三里塚・市東さん農地、千葉地裁審尋で強制執行停止かちとる
2月14日、天神峰・市東孝雄さんの農地を守る闘いの中、千葉地裁民事第5部で強制執行停止申立の審尋が開かれた。その結果、三里塚芝山連合空港反対同盟、顧問弁護団、支援者の一丸となった決起によって、当面の強制執行停止をかちとった。
午前9時、反対同盟の主催で労働者・農民・学生・市民70人が結集し、千葉市繁華街の中心に位置する葭川(よしかわ)公園で集会が開かれた。
司会の太郎良陽一さんが、この日第3滑走路裁判弁論に続き、強制執行停止申立の審尋が開かれることを説明し、一同の奮起を促した。
反対同盟事務局を代表して、萩原富夫さんがマイクを握り、「成田空港を造るために強制的に農地を取り上げるという国のやり方を許さず、安倍政権の戦争政策に反対して闘おう」と千葉市民に呼びかけた。
続いて動労千葉の田中康宏委員長、全学連の斎藤郁真委員長、全国農民会議岡山支部の内藤大一さんなどが連帯発言に立ち、意気高くシュプレヒコールを上げて千葉市内デモに出発した。
「千葉地裁は農地強奪の強制執行やめろ」のコールを響かせ、市東さんを最先頭にデモ隊は千葉地裁に迫り、三里塚51年の正義を力強く体現してこの日の流れを決した。
午前10時30分、千葉地裁民事第3部(坂本勝裁判長)で第3誘導路裁判が開廷した。
弁護団は、第3誘導路建設と成田空港そのものの違法・違憲性、反公共性を解き明かす、憲法学者の内藤光博教授(専修大学)、経済学者の鎌倉孝夫教授(埼玉大学名誉教授)、二人の意見書を提出した。さらに、被告である国と空港会社(NAA)によるこの間の暴論・暴言を取り上げ、徹底的に追及した。「騒音の発生源である空港敷地に住む市東には、騒音から守られる法律はない」。この言い草は、祖父の代から100年、この地で農業を続けてきた市東さんの人権を踏みにじる、まさに強盗の居直りだ!
また国・NAAは昨年、空港建設が遅れに遅れた結果、土地収用法に基づく事業認定が失効した事実について「不知」(=知らない)と答えていた。歴史的事実を認めないのか! 坂本裁判長は「被告は”その点ではことさら争わない”と言ってるからもういいでしょう」などと繰り返して被告をかばい立てした。傍聴席からは怒りの声が次々と飛び、廷内は騒然となった。
弁護団は今後も容赦なく追及する意志を突きつけ、次回期日を5月16日と確認して閉廷した。
いよいよ審尋だ。一同は千葉地裁正門前に陣取り、シュプレヒコールで市東さんと弁護団を送り出した。
11時50分、審尋の場に現れたのは、昨年まで東京高裁判事、今年になって千葉地裁民事第2部に就いた高瀬順久裁判長。
葉山武夫弁護士を先頭に顧問弁護団は、昨年10月の上告棄却によって確定された農地法裁判判決(市東さんに天神峰と南台の農地明け渡しを命じる)は、重大な違憲・違法を含んでおり、強制執行を停止すべきことを主張した。さらに、当事者である市東さんと参考人として臨んだ萩原富夫さんが、農民の命を奪う農地取り上げに絶対反対の意見を述べた。
NAAの代理人弁護士は、「部分執行もありうる」などとうそぶきながら、執行されないことで生じる損害について問われると「空港の整備が遅れて……」などとあいまいな返答しかできない。
12時30分頃審尋は終了し、千葉県弁護士会館で報告集会が開かれた。
高瀬裁判長が、「保証金200万円を1週間以内に千葉地裁に納付することを条件に、執行停止を出す」旨を連絡してきたのは、報告集会の最中であった。直接電話でやりとりした葉山弁護士がその報を伝えると、拍手が起きた。
だがまったく油断はできない。高瀬裁判長が安倍政権によって送り込まれてきたことは明白だ。
市東さんが不屈に闘う決意を表明し、これに応えて弁護団一人ひとりが全力で闘い勝利する意気込みを述べた。
当面する攻防の焦点は、強制執行の取り消しを求める3月2日の請求異議の裁判だ。同じ千葉地裁民事第5部(高瀬裁判長)で口頭弁論が開かれる。この裁判の判決が出るまで、執行停止が効力を持つことになる。
集会の最後に司会の伊藤信晴さんが直ちに200万円のカンパを募り、3・2弁論当日は千葉市中央公園に結集し再び地裁に迫る市内デモに打って出ることを提起し、全員が熱い拍手で応えた。(TN)
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