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三里塚一坪共有地裁判、NAAと千葉県の証人を尋問

20160502a-1.JPG 4月28日、千葉地裁民事第5部(鹿子木康裁判長)で、一坪共有地裁判の証人調べが行われた。この裁判は、三里塚芝山連合空港反対同盟の鈴木幸司さん(故人)、いとさん夫妻が共有権を持つ駒井野の一坪共有地について、2006年に千葉県が明け渡しを求めて起こした訴訟だ。
 県は成田空港A滑走路の北側に隣接するこの場所に「成田国際物流複合基地」を造るから一坪共有地を明け渡せと言うわけだが、提訴から10年も経過し、すでに大赤字で破綻し中断されている事業だ。それをあくまで「必要だ」「公共性がある」と強弁するために、成田空港会社(NAA)と千葉県の「敵性証人」が今回の法廷に現れたのである。

 午後1時30分開廷。一人目の証人は、NAA経営計画部空港計画室長の佐久間潔。
 佐久間は原告・千葉県の代理人の質問に答え、「成田空港を首都圏の貨物輸送の拠点として充実させる。貨物の取扱量増大を予想し、施設を拡充していく」などとし、一坪共有地については「当該用地の取得は不可欠。早期に造成していただき整備したい」と願望を述べた。
 反対同盟顧問弁護団が反対尋問に立った。この事業にとって不可分である、土地の買収や登記への関与について訪ねると、「それは県の仕事」「知らない」「聞いていない」と白々しく無関係を装った。当初の計画予定地の北側部分は用地の取得失敗から断念したことを認め、南側地区だけで進めると言う。では具体的にどうするのかというと、「貨物ターミナルを造る」「貨物専用コンテナや特殊車両の置き場にする」という大雑把な見通しを語るのみ。そもそも「貨物需要増を見越して処理能力を強化」などと言うが、そんなおめでたい見通しはどこから出てくるのか。佐久間は、「長期的には東アジアの需要が増大する」「国の経済予測に基づいている」「中国のGDPが伸びる」などと、根拠のない願望を並べたてた。「1期工事の土地の譲渡金額はいくらか」の問いに、佐久間は「企業秘密」をたてに逃げようとしたが、「証言を拒否するのか」との激しい追及に追いつめられ、「70億円」という金額を明らかにした。
 そして「成田・羽田の首都圏空港の処理能力は、現状では2020年にパンクするので、成田は第3滑走路の新設、B滑走路の延伸で機能強化を図る」と第3滑走路にまで言及した。すかさず弁護団が「第3滑走路計画には地元住民からの強い反対の声があることを知っているか」と尋ねると、「直接聞いたことがない」「自治体の首長で話し合っている」などと、あからさまに住民無視の姿勢を表した。傍聴席からは一斉に怒りの声が上がった。
 続いて二人目の証人は、千葉県企業庁地域整備部土地施設管理課長(3月まで)の原正則。
 原は「物流基地建設」が計画当初の71・3ヘクタールが結局は半分以下の28・5ヘクタールにまで変更・縮小されたこと、完成のめども立たず北側地区を中止したこと、企業庁自体が廃止されたことを認めながら、「企業庁の後継組織が赤字で破産することはない」と強がった。そして「航空国際物流の向上には高い公共性がある」「一日も早く土地を取得して盛土して平らにならしたい」などと訴えた。
 弁護団の質問に対し原は、成田空港の貨物取扱量が年間200万トン前後で頭打ちになっている事実を認めながら、「国の予想通り航空貨物需要は増え続ける。中国経済の減速も一時的なものだ」などと根拠もなく言い張った。そして鈴木家が一坪共有地強奪に強く反対してきたことに対し、全面的価格賠償方式、すなわち「金を出して分捕る」という強権的手段を用いることについて当然であると居直った。しかもその金額が、土地の鑑定評価の十分の一という安値であることについて「適正な額だ」とぬけぬけと主張した。
 結局2人の証人尋問を通して明らかになったことは、県は一坪共有地を奪ってこの予定地を造成してNAAに売り飛ばすことに執心しているが、貨物量増大の見通しに何の客観的裏づけもなく、物流基地を造ると言いながら計画に具体性も公共性もない。これはまるで地上げ屋だ。
 午後5時を大幅に過ぎて閉廷。今後の進行は証人の事情などを確認して決めることとなった。
 千葉県弁護士会館で伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。葉山岳夫弁護士を始め弁護団全員が発言し、敵性証人を徹底追及した手応えを語り、さらに市東孝雄さんの農地法裁判・耕作権裁判を始め全裁判に勝利する決意を表した。
 最後に、5月18日(水)に最高裁に対し署名提出行動を行うことを全体で確認し、報告集会を締めくくった。(TN)

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