三里塚一坪裁判で清水教授が証言、「県の取得は無効」
9月3日、千葉地裁民事第5部(鹿子木康裁判長)で一坪共有地裁判が開かれた。この訴訟は三里塚芝山連合空港反対同盟の鈴木幸司さん(故人)、いとさん夫妻が共有権を持つ駒井野の一坪共有地について、2006年に千葉県が、明け渡しを求めて起こしたものだ。
今回から証人調べに入り、最初の証人として福井県立大学の清水和邦名誉教授が証言台に立った。清水証人は、一坪共有地が「三里塚地区周辺に土地を持つ会」の組合所有(合有)であり、共有者個人からの買収は無効・違法であることを全面的に明らかにした。
「新東京国際空港」が当初、三里塚に隣接する富里地区に計画された時、「富里地区に土地を持つ会」がつくられた。証人はこれを詳細に研究する中で、富里の空港反対運動を継承して発展した三里塚の一坪共有地運動の性格を浮き彫りにした。
「三里塚地区周辺に土地を持つ会」は営利のための土地の共有者集団ではなく、空港反対という事業目的を持った組合として成立している。農地、原野、山林などさまざまな形状の土地の提供を受け、共有者を募った(最終的に55筆、二千数百人に)。そして空港廃港の悲願達成のあかつきには、土地は元の地主に返されるとした。この一坪共有地運動は、1971年の強制代執行との闘いで大いにその意義を発揮した。
その後、空港反対運動をめぐる状況は時の流れとともに変化したが、会の存在とその目的は変わっていない。
だから原告・千葉県がその土地を取得したいというなら、登記名義をあてにして買いあさり登記移転するのではなく、会の担当者に話をつけるのが筋である。名義人からいくら買い集めても、原告の取得は無効である。
さらに清水証人は、本件で原告・千葉県が「全面的価格賠償方式」(強制的に金銭補償で土地を取るやり方)を求めていることを批判した。①賠償価格算定のでたらめ(二重価格)、②原告が公共団体であること、③土地の取得が結局空港会社(NAA)への転売を目的としていること、という三つの重大な問題点を指摘し、「全面的価格賠償方式という例外的方法を用いることは不適切」と結論付けた。
そして、土地を持つ会が会則13条を改正し、「会員が死亡または脱退したときは、その共有地の持ち分は空港反対の意思を持つ者を会が指定して取得させる」としたことについて、組合を守るための当然の防御策と確認し、「会は今日まで地道な活動を続けている」と評価し、証言を締めくくった。
清水証言の内容に完全に圧倒された原告・千葉県は、反対尋問を一切放棄した。次回10月29日の法廷では、会の会則作成、成立の経過などについて小長井良浩弁護士が証言する。
裁判所近くの会場で、伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。2時間近くの証言をやりきった清水さんは、晴れ晴れとした笑顔であいさつし、「半世紀続いてきた闘いを初志貫徹でやりぬいてほしい」と一同を激励した。葉山岳夫弁護士を始め反対同盟顧問弁護団全員が、清水証言の豊かで説得力にあふれたな内容を振り返り、市東孝雄さんの農地裁判と一体で三里塚裁判すべてに勝利する決意を表した。
集会後、反対同盟と支援連は千葉市繁華街に繰り出し、最高裁へ向けた農地強奪を許さぬ緊急5万人署名を集めた。「戦争法廃案、安倍打倒!」「10・11三里塚全国総決起集会に結集を!」の熱烈な訴えに労働者人民が足を止め、署名に応じた。(TN)
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