動労総連合出向無効確認訴訟 JRの主張を全面批判
動労総連合強制出向無効確認訴訟の第15回口頭弁論が、4月27日、東京地裁民事第11部(佐々木宗啓裁判長)で開かれた。これは、検修・構内業務の外注化により外注先への出向を強いられた動労千葉、動労水戸、動労連帯高崎の組合員が、JR東日本に対し出向命令の取り消しを求めて闘っている裁判だ。
法廷で原告代理人の弁護士は、被告・JRの言い分を全面批判する形で、原告側の主張の要旨を陳述した。原告代理人はまず、外注化が労働者と乗客の安全を脅かしていることを徹底的に弾劾した。許しがたいことにJRは、この裁判で「事故は外注化によるものではなく、個人的な過誤によるもの」と言い張って労働者に責任を押し付けている。しかし、JR自身が15年10月に出した「グループ経営構想Ⅴ『今後の重点取組み事項』の更新等について」と題する文書は、同年4月の山手線電化柱倒壊事故以降、輸送障害が続発しており、その原因は「水平分業の深度化」にあると書いている。「水平分業の深度化」とはまさに外注化のことだ。JR自身が事故多発の原因は外注化だと認めているのだ。このことを指摘して、原告代理人は「外注化は直ちに撤回されるべきであり、外注化が前提の出向も無効を宣告されるべきだ」と声を強めた。
前回裁判でJRは、「就業規則に規定されれば、出向を命じることも出向の延長を命じることも使用者に広範な裁量権がある」と言い始めた。原告代理人はこの言い分を徹底的に批判した。民法第625条でさえ、「使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない」と定めている。労働者に別の資本のもとで働くことを命じる出向は、「(使用者の権利の)第三者への譲渡」に該当する。労働者一人ひとりの同意がなければ、出向させることはできないのだ。にもかかわらず、JRは就業規則に「出向を命じることがある」と書き込んであれば、使用者は広範な出向命令権を持つことになると言い張っている。だが、資本が一方的に作成する就業規則にそんな効力があるはずがない。原告代理人は、こうしたJRの主張の背後に、就業規則の改定による労働条件の不利益変更も「合理性」があれば可能とした労働契約法があることを指摘して、こうした労働契約法の規定に対し「契約法理の死」という労働法学会の批判があることに言及した。
原告代理人はさらに、外注化が偽装請負にほかならないことを追及した。鉄道の業務は、一体性・系統性がなければ成り立たない。例えば構内運転業務は信号や合図に従って行わなければならない。信号を出すのはJRだが、構内運転業務は外注化されている。ならば、これは偽装請負として禁止されている、外注先の労働者に対する発注元による作業指示そのものだ。このまっとうな指摘に対し、JRは「列車の運行が乱れた場合、あらかじめ発注したとおり作業できないことがあるから、信号は直接の指示に当たらない」などという的外れの主張を対置してきた。だが、偽装請負は列車の運行が乱れた時だけでなく、正常に運行されている時も常に発生しているのだ。
原告代理人は「安全を破壊する外注化と出向は解除されるべきだ。原告を直ちにJRに戻すべきだ」と陳述をまとめた。
原告側の的確な主張にいたたまれなくなったJR側代理人は、「出向命令は就業規則に基づくものということが被告の主張の要点だ」と言い張った。その上で、「原告は就業規則の不利益変更だと主張するが、JRは87年発足の時から、就業規則に出向を規定しているから不利益変更はない」とまくし立てた。さらに、外注化による安全破壊を完全に居直って、「外注化施策の当否は法的に論じられるものではない。それは出向命令の当否を左右するものではない。安全性については必要な対策をとっている」と言い放った。「出向命令は原告に特段の不利益を与えていない。出向命令の効力が否定される余地はない」というJRの傲慢(ごうまん)な言い分に、傍聴席から怒りの声がわきあがった。裁判長が静止するが、憤激は抑えられない。
裁判長が「次は証人申請の段階に入る」と述べた上で、「事実の問題はほぼ出ていて、あとは評価の問題」と口走った。原告側申請の証人を徹底的に切り捨てようとする姿勢の現われだ。
原告代理人は、証人尋問に際しては大法廷を使うように要求した。この日の裁判は、証人申請をめぐる進行協議の期日を設定して終了した。裁判はいよいよ証人尋問の重大な局面を迎える。
裁判後の総括集会で、動労千葉顧問弁護団の鈴木達夫弁護士は、「この裁判でも就業規則の問題が最大の争点になった。資本が一方的に制定する就業規則は、新自由主義が破綻する中で資本にとっての最大の武器になっている。その背後には、労働基本権を解体し、民法の1対1の契約に引きずり込もうとする労働契約法がある。これは労働法制における改憲攻撃だ。この中で動労千葉がCTS(千葉鉄道サービス)の就業規則改悪を打ち破ったことには大きな意味がある。就業規則という根本問題が争われるこの裁判はいよいよ重大だ」と提起した。併せて7月参院選に、「労働者の新しい政党をつくり出そう」を最大のスローガンに打って出る決意を表明した。
動労連帯高崎の漆原芳郎副委員長は、翌28日にストライキを決行すると宣言した上で、籠原駅漏電炎上事故を徹底的に弾劾した。
動労水戸の石井真一委員長は、証人尋問で外注化がもたらした職場の実態を徹底的に突きつけると決意を述べ、また常磐線全線開通阻止の本格的決戦に入ると表明した。
動労千葉の田中康宏委員長は、「韓国やフランスで労働法制改悪に対してゼネストが闘われている。安倍の攻撃の一つの柱は戦争と改憲、もう一つの柱は労働法制の根本的解体だ。この二つで戦後レジームを覆すというのが安倍のやろうとしていることだ。労働法制の歴史的転換は、具体的には外注化・非正規職化として貫かれる。CTSの就業規則改悪は、正社員をゼロにするということだ。これを許したら、全社会に正社員ゼロ化の攻撃が吹き荒れる。だから絶対に粉砕する」と提起した。また前日に行われた国鉄闘争全国運動の呼びかけ人会議について報告し、呼びかけ人の各氏から「労働法制の抜本的転換に対して反撃できる位置にあるのが国鉄闘争だ」「労働基本権と職場での現実の闘いを真正面から対置することが必要だ」などの意見が出されたことを紹介し、「6・5国鉄集会の性格は明確になった。6・5大結集の実現を」と呼びかけた。
(東京 K)
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