全米自動車労組がスト 現場の力でGM資本に迫る
労働者の分断に絶対反対の闘い
9月15日、全米自動車労組(UAW)の4万8千人の組合員が、ゼネラルモーターズ(GM)の全米約50の自動車組立工場・部品工場でストライキに突入した。GMがモデル協約を獲得し、巨大部品子会社やフォード、フィアット・クライスラーの協約闘争をリードするということだ。カナダ、メキシコなどの工場の稼働にも直ちに影響を及ぼした。80年代以来加速した生産拠点の国外移転・サプライチェーンのグローバル化によって、工場相互の依存度が高まったからだ。この全米ストは、GM資本に1日当たり1億㌦の損害を与えていると見積もられている。
UAW本部が掲げているのは形だけの賃上げ要求だが、現場では「二層制度反対」「すべての労働者を第一層へ」が前面に掲げられている。「同じ職場に時給が半分の労働者がいる。私たちを敵だと思っている人もいる。こんな職場で働きたくない」などの声が上がっている。賃上げ要求も、積年の怒りの爆発だ。
9月17日、GMは健康保険の支払いを停止して恫喝したが現場労働者の団結は固く、スト体制はびくともしなかった。27日、健康保険支払いを再開せざるをえなくなった。
全産業・全地域にストの影響拡大
10月14日にGMのバーラCEO(最高経営責任者)までもが乗り出して労資交渉を行ったが妥結の見通しさえ立たなかった。だが16日、GMとUAW本部との協議で急きょ暫定協約案が締結された。GM労働者の長期ストが他の闘いと合流することを恐れたからだ。
すでにGMストは、ボルボなどの他の自動車会社のストに連動し、部品から鉄鋼・ガラス・ゴムなどの関連産業にも巨大な影響を及ぼしている。通信労組、航空労組、食品労組なども決起している。
シカゴ教職員組合(CTU)が16日の代議員大会決議を経て17日からストに突入した。教組のストでも自動車ストと同じく地域社会全体が動いている。昨年のウェストバージニア州などの州丸ごと学校スト、今年1月のロサンゼルス教組のストに続くシカゴでのストは、重大事態である。
16日のGMとの暫定協約案では、パートタイム・臨時工のフルタイムへの移行に要する期間の若干の短縮が認められた。だが、非正規職化と労働者分断の大きな流れはそのままだ。賃上げ幅は、インフレ率をわずかに上回るにすぎず、倒産攻撃による生活破壊をほとんど回復しない。そしてこの協約案で、組立工場1つとトランスミッション工場2つの閉鎖が取り決められている。
組合員投票で協約案が批准されるまではストは続行される。ランク&ファイル(現場労働者)の活動家たちは、「ノーの票を入れよう」と呼び掛けている。
職場の労働者が主体的に決起
8月中旬から下旬にかけて、FBI(連邦捜査局)は、UAW本部とUAW幹部宅に一斉に家宅捜索に入った。副委員長や地域本部長など多くの幹部が収賄・横領などで起訴された。スト権投票が行われるこの時期を狙い、国家権力はUAW本部の腐敗を利用して労組破壊をしようとしたのだ。具体的には、労組本部を後見人制度の下に置くということだ。そうすればストを禁止できる。
だが、ランク&ファイル運動は圧倒的な職場組織化で反撃した。全米の職場で営々と築き上げられた組織網が直ちに「スト・イエス票を入れよう」運動を展開し、スト賛成票がどの工場でも94~99%に達した。
2007~08年の大恐慌爆発でGM資本も窮地に立った。当時のオバマ政権はGMに倒産法第11章申請を行わせ、これまでの労働協約を無効化し、医療・年金などの労働者の権利を奪い、多くの工場を閉鎖して労働者を大量解雇した。
そして、大量のGM株式をUAW本部に与えた。UAW本部は大株主となり、名実ともに労資一体となった。それと引き換えに結ばれた「画期的な労働協約」で、労働者の二層化が決定された。新規採用の労働者は第二層とされ、従来からの労働者である第一層の半分の賃金となる。雇用保障、医療、年休などのさまざまな権利も第一層とは異なる。UAW本部は「組合員の賃金は守られた」と言ったが、ランク&ファイル運動は「実際には、既存の労働者もこれで攻撃される。資本は、賃金が高い第一層を減らし、第二層で置き換えるようになる」と大反対運動を繰り広げた。
09年には本部に押し切られたが、14年のUAW大会の時には、巨大な職場反対派勢力として登場した。各工場で二層制協約反対投票を組織した。小さなグループの集まりを数多く開き、多くの意見を出させる運動だ。職場丸ごとの労働者が、受け身ではなく主体として参加する労働運動がつくられていった。
職場組織化が労組・国境を越えた巨大な団結をつくっている。
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