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洞口杉並区議が区長のトリアージ発言を追及

3月10日に行われた杉並区議会第1回定例会で洞口朋子区議が、予算案に反対した上で以下の4点について意見を表明しました。

【1】原発事故は終わっていない! オリンピックやめろ!

2011年3月11日の東日本大震災と福島原発事故から明日で10年を迎えます。原発事故は終わっていません。今年2月13日の東北地方の大地震で福島第一原発の1、3号機の原子炉格納容器の損傷がさらに広がり、核燃料の冷却水の水位が低下する重大事態が起きています。3月11日当日に出された「原子力緊急事態宣言」は10年間、出されっぱなしです。安倍前首相の「アンダーコントロール」宣言で東京五輪は呼び込まれましたが、放射性物質や放射能汚染水は管理されているどころか今なお膨大に垂れ流され続けています。「復興五輪」をうたっていますが、復興どころか帰還強制と被災地切り捨てが進んでいます。福島県の公式発表だけでも、今年2月時点で3万5000人をこえる方々が県外・県内への避難生活を余儀なくされています。何が「アンダーコントロール」でしょうか。何が「復興」でしょうか。

東京オリンピックはただちに中止すべきです。ましてや世界はコロナ禍のただ中にあります。政府が適切な感染対策を取らなかったことによって感染者は拡大し、病床数ひっ迫の中で入院できずに苦しむ感染者が続出し、また最前線の医療・介護労働者は日々苦闘しています。十分な補償策も取られない中で休業・時短が強制され、雇用や賃金は減少し、人々は生存の危機に直面しています。東京オリンピックにかかる予算をすべて医療支援と生活保障に充てるべきです。“東京オリンピックに1万人の医療従事者を動員する”など言語道断です。

しかし、菅首相と小池東京都知事は、海外観客の受け入れすらできないほど破綻した東京オリンピック・パラリンピックをあくまでも強行しようとしています。3月2日に衆院を通過した21年度予算案(総額約106.6兆円)には、7年連続で過去最大を更新する5兆3422億円の防衛費を盛り込む一方、政府は生活困窮者への現金給付案については「考えていない」とはねつけました。

小池都知事も2021年度予算で東京五輪に4000億円の追加予算をつけました。当初は「コンパクト五輪」などとうたわれていた東京オリンピックは今では史上最大規模の予算です。今や「オリンピックしてる場合じゃないだろ!」が、日本中、いや世界中の声です。今年1月のNHKの世論調査では、「開催すべき」が16%、「中止すべき」「延期すべき」が77%でした。杉並区も自治体としてオリンピック中止を要請すべきです。

【2】コロナ禍の労働問題について

コロナ禍の労働問題で特に深刻なのは女性労働者の現実です。総務省が発表した1月の労働力調査によると、非正規職の女性労働者は前年同月比68万人減で、減少幅は男性(22万人減)を大きく上回りました。民間の調査では、女性の実質的失業者は2月の時点で103万人で昨年12月より13万人も増えました。緊急事態宣言下の休業などの影響は、非正規職労働者、とりわけ女性や青年を直撃しています。
2008~09年のリーマン・ショックの頃ともまったく違い、食糧配布の列には子どもの手をひく女性が多く並んでいると言われています。不安を抱えて「生きるのがつらい」という女性が6割。「生活を切り詰めた」「食事の回数を減らした」との声もあふれています。

DV(家庭内暴力)の相談は前年と比べ1.5倍に上り、性犯罪、性暴力に関する相談も前年を上回りました。何より女性の自殺者数が2020年10月には前年比で8割増加、とくに無職(職を失った)の人の間で増えています。小中高生、とりわけ女子高校生の自殺も増加。妊娠届け出数は20年1〜10月では前年比で5.1%も減少しています。

政府の唱えてきた「女性活躍」「輝く女性」などのかけ声は、極端な低賃金で何の権利・保障もない非正規労働の現場に女性を引き出す政策でした。男女雇用機会均等法は現にある賃金差別を何も解決せず、逆に評価制度と能力主義を現場に導入して差別・分断を一層推し進めてきました。その一方で家事・育児・介護は「女性の仕事-無償労働」とされてきたのです。「管理職にどれだけ女性が増えたか」ということは物事の本質ではまったくありません。膨大な女性労働者に貧困が強制され、人間らしく生きていくことができない現実を変えることにこそ本質があるのです。

この40年来の新自由主義による終身雇用制解体、非正規雇用拡大の中で、男性もまた、家族を「養う」ことは不可能になりつつあります。「家族手当」などが廃止される一方、深夜までの残業=長時間労働も課せられ、労働者家庭そのものが崩壊させられてきました。そこに起きたコロナパンデミックによって、あらゆる矛盾が労働者家族にしわ寄せされています。自殺の増加や出生率の低下は、労働問題であり、これまでの社会体制が生み出した問題です。

【3】医療は社会保障だ!

コロナ禍の医療現場では“医療を社会保障として取り戻す取り組み”が続いています。医療・介護施設、保健所をはじめ現場への万全の支援、感染症対策、職種の分断を許さない一律の大幅賃上げと人員増、長時間・過重労働の解消など労働条件の抜本的改善が必要です。コロナ対策に回すべき金はいくらでもあります。「財政難」など詭弁です。

菅政権は、五輪経費や軍事予算、デジタル化やGоTоキャンペーンなどには湯水のように税金を使う一方で、医療・社会保障破壊を進め、全国440の公立・公的病院を名指ししての統合・廃止、病床削減方針を継続しています。高齢者の医療負担、健康保険・介護保険料の増額と年金支給額切り下げ、児童手当の縮小・廃止を断行しようとしています。絶対に許せません。

あらためて、田中区長の「トリアージ発言」を弾劾します。トリアージという言葉はフランス語の「選別する」という動詞に由来します。18世紀末のナポレオン戦争の際、戦力として前線に復帰できる負傷兵を優先的に治療することを目的とした戦時医療の概念として用いられるようになりました。現在、災害救援や救急医療などの現場で行われるトリアージは、傷病者を①最優先治療群、②待機的治療群、③保留群、④無呼吸群・死亡群に振り分け、赤・黄・緑・黒のタグを付ける措置を指します。

コロナ禍で、トリアージをめぐる動きは世界で起こっています。イギリスでは、国立機関が「障害者のように身の回りのケアを他人に頼る人は優先順位が下がる」とする治療のガイドラインを作成。イタリアの集中治療学会は「選別(基準)は残りの寿命。年齢や障害の有無で判断すべき」との提言を出しました。そしてオランダでは福祉担当大臣がなんと「70歳以上の国民は社会の役に立たないから後回しに」と述べ、いずれも民衆の怒りの的となっています。

日本の医療現場でも、一定の年齢以上の患者に人工呼吸器を使用させないよう求める指導が行われているといいます。それは決して「できるだけ多くの人々に最善の治療を施すための、やむをえない措置」などではありません。“患者が「国家」や「社会」の「役に立つ」かどうか”を基準にして、命を選別する行為に他なりません。政府・資本が基準とするのは、「戦力」あるいは「労働力」としての価値です。
こうしたことはコロナ禍以前から行われてきました。ゆえに昨年4月には、複数の障害者団体がコロナ対策をめぐり「障害を理由とした命の選別を行わないこと」などを求める要望書を安倍前首相に提出しています。

何より、「医療資源には限りがある」「全員を救うことはできない」という“前提”こそ問い直されなければなりません。新自由主義のもとで各国政府は医療費を削減し、医療機関を民営化してきました。はるか以前から新たな感染症のパンデミックが予見されていながら、「経営効率」を最優先して感染症病床や保健所を削減し続けてきた結果として現在の医療崩壊があるのです。コロナ禍は新自由主義的な医療切り捨て政策の破綻を突き出したのであり、政治家・大資本・高級官僚が引き起こした「人災」そのものなのです。

社会保障としての医療を解体し、さんざん金もうけの道具にしてきた政府が、「仕方のないこと」であるかのようにトリアージを語ること自体がふざけきっています。「現場の負担軽減」を語ってトリアージの基準策定を求める田中良杉並区長の発言も言語道断です。

コロナ禍で命がけで働く医療労働者に対して「生かす命」と「切り捨てる命」の選別が強制されることなど、絶対に許してはなりません。これは現場の医療労働者の誇りを踏みにじるだけではなく、医療の性格を根本から転換させ、命に優劣をつける優生思想に直結するものだからです。田中区長は今すぐに東京都に対するトリアージ基準策定の要請を撤回すべきです。

【4】児童館潰すな!再開発・道路拡幅をやめろ!

杉並区が進める児童館全廃に絶対反対です。私が話を聞いた保護者の訴えを紹介します。「子どもたちにとっては自分の場所と思える居場所がなくなるということです。子どもが主語になっていない。悲しいし腹立たしい。児童館には、遊戯室や図工室、音楽室、図書室、休憩場所、庭や体育館があり、見守ってくれる職員がいて、遊びを通してできる友達がいて、また子どもたちの輪に入って打ち解けられない子どもでも一人で遊んだり、絵を描いたりして、つらい思いを我慢しなくても過ごせる時間と場所、居場所があります。遊びと交流、それが誰にも保障されるフリースペース、オープンスペースです。そういう居場所があるかどうかは子どもたちにとって大きいものです。区は『機能移転』と言いますが、「体育館は使えるのか」など色々聞いても言葉を濁されるというようなことが、既に学校内で学童クラブをしているところでは起きていることです。子どもたちのために児童館廃止を撤回してほしい。」という切実な訴えです。杉並区はこの声を聞くべきです。
そして阿佐ヶ谷再開発です。旧けやき公園の地下水の判明は「阿佐ヶ谷駅北東地区土地区画整理事業」でも同様の危惧があると考えます。万一、同様の問題や、土壌汚染問題等不測の事態が発生したら、玉突きの計画なので、杉一小の老朽化対策が遅れます。

杉一小敷地内につくる工事用車両が復路に利用する馬橋通りの増加により児童や高齢者、自転車、車椅子、乳母車など生活者の通行に危険を及ぼします。万が一、事故が起きたら、けやき公園の地下水同様「想定外だった」とでも言うのでしょうか?工事用通路を作ることは「安全のため」ではなく、学校内も馬橋通りも中杉通りも危険が一杯となり、人の命が脅かされます。新型コロナ対策に一切を集中させるべき時期であり、住民合意もない中での土地区画整理事業と関連事業は直ちに中止をすべきです。

最後に、予算特別委員会の分科会方式での開催について、あらためて反対します。私は予算審査の日数を減らすことは議会制民主主義の根幹にかかわる問題と考えていますが、実際にはさらに重大な問題がありました。審査日数を減らして1日にめいっぱい詰め込んだため、当然にも1日の審査時間が長くなりました。私は5日間すべての分科会で質問に立ちましたが、議員はともかく、職員のみなさんの残業・多忙化により一層拍車をかける結果になったと思います。分科会は10時開会ですが、職員はそれよりも2時間近く早く出勤しているのであり、職員の労働問題を考えることぬきに、「コロナ対策」はありえません。何より、予算提案者である区長がちゃっかりと昨日の文教分科会を欠席したこともまったく意味が分かりません。「コロナ対策」を口実にした議会の形骸化に強く抗議します。

以上

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