湧いた。
続いて反対同盟顧問弁護団が、答弁書の内容を陳述した。「原告の訴えを却下するとの判決を求める」と言い切った上で、「本件土地に対する強制執行権の維持をもくろむ本件請求は訴権の濫用(そけんのらんよう)に当たる」と批判した。そして、「誘導路が南台農地を迂回することでへの字に曲がっていて非効率的な運用を強いられているから、早く明け渡せ」という要求自体が、改良工事などによって今や無意味になっていることを強調した。
また、1993~94年の「空港問題シンポジウム」「円卓会議」で空港公団(NAAの前身)が「用地取得のために、あらゆる意味で強制的手段を用いない」と社会的に確約した事実をあらためて突きつけ、今回の提訴が強制執行権を維持するための公約破り、信義則違反であることを指摘した。
さらに国連の「小農の権利宣言」を引きながら市東さんの営農権を位置づけ、71年強制代執行における小泉よねさんへの暴力と破壊・強奪行為を断罪した。
最後に、現在成田空港が敷地面積の2倍化の拡張、機能強化へと進んでいることを「重大な後発的事情」として示し、明け渡し請求権を認めた確定判決について「もはや被告市東孝雄の基本的人権を犠牲にしても保持するに足りるだけの『高い価値や合理性』は認められない」と結論付けた。
原告席のNAA代理人弁護士、上野至、森本哲也、西岡環の3人は、市東さんの顔を直視できず、終始こわばった表情で視線を手元に落としている。
次回期日を来年2月4日と確認し、この日は閉廷した。千葉県弁護士会館で、反対同盟事務局の伊藤信晴さんが司会を務め、報告集会と記者会見が開かれた。
最初に市東さんが、疲れも見せずに発言に立った。「強制執行された天神峰農地には空港施設も何も作られず、結局私を追い出すことだけが目的の執行だった。これからも体の続く限り、南台農地でみなさんにおいしい安全な野菜をつくり続けるのでよろしくお願いします」
弁護団それぞれが発言し、NAAによる旧地主からの底地買収の違法を含め今回にいたる経緯を解説し、「訴権の濫用」を明確にさせて徹底的に闘う姿勢を示した。また現在、またも土地収用法を用いてNAAが第3=C滑走路予定地住民の土地の強制収用を行おうとしていることを激しく弾劾した。
マスコミ記者からは、弁護団と市東さんに熱心な質問が相次ぎ、NAAの違法で卑劣な手口が一層浮き彫りとなった。また「賛成派住民」としてマスコミが何度も起用する石毛博道、石井新二ら転向者の正体について、伊藤さんが解説した。
動労千葉執行委員の川崎昌浩さんが連帯発言に立ち、「車の両輪」として闘う決意を述べ、11・1全国労働者総決起集会への結集を訴えた。
最後に伊藤さんが、「きょうの市東さんの陳述は三里塚闘争の核心を明らかにした。10・11三里塚全国集会を戦闘的にかちとろう!」と大結集を呼びかけた。(TN)
スケジュール
◎10・11三里塚全国総決起集会 10月11日(日)正午 成田市赤坂公園 主催/三里塚芝山連合空港反対同盟
◎第2の開港粉砕!フィールドワーク 10月14日(水)午前10時 成田市天神峰 市東さん宅前集合 呼びかけ/三里塚芝山連合空港反対同盟




この記事へのコメントはありません。