市東さん農地法裁判控訴審、「控訴棄却」の反動判決を弾劾
6月12日、東京高裁第19民事部(小林昭彦裁判長)は、三里塚芝山連合空港反対同盟・市東孝雄さんの農地法裁判控訴審で、市東さん側の控訴を棄却する反動判決を出した。成田空港会社(NAA)の違法・脱法の数々を一切不問に付して、市東さんに農地の明け渡しを求める極悪の判決だ。
緊急闘争となったこの日、全国から三里塚の勝利を願う170人の労農学人民が万難を排して結集し、霞が関一帯を揺るがす弾劾の声を上げ、市東さんとともに「農地死守」の誓いを新たにした。
東京高裁・小林裁判長は、この日の判決期日指定を、6月5日に反対同盟顧問弁護団に通知してきた。当日までわずか1週間だ! なんという非常識な暴挙か。このような「抜き打ち」通知で、闘いの勢いを削ぎ、平穏のうちに判決を済ませたいという恥知らずな意図が見え透いている。
早朝から支援連・現闘・全学連三里塚現地行動隊は裁判所前に陣取り、小林裁判長弾劾のビラまき、宣伝活動を行った。午前10時30分からはリレートークが行われ、全学連、婦人民主クラブ全国協などが、安倍政権の戦争政策と一体の農地強奪攻撃を弾劾した。
11時30分、日比谷公園霞門は全国から駆けつけた仲間たちであふれた。時おり降りかかる雨をものともせず、集会が始まった。
最初に、北原鉱治事務局長がマイクを握り、「法律を守らねばならない国や裁判所が、3代にわたって耕してきた市東さんの農地を奪おうとしている。こんなことで日本の将来はあるか! 正義はわれわれにある。この闘いは勝てる!」と一同を激励した。
続いて、動労千葉、関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会、全国農民会議が連帯発言を行った。動労千葉の滝口誠さんは、労働者派遣法改悪の国会審議入りを弾劾し、労農連帯で勝利することを訴えた。全国農民会議共同代表の小川浩さんは、産直出荷日を狙った小林裁判長の判決期日指定の暴挙を指摘し、「市東さんの農民としての命と尊厳を奪う反動判決を許さない」と訴えた。そして、6月15日に再開第1回の弁論が千葉地裁で開かれる「耕作権裁判」の重要性を訴えた。
太郎良陽一さんのリードでシュプレヒコールを上げ、「耕す者に権利あり/小林裁判長は農地を奪うな」と大書された横断幕を掲げ、裁判所を包囲する霞が関デモに出発。反対同盟の宣伝カーからは婦人行動隊・宮本麻子さんが、農地強奪に手を貸す東京高裁を弾劾し、闘いの呼びかけを沿道の労働者に向けて熱烈に送った。
この日の法廷は、治安弾圧法廷として悪名高い429号だ。記者席を除けば一般傍聴者の席はわずか二十数席。これまでの100人の傍聴人が入れる102号法廷とまるで様変わりした。廊下にも廷内にも、屈強な裁判所職員があふれかえっている。
北原事務局長、萩原富夫さん、萩原静江さんら反対同盟が傍聴席最前列に陣取った。
市東さんと顧問弁護団が入廷し、左側に着席した。右側のNAAと千葉県代理人の席は空っぽだ。
午後2時30分、小林ら3人の裁判官が現れるやいなや、弁護団全員が立ち上がり、裁判官席に激しく詰め寄った。「裁判官忌避を申し立てており、確定していない。開廷は無効だ!」
職員が割り込んできてもみ合いになった。傍聴席からは「反動判決許さない!」と怒号がたたきつけられ、廷内は騒然となった。市東さんも裁判官席に詰め寄った。
小林はうろたえつつ腰をかがめてマイクに覆いかぶさるようにして、「忌避申立権の濫用と認め却下する」として開廷を宣言し、「本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担」と声を震わせて主文を読み上げた。「なんだと!」「無効だ!」と怒りの声で法廷が満たされた。弁護団の抗議もますます激しくなる中で、裁判長は「閉廷!」と絶叫。それを合図に、廷内の職員が傍聴者を追い出しにかかった。だが席を立つものなどいない。怒りが増幅し、弾劾の声が高まるばかりだ。ついに裁判長は「全員に退廷命令。代理人もだ!」とわめき、弁護団と傍聴者の暴力的排除を命じた。
裁判所正門前で結果を待っていた支援の人びとにも「控訴棄却」の第一報が伝わると、怒りが爆発した。小林の反動判決を弾劾するシュプレヒコールが、裁判所建物に向かって繰り返したたきつけられた。
3時15分に裁判所2階の司法記者クラブ会見室で記者会見が開かれ、マスコミ各社が参加した。葉山岳夫弁護士が「農民殺しの国策判決を満腔の怒りをもって弾劾する」との弁護団の声明を読み上げ、ただちに上告して闘うことを明らかにした。
市東さんは、「不当で不誠実な裁判だ。最初から結論ありきで証人調べ、証拠調べが一切ないまま判決を下した。農民である私への死刑判決だと受けとめている」と述べた。
記者が「仮執行宣言が付かなかったことをどう思うか」と質問すると、市東さんは「付かなかったから“ああよかった”というような気持ちには到底ならない。裁判所が農地取り上げを認めたこと自体を許すことはできない」と怒りの深さをにじませた。
3時50分、弁護士会館2階講堂クレオで、伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。最初に北原事務局長が一日の激闘をねぎらい、三里塚現地での実力攻防の重大性を訴えた。
続いて市東孝雄さんが参加者のひときわ大きな
拍手で迎えられてあいさつに立ち、「あまりにもお粗末」と不当判決を糾弾した。そして「6月15日に弁論が再開する耕作権裁判で絶対に勝利し、今日の判決を最高裁で必ずひっくり返す」と力強く宣言した。
弁護団一人ひとりが次々と発言に立ち、判決全文の内容を批判した。一審判決を基本的になぞり、そのずさんな箇所を補強し、NAAの違法性・不当性を不問に付し、市東さん側の主張をまじめに検討したあとがまったくない代物であることが浮き彫りになった。そして「文書提出問題」で完勝し、市東さん側に有利に進んでいる耕作権裁判の再開を目前に、東京高裁が“国策裁判の見本”を示してプレッシャーをかける狙いが、今回の判決期日指定にあったことを確認した。
動労水戸の木村郁夫書記長、 群馬・市東さんの農地を守る会などの連帯発言を受けて、最後に反対同盟事務局の萩原富夫さんがまとめの発言を行った。「私たちの闘いを恐れ、追いつめられたのは小林裁判長だ!」と判決を断罪し、6・15耕作権裁判闘争への結集を訴えた。さらに、元反対同盟員の石毛博道が第3滑走路の誘致運動でうごめいていることを暴き、「地元では総スカンだ。反対同盟は第3滑走路を粉砕する」と断言した。そして「農地取り上げは憲法違反だ。地元住民の声を無視して新基地建設を進める沖縄と同じだ。反戦・反基地闘争とがっちり連帯して三里塚を闘おう」と熱く激しく訴え、参加者全員が大きな拍手で応えた。
新たな闘いが今日この日から始まったことを参加者一同が実感しながら、団結ガンバロー三唱で集会は締めくくられた。(TN)
■6・15耕作権裁判闘争
・6月15日(月)
・午前9時 千葉市葭川(よしかわ)公園に集合、集会
・9時20分 千葉市内デモ出発
・10時 傍聴券抽選、交付
・10時30分開廷 (弁護団の更新意見、市東さん本人の陳述など)
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