動労千葉が鉄建公団訴訟の反動判決に新たな怒りの戦闘宣言
動労千葉鉄建公団訴訟において東京地裁民事第11部(白石哲裁判長)は6月29日、動労千葉争議団9人に対する国鉄清算事業団による90年4月1日の解雇は「有効」とする絶対に許せない反動判決を出した。他方で判決は、カクマル松崎明を始めとする改革労協(当時、現JR総連)に突き上げられて、国鉄当局が原告らを採用候補者名簿から排除しJR不採用としたことを明確に不当労働行為と認定し、被告に慰謝料300万円と損害賠償の支払いを命じた。損害賠償額は、JR不採用から3年間を「再就職期間」と言いなし、この期間の、JRに採用された場合と清算事業団時代の賃金の差額を「(国鉄当局による)不法行為と相当因果関係のある損害」と認定した。原告7人に対して、それぞれ約240万円~127万円。
「不当労働行為」を認定したのであれば、当然にも現状回復=解雇撤回されねばならないはずだ。判決は矛盾に満ち満ちた内容だ。
判決後に行われた門前抗議集会での田中康宏委員長の怒りに満ちた新たな戦闘宣言と、判決文骨子を以下、動労千葉のホームページより全文転載します。(O)
●動労千葉鉄建公団訴訟判決直後の田中委員長の発言
今日は結集ありがとうございました。判決を聞いていて、やっぱりこんなひどい判決は絶対に許せないと改めて思いました。
裁判所は、9名の仲間について、採用候補者名簿にいったん搭載したにも係わらず国鉄分割民営化に反対した動労千葉を排除するために急遽外したこと、それは、改革労協つまり動労革マル松崎にそそのかされてやった不当労働行為だったことを認めたんですよ。認めたら不当な解雇は撤回以外にないじゃないか! それをわずかばかりの金銭で終わりにしようというのが今日の判決です。慰謝料300万プラス3年分の賃金の差額。なんで解雇撤回を認めないんだよ! 労働者がこんなにいとも簡単に首が切られていいんですか! 労働者の首切りは、命を取られることに匹敵するんです。何で解雇撤回を認めないんだ。そのことに、判決を聞いていて改めて腹の底からの怒りの思いにかられました。
首を切ったのはやつらなんだよ。裁判所は、それが不当労働行為だったと認めたんだよ。僕らは25年間、苦労惨憺して闘い続けたんですよ。それが、こんなことで「解決」になるんですか。冗談じゃない!
ぼくらは闘い続けます。そのことを今日、もう一回、はっきりさせたいと思います。なぜなら、これは僕らだけの、首をきられた組合員だけの問題じゃないからです。国鉄分割民営化で、労働者の首切りがいとも簡単にやっていいことなんだという風になって、それ以降、どれだけの労働者がひどい目にあったんですか。1500万人の労働者が非正規職に突き落とされて、未来を奪われて、ワーキングプアと言われてすべてをボロボロにされた。国鉄分割民営化は、そういうことだったんです。ぼくらは25年間、絶対にこれだけは譲れないと闘ってきたのは、われわれだけの問題じゃないと思ったからです。労働者の権利がこれほど軽んじられていいんですか。労働者の雇用が、これほど軽んじられていいんですか。首切りは自由なんですか。労働者だって人間なんだよ。首を切られたら、生きていけないんです。こんな社会のあり方が間違っている。
これがすべて、国鉄分割民営化から始まったんです。
裁判所も司法じゃなくて司法権力になった。「権力は腐敗する」って誰かが名言をいっています。こいつらは腐敗の極致だよ。ぼくらはこれからも解雇撤回まで闘い続けます。
だけどもうひとつ、今日、確認したいことがあります。裁判所もよっぽど追いつめられたんでしょう。今日の判決は絶対に許せない不当判決ですが、解雇撤回に向けて裁判所をもう一歩追いつめた。2年前に旗を降ろした人たちがいます。この判決でわれわれは彼らをまた一歩乗り越えました。全国運動を立ち上げて闘い続ける決断をして本当に良かった。
これまでの判決では、停職処分を受けたという基準で採用を拒否された仲間たちは全部負けていました。「基準は合理的だ」とされたんです。ぼくらは何年もかけてそれと徹底的に闘いぬいて、「停職6ヵ月または2回以上」という不採用基準自体が不当労働行為だったと認めさせました。国鉄分割民営化、採用差別は根本的に国家的不当労働行為だったということです。少なくとも新たな一歩を切り開いた。一つ乗り越えたんだから、今度目標ははっきりしてる。解雇撤回です。激しい組合つぶしと不当労働行為、職場を追われた20万の国鉄労働者の悔しさ、自殺に追い込まれた200人の仲間たちの悔しさ、その家族の悔しさ。そのす べてを謝罪させる。裁判所も、運輸機構も、JRもぜんぶここに引きずり出して「申し訳なかった。二度と、こんなことはやらない。労働者の権利を尊重します」と頭を下げさせる。そこまで闘い続けましょう。ありがとうございました。
●判決文骨子
原告らが承継法人の採用候補者名簿の原案にいったん記載されていたところ、設立委員会への名簿提出期限(昭和62年2月7日)が迫った段階(昭和62年1月末ないし2月初め)になって急遽、本件名簿不記載基準が策定されていること、その策定時期が概ね改革労協側の国鉄当局に対する抗議の姿勢が最高潮に達した時期と概ね一致していること、本件名簿不記載基準の具体的な策定時期、国鉄内部での意志形成過程等の主要な策定経緯について、被告が何ら説得力のある主張、立証をしていないこと、国鉄の職制が分割民営化に反対する労働組合を嫌悪し差別する発言をしていたこと等を総合考慮すれば、国鉄当局としては、いったんは原告らを含む動労千葉所属組合員をも基本的には採用候補者名簿に記載する方向で動いていた(少なくとも、これは排除する明確な方針をとっていたものではなかった)にもかかわらず、上記改革労協側の姿勢に触発されるなどして、動労千葉等、分割民営化に反対する労働組合に属する職員を不当に差別する目的、動機の下に、本件名簿不記載基準を策定したと推認するのが相当である。
前記認定事実からすれば、本件名簿不記載基準が策定なければ、原告らは採用候補者名簿に記載され、その結果、JR東日本に採用されたはずであるといいうるから、上記不法行為に基づく損害として、原告らがJRに採用されていたであろうことを前提にした経済的利益(逸失利益)を観念する余地があるということはできる。
しかしながら、……不法行為に基づく損害賠償請求権と、雇用契約関係の存続を前提としたいわゆるバックペイの請求権とは、もとよりその性質が異なるものであり、……上記不法行為の実質は、原告らに対する国鉄によるJR東日本への採用妨害行為というべきものであって、原告らが労働能力自体を喪失したわけではなく、……上記不法行為と相当因果関係のある損害としては、原告らが他に再就職する可能性をも念頭に置いて、一般的、客観的見地から再就職するのに相当と考えられる合理的期間の賃金相当額のみを認めるのが相当であると解される」
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