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インドのホンダ子会社で座り込みストライキ

「資本―政府―警察」の暴力的弾圧
20160408a-1.jpg 2月16日、インドのデリー郊外、ラジャスタン州にある本田技研工業100%出資の子会社ホンダ・モーターサイクル・アンド・スクーター・インディア(HMSI)のタプカラ工場で、日勤の労働者2000人が工場内に座り込むストライキを敢行した。発端は、塗装部門で働く契約労働者が残業を拒否し、上司の上級エンジニアから暴行を受けたことにある。この労働者は数日間連続して残業を命じられており、体調がすぐれない状態にあった。これを目撃した同僚の労働者たちは怒り、生産をストップさせ、全員がその場で抗議の座り込みを始めた。

20160408a-2.png 管理職のこうした蛮行は日常茶飯事に行われていたが、日系自動車工場における非人間的で過酷な労働状況に、労働者の我慢は限界に達していたのである。労働者たちは、あくまでも非暴力的な静かな座り込みで団体交渉を求め、要求を実現させようとしていた。
 しかし、なんら交渉も始まらない中で、会社と親密につながっている州警察とヤクザが突然乱入してきて、激烈な暴力的弾圧を行った。労働者は催涙ガスを浴びせられ、棍棒で乱打されて追い回され、60~70人の人たちが重傷を負った。5人のリーダーを含む44人は、暴動、略奪、殺人までもの容疑をデッチあげられ、刑事事件に訴えられ拘留されたが、3月になって釈放されている。
労働組合結成に会社が不当な妨害
 タプカラ工場の労働者たちは、正規・非正規を超えた労働組合の結成を決意し、昨年8月に代表の227名の署名で登録の申請をしたが、会社側はあらゆる手段を用いて妨害を試みた。会社は、組合の委員長を含む活動家の正規職5人を解雇し、4人を停職処分にした。さらに、2月までの6カ月で、組合結成に積極的であった数百の契約労働者を次々と契約解除した。
 会社は生産力を維持するために、労働者に対してさらなる労働強化を強行したのである。16日の抗議行動の背景には、組合結成への妨害、不当解雇、労働強化などに対する労働者の積み重なった憤りと不満、不信感があった。彼らは、暴力をふるった管理職の処分、解雇・停職処分された9人の正規労働者の処分撤回・職場復帰、400人を超える非正規労働者の再雇用を要求として掲げた。
HMSI労働者の過酷な労働状況
 HMSIで働く労働者は、正規職が466人しかおらず、残りの3000人以上は非正規の契約労働者だ。会社側は、「正社員への登用はある」としているが、そのためには会社の意に背かずに少なくとも8年間は働かなければならない。契約社員として雇用されて3年後に昇格テストを受ける資格が得られ、テストと面接の両方に合格したごく少数の者が「カジュアルスタッフ」と呼ばれる契約社員になり、さらに2年間働いて十分な成果が認められたとされる者だけが「訓練生」として3年間の雇用が保障されるが、そのあとにまた6カ月間の試用期間を経てようやく正社員として登用されるシステムだ。今日までに「カジュアルスタッフ」に昇格した者は100名にも満たないが、このシステムで正社員になった労働者は未だに一人もいない。また、契約労働者の賃金は正規労働者の50~60%に抑えられている。
モディ政権の経済改革と労働法制改悪
 2014年5月に発足したモディ政権は、経営団体や外資系企業から求められていた労働法制の改革を政策の一つに掲げ、企業が雇用調整を容易にする解雇規制や人材派遣の緩和などの労働法改正案を議会に提出した。外資系企業が積極的に誘致され、日系企業も多く進出しているラジャスタン州では、すでに州政府議会で法案が可決されており、企業はさらに横暴な経営を可能とした。
 また、「モディノミクス」と呼ばれる経済改革で規制緩和やインフラ整備を進めて外資をより導入しやすくし、2014年9月に来日した際にモディ首相は、「インドは低コストで質の高い労働力がある」と企業誘致を呼びかけている。「メーク・イン・インディア(インドでものづくりを)」というモディの掲げるスローガンで、「デリー・ムンバイ産業大動脈」が築かれた。
弾圧に屈せず広がる労働者の闘い
 この工業地帯には、同じように過酷な労働状況で働いている工場労働者が山ほどいる。タプカラ工場での労働者の座り込みストライキに対する暴力的な攻撃は、労働者の組合結成や団体交渉の合法的権利、正規職化を求める権利、労働の尊厳を求める権利などを要求することに対しては徹底して弾圧するという、資本・政府・警察の一体となった「見せしめ行為」であった。デリー・ムンバイ産業大動脈に、労働者が正当な権利を主張する闘いが広がることを恐れているのだ。
 しかし、タプカラ工場のストライキ弾圧の起きた3日後の2月19日、HMSIの労働者と、支援に駆けつけたマルチ・スズキやダイキンなど数多くの工場からの労働者たちが加わった3000人が、グルガオンのタウ・デビラル・スタジアムで抗議集会を開き、インドのホンダ本部まで8キロの道のりをデモ行進した。
今、世界中で労働者階級が決起している。権力と資本家たちの卑劣で横暴な攻撃に屈することなく、労働者の権利を奪い返す闘いは燎原の火のごとく広がっている。
 
≪写真1≫ 「暴力をふるった管理職を処分しろ!」工場内に座り込んだ2000人の労働者たち(2月16日、インドのホンダ工場)
≪写真2≫ 「国家のテロを倒せ!」「労働者の俺たちも今や非国民か?」と叫んでデモする労働者たち(2月19日、ホンダ本部へのデモ行進)

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