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三里塚新やぐら裁判―内田裁判長の結審強行を弾劾

新やぐら裁判で内田裁判長の不当な退廷命令を受けて構外まで強制排除された太郎良陽一さん。千葉地裁前で職員らとにらみ合う(7月16日)

7月16日、千葉地裁民事第2部で新やぐら裁判が開かれた。この裁判は、三里塚芝山連合空港反対同盟・市東孝雄さんの天神峰農地に建つやぐら、看板など四つの物件について、成田空港会社(NAA)が「収去と土地の明け渡し」を求め提訴したものだ。
内田博久裁判長は、用地買収の当事者だった空港公団(現NAA)職員など敵性証人については必要ないと却下し、3月18日をもって結審しようとたくらんでいた。
だが、新型コロナウイルスの感染拡大によって裁判期日は延期され、内田は4月1日付で東京高裁第1民事部に異動した。ところが、東京高裁は内田を千葉地裁の裁判官とする職務代行を発令した。異動した裁判官が結審のためだけに舞い戻ってくるなど、前代未聞だ。絶対に認められない。
開廷予定時刻30分前の午後1時、弁護団は裁判官忌避を申し立てた。民事第5部に係属し訴訟手続きが停止した。ところが千葉地裁は、係属を民事2部に変え、内田は書記官を通じて「2時半までに出廷しなければ、手続きをすすめる」と最後通牒を発したのだ。
一方、わずか20席という傍聴券の抽選を終え法廷に入った傍聴者は、すでに席についていた内田を弾劾した。「過去最大の感染者数だ。なぜ法廷を開くのか!」「忌避中だ。帰れ!」
被告席に座る萩原富夫さんが、30分経っても何も語らない内田に「この状況はなんだ。説明しろ」と詰め寄ると、「開廷前です。弁護団が来ないから開けない」とつぶやき再び口を閉ざした。

◎弁護団が陳述「権利濫用許さぬ」
午後2時27分、顧問弁護団が法廷に乗り込んだ。葉山岳夫事務局長が弾劾の口火を切った。
内田は、忌避の申し立てについて、「訴訟遅延の目的」と決めつけ「簡易却下」。すかさず、弁護団から「簡易却下なんて言葉は法律にはない」と追及の声が飛ぶ。「これまで一度も忌避したことがないのに濫用で却下などと言えるのか!」「根拠を示せ!」

内田博久裁判官。2020年4月に千葉地裁民事第2部から東京高裁第1民事部に異動。ところが東京高裁は内田を「職務代行者」として新やぐら裁判の結審強行・反動判決のためだけに千葉地裁に舞い戻らせた。前代未聞だ!

正論を叩きつけられ、内田はぐうの音も出ない。弁護団は忌避の却下について即時抗告した。
コロナ感染症拡大情勢下で開廷したことについて内田は、「ソーシャルディスタンスをとって社会活動を進めるという社会状況から判断した」と述べたが、デタラメだ。「最高裁が県をまたぐ裁判はやめるように指示を出したが、いつ取り消されたのか」との問いに、内田は「それは最高裁に聞いてください」と無責任極まる返答。
忌避の手続きについても「第5部から第2部に配転したというが、誰の判断なのか。犯罪行為に等しい」と弁護団から弾劾が叩きつけられた。
3時過ぎ、デタラメな内田の態度を前に、弁護団の要求で一時休廷。
3時15分。再び法廷に戻った弁護団は、準備書面を陳述した。さらに主張の追加と証人申請を行うので次の期日を指定するよう迫った上で、準備書面18、19を陳述した。
準備書面19は6部構成。
①そもそもヤグラ、看板の建つ土地の所有権をNAAは取得していない。
②農地法20条にもとづく解約許可処分は無効だ。
③反対同盟は市東さんから土地を借りて看板、やぐらを建てる権利を持っている。
④空港会社の看板撤去の要求は権利濫用だ。
⑤B滑走路閉鎖にみられる新たな抗弁事由にかかわる新主張について。
⑥強制執行は許されない。
410ページもの弁護団の準備書面に対してNAAの準備書面14はわずか9行! 公正公平な審理を行うという立場に立てばどちらに理があるのかは一目瞭然だ。
ところが、内田は時計だけを気にしている。

◎太郎良さんら3人に退廷命令
弁護団全員が、B滑走路の閉鎖という重大な事実について専門家の意見書準備の時間と新たな主張・立証の機会が保障されるべきと強調した。「次回を決めろ」と傍聴席からも声が上がる。
ところが、内田は「双方の意見はうかがいました。これ以上意見を聞いても……」と弁論を打ち切ろうとしてきた。すかさず弁護団は、裁判官忌避を再度申し立てた。傍聴席も立ち上がって裁判長を弾劾。あせった法廷警備員が内田に退廷命令をうながす。内田はうろたえつつも退廷を命じ、太郎良陽一決戦本部長ら3人を裁判所の外に強制的に排除した。その間、内田は何かつぶやくが聞こえない。
法廷指揮に異議があるとの弁護団の追及に内田は、「弁論は終結と言ったので、調書にはとらない」と言い放った。さらなる怒号の嵐が続く。午後4時50分頃、内田は「弁論終結です。退出してください」と言い残し法廷から逃げ去った。

閉廷後の報告集会で反対同盟顧問弁護団事務局長・葉山兵夫弁護士が、内田裁判長のデタラメな結審強行を弾劾。さらに弁護団全員が決意を表した(7月16日 千葉市)

「9・2請求異議控訴審へ」
その後、裁判所近くの会場で太郎良決戦部長の司会で報告会が行われた。弁護団全員が発言に立ち、反対同盟、弁護団、傍聴者が一体となって裁判所を圧倒したと勝利感をもって確認した。さらに、弁護団も市東さんの農地を守る闘いに共に立ち上がると誓った。
動労千葉の中村仁さん、関西実行委員会、市東さんの農地取り上げに反対する会の連帯発言のあとに、北関東から傍聴に駆けつけた仲間が「忌避された裁判官が自分で却下することができるとは驚いた。そんな裁判官が退廷を命令できる立場なのか」と感想を述べた。
最後に、事務局の萩原富夫さんが「弁護団とみなさんのおかげでここまで力強く闘うことができている。普通なら倒産しているようなNAAによる機能強化は許せない」と述べ、9月2日、東京高裁での請求異議裁判控訴審、9月14日、千葉地裁での耕作権裁判、9月27日、成田市赤坂公園で行われる全国集会への結集を呼びかけ、一日の行動を締めくくった。
翌17日、内田は新やぐら裁判の判決日を8月24日午後2時と弁護団にファックスで通告してきた。千葉地裁を怒りで包囲し、反動判決を阻止しよう。(N)

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