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三里塚請求異議控訴審で最終弁論―「強制執行は許されない」

請求異議控訴審開廷を前に、日比谷公園霞門から反対同盟を先頭に霞が関デモに出発。「農地強奪許さない」の声が首都中枢にとどろいた(10月22日)

10月22日、東京高裁第4民事部(菅野雅之裁判長)で、天神峰・市東孝雄さんの第4回請求異議控訴審が開かれた。三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、支援の労働者・農民・学生・市民170人は、土地強奪の強制執行を絶対に許さぬ決意で一つに結束し、全力で闘い抜いた。今回をもって結審し、裁判長はわずか2か月足らず後の12月17日を判決日と指定した。

霞が関デモ・要望書提出
日比谷公園霞門、全国の仲間たちが旗・のぼりなどを携えて続々と参加者が集う。張り詰めた空気の中で午前11時30分、決戦本部長・太郎良陽一さんの司会で集会が始まった。
最初に東峰の萩原富夫さんがマイクを握り、「今や成田空港は必要なくなった。農地に戻せ!」と断じ、官公庁や裁判所の労働者に向けて、空港の反人民性と農地を守る闘いの正義を熱烈に訴えた。

反対同盟は、全国から寄せられた「農地奪うな」の要望書653筆の合冊を携え東京高裁への提出へと向かう(10月22日 裁判所正門前)

動労千葉の中村仁書記次長、関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会の連帯発言を受け、意気高くシュプレヒコールを上げ、反対同盟を先頭にデモに出発した。快晴のもと、宣伝カーからは婦人行動隊・宮本麻子さんが、「空港絶対反対・農地死守」のアピールを一帯に響かせ、デモ隊は堂々と首都中枢を行進して裁判所前まで迫り、半世紀を優に超す三里塚闘争の存在感を示した。
デモ後ただちに裁判所前に移動。反対同盟は、この間全国から寄せられた「農地奪うな」の要望書653筆の合冊を携え正門前に並んだ上、大きな拍手に送られて裁判所内へ向かった。16階の高裁第4民事部書記官室を訪れ、萩原さんが読み上げた上で要望書を提出した。

市東さん意見陳述
午後2時に102号法廷で開廷。今回も「コロナ」を理由に一般傍聴は座席数の3分の1以下、30人程度しか許されない。
最初に、市東さん本人が意見陳述を行った。最初に「なぜ私が農地を明け渡せなどという裁判に訴えられたのか、今もわからない」と怒りをにじませ、祖父の代から受け継ぎ耕してきた農地を奪おうとするNAAの卑劣なやり口を挙げ、弾劾した。そして、「小作農にも耕す権利がある。違いますか」と鋭く問いかけ、航空需要が激減した成田空港の惨状を指摘し、「これでも裁判所は農地強奪の強制執行を許すのか」と裁判長に迫った。そしてもっとも自分の大事にしている信条を「うそをつかないこと」と述べ、完全無農薬・有機農業に誠実に取り組んできたことを自信をもって確認した。最後に裁判長に向けて、「私は言いたい。土は生きている。土を殺すな。コンクリートの下にするな。俺の仕事と誇りを奪わないでくれ。農業をおろそかにしてはならない。強制執行を許可しないでほしい。どんなことがあろうと、私は天神峰の畑を耕し続けます」と不動の決意を突きつけ、陳述を結んだ。
農民の土地を奪うためにありたあらゆる卑劣なうそをつき続けてきたNAAの代理人たちは目を伏せ、市東さんの顔をまともに見ることもできない。
続いて、石原健二さん(農業経済学)、内藤光博さん(憲法学)の二人が補佐人として意見陳述し、それぞれの専門分野から市東さんの農地を奪うことは許されない暴挙であることを明らかにした。

弁護団の最終陳述
弁護団による最終準備書面の陳述に入った。342ページという分量で、まさに心血を注いで書き上げた弁護団の主張の集大成だ。
空港公団=成田空港会社(NAA)は空港建設において「今後あらゆる意味で強制的手段をとらない」「あくまで話し合いで解決」と社会的に公言している。この事実をねじ曲げ、一審判決が「民事訴訟での強制執行は放棄してはいない」などとするのは、とんでもない詭弁であり、信義則違反、権利濫用だ。
そして強制執行は市東さんの営農権、生存権的基本権を侵害する苛酷執行であり、憲法に違反する暴挙である。――
そして最終陳述は、今回弁護団が最も力を入れて書いた「新型コロナ」問題へと入っていく。
コロナ大不況でNAAは存亡の危機に転落し、農地を空港施設に転用する必要性・合理性は完全に消滅したのだ。
感染症の世界的大流行によって、航空市場の需要は蒸発し、航空バブルは崩壊した。B滑走路をはじめ成田空港の諸施設は閉鎖に追い込まれ、設備過剰が露呈した。今後回復することはあり得ない。観光立国戦略は挫折し、国交省らの需要右肩上がりの夢想は破産した。最新の報道によれば、全日空の今期の赤字は過去最悪の5000億円規模となり、国際線を成田から撤退させ羽田に集約するとの方針である。NAA田村社長は、「航空需要に貢献するためにも機能強化をやる」などと言うが、本末転倒だ。
状況は一変し、農地法裁判の「明け渡せ」と命じる確定判決も今やまったく無意味となった。

菅野雅之裁判長

NAAはこれに対し、「いや、成田空港の社会的要請はまだある。今後も航空需要は増大する」と反論する義務があるのに、口を閉ざしたままだ。確定判決は死文と化しており、それに基づく強制執行は著しく信義誠実の原則に反し、明白な権利濫用である。原判決を取り消せ!――
弁護団の圧倒的弁論の力が法廷内を完全に制圧し、傍聴者は賛嘆の拍手を送った。
菅野裁判長は、被控訴人のNAA側が主張も反論も何もしないことを当然のように確認し、弁論の終結を宣言した。そして「12月17日(木)午後2時」と判決の日時を言い放ち、閉廷を宣した。

報告集会
弁護士会館において伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。市東さんは、「石原さん、内藤さん、弁護団にすばらしい陳述をしていただきました。これが1%でも裁判長に届けばとも思いましたが、こんなに判決日が早いとは内容をもう決めているのでしょう。しかし、コロナの空港への影響は続きます。ほかの裁判もあります。これからもみなさんと共に闘います」と決意を述べ、大きな拍手を受けた。

閉廷後、弁護士会館で報告集会。左手前は補佐人として意見陳述した石原健二さん(元立教大学教授、農業経済学)

続いて弁護団事務局長の葉山岳夫弁護士が、「今日の陳述で理論的には完勝した。請求異議裁判の大きな展開によって、NAAに痛打を浴びせた。今後どのような判決が出ようと、みなさんが蓄積した力をもとに、現地での実力闘争を基盤として弁護団も全力で闘い抜く」と鮮明な決意を表した。さらに弁護団それぞれが勝利感を湛えて発言し、一同の奮起を促した。
ユニオン習志野、群馬・市東さんの農地を守る会などの連帯発言に続き、全国農民会議の小川浩共同代表は「日本農業そのものの危機が背景にあり、国家権力が市東さんの農地を奪うことに総力を挙げている」と述べ、この決戦を共に担う意気込みを表した。
一日の闘いを通して、成田廃港の現実性を共有し、12月17日の判決を迎え撃つことを全員で誓い合った。(TN)

〇洞口朋子・杉並区議会議員の感想

洞口朋子さん(杉並区議会議員)

今日は裁判を傍聴し、何よりも市東さんの冒頭の意見陳述に涙が出るほど感動しました。お父さんの闘いを継ぎ、国と闘いつつ農業をやっていく上で、「うそはつかない」という生き方を貫いていることをまざまざと見せられました。
私も区議会で田中区政、口先ばかりの既成政党、野党などと闘っていますが、市東さんをはじめ三里塚の54年の不屈の闘いが私の拠りどころだと再確認できました。私も全力でがんばります。(談)

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