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三里塚団結街道裁判―ごまかしだらけの小泉成田市長証言

小泉一成成田市長。2007年以来現職。現在5期目

千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で5月10日、団結街道裁判が開かれた。成田市は2010年6月、三里塚芝山連合空港反対同盟の市東孝雄さんの自宅と南台農地を直線で結ぶ団結街道(成田市道・天神峰―十余三線)を、夜陰に乗じて暴力的に封鎖し廃止処分にする暴挙に及んだ。その総責任者である小泉一成成田市長を、この日証人としてついに法廷に引きずり出した。
反対同盟と支援の労働者・市民で傍聴席を埋め、原告席には市東さんが座り開廷。早速小泉市長への主尋問が始まった。市の代理人弁護士の質問に答え、市長が語るストーリーは以下のようなものだ。
08年7月31日に国土交通省、成田空港会社(NAA)、千葉県、周辺9市町からなる「4者協議会」が開かれ、成田空港の容量拡大(年間発着数を増やす)が議題となった。さらに翌09年の4者協議会でNAAから「B滑走路の誘導路を改良・整備する必要がある」と提案された。市東氏が耕作地へ行くのをどうするかという問題があったかなと思ったが、自分は直接関与していない。市の担当部署とNAAが協議した結果として、代替道路、機能補償道路を整備することで市東氏が被る不利益を解消できる、廃道は適法にできると判断した。書面による庁議で必要各方面の手続きを進め、10年2月の市議会に道路廃止の議案を市長名で提出した。議決の前に機能補償道路は完成すると聞かされていた云々……。
市の代理人が、「原告(市東さん側)は、道路廃止は政治案件であり市長の鶴の一声で決まったと主張しているがどうか」と問うと、市長は「そんなことはない。特別な指示はしていない」と否定した。廃道への市長自らの関与をできるだけ小さく描きたいという、虚偽とごまかしに満ちた語りだ!
反対同盟顧問弁護団が反対尋問に立った。「誘導路建設の話が出たのはいつか」と問われ、「記憶にない」と答える。そして、「市道廃止は道路法第10条で定める廃道の要件を満たす」との報告を、当時の成田市土木部の中村部長から受けたという。「市東氏が畑へ行く道は遠回りになるが、不利益は解消できると思った」と重ねて強調した。だが弁護団から、市東さんが畑へ行く道のりが何倍になるのか、時間がどれだけかかるのか、急カーブがあるのを知っているか、など具体的に問われると、知らない、記憶にない、聞いていないを連発。
 西側誘導路(第3誘導路)を新たに建設することは「安全のためだ」というNAAの主張をそのまま受け入れる一方、一成田市民である市東さんが営農に必要な道を奪われ現実の被害を被ることについては、「代替道路、機能補償道路で解消」とのフレーズを繰り返した。
また廃止処分決定にいたるまでに交通量調査も説明会もやらず、一方的に市東さんに市長名で紙切れ一枚で廃道通告をしたことを認めた。「それぞれの部署が役割を果たしている」「担当部の方で適切に対処している」からと、直接責任を担当に押しつけ、自分の積極的関与を薄めようと躍起になっている。
封鎖された団結街道の土地は、競争入札もせず742万円という格安でNAAに払い下げられた。市長は「不動産鑑定が適切に行われたと思う」と、空港との癒着を開き直った。NAAが立てた「道路封鎖」看板をめぐって、当時市東さんが逮捕される事件が起こったことについては、「聞いた記憶はある」とだけ答えた。トンネル化して街道を残すような選択肢については、まったく考えもしなかったことを表明した。
市長にとって、一市民である市東さんの人権や営農権には何ら配慮せず、固定資産税で市の財政の6分の1をまかなってくれる空港のほうがよっぽど大事だ、誘導路造りが優先するのは当然だという態度をあからさまにした。
弁護団の質問は、そのような空港一辺倒の市長の姿勢の追及に向けられた。
結局はNAAの金もうけのために年間発着を30万回にしたいということに手を貸しただけではないか、との質問に市長はまたも、「代替道路と機能補償道路で市東氏の不利益を解消できる」とまくしたてる。答えになっていない。
団結街道が使えず、南台農地へ日々何度も行き来することで、これまで約5000時間を余計に費やしたとする市東さんの主張について問われると、市長は「市民に対してがまんしろという考えはない」などと実態と真逆のことを平然と述べる。「耕作地にいけなくなったなら問題だが、代替道路ができたと報告されたから」それで十分だと開き直った。
今成田空港は機能強化策と称して、B滑走路をさらに北に延伸し、第3滑走路建設する工事に着手し、夜間早朝の飛行時間制限をわずか4時間にまで緩めて、周辺地域をさらなる騒音地獄にたたきこもうとしている。この点を問われると小泉市長は、「騒音被害の訴えは住民から聞いており、国、NAAとともに解決へ向けて取り組んでいく」と述べた。
ではどんな騒音対策をしているというのか。小泉は「壁、天井などの防音工事の助成や、移転補償の対象地域の拡大」を挙げ、さらに芝山、多古、横芝光町とともに単発騒音(※)の調査を国・環境省に要請しているところだと説明する。ところが、その要請なるものは今日まで国側にまったく無視されたままで、市が独自に騒音調査するつもりはみじんもない。「住民への配慮」「騒音対策」を口先だけで調子よく語る小泉市長に、傍聴者の怒りが募った。
弁護団が、この場にいる市東さんに向けて何か思うところはないのかと問うと、市長は「迂回していただいていることについては申し訳ないが、多方面に配慮することでこうなったことをご理解頂きたい」などと語るが、顔を市東さんの方に向けようともしない。「多方面への配慮」とは、スポンサーとしての空港の言いなりという意味しかないのだ。
さらに陪席裁判官が、4者協議会開催と道路廃止を決めた前後関係について証人に質問した。ここでも小泉は、09年7月の4者協の時点では道路廃止を決めておらず、他人事のように「安全性という面で廃止はありえるのかなあと思っていた」などと繰り返した。

閉廷後に千葉県弁護士会館で報告集会が開かれた

証言を終えた小泉市長に、傍聴席から「農民殺しやめろ!」などの弾劾が傍聴席から浴びせられた。
次回期日は7月16日、東峰の萩原富夫さんが原告として証言する。次々回10月25日には市東さんが同じく本人尋問で証言台に立つ。さらに来年1月24日の期日を確認し閉廷した。
千葉県弁護士会館で伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。最初に弁護団が発言した。道路法第10条では、「一般交通の用に供する必要がなくなつたと認める場合において」と市長が廃道処分を下せる要件が定められているのであり、一日100台以上の車両が現に交通していた団結街道について、「代替道路、機能補償道路ができたから廃道していい」との小泉市長の判で押したような繰り返しはまったく成り立たないことが強調された。
続いて市東さんが「市長は空港のことしか頭にない。住民のことなど何も考えていない」と弾劾した。かつて小泉市長が天神峰、東峰の農民に向けて、「地権者は一日も早く移動してほしい」「用地内の住居は音もすごいが、危険な場所で人命上の問題だ」「例えば交差点の中に人が立っていたら『あなた危ないですよ。そんな所いちゃ駄目ですよ』というのは当然だ」と言い放った(09年11月27日付毎日新聞千葉版)ことを、市東さんは一同に思い出させた。
空港周辺住民のAさんも「成田市は空港の代理店になり下がっている」と強い憤りを表した。
東峰の萩原富夫さんは、「羽田空港の国際化による『成田の地盤沈下』に危機感を抱いて、他の周辺自治体と比べても最も強く機能強化を求めてきた張本人が小泉市長。年間30万回発着へ向けて深夜早朝に飛ばす規制緩和を率先して進めてきた。4者協議会では『市道廃止は聞いてなかった』などとデタラメ言ってたが、NAAは誘導路整備と廃道をセットで提案してたことは間違いない」と怒りをあらわにして発言し、次回本人尋問へ向けて闘志を表した。
司会の伊藤さんも、団結街道廃道の狙いは反対し続ける市東さんをつぶす攻撃だと喝破し、南台農地を守る闘いと一体で団結街道裁判の勝利をもぎとることを訴え、全員が大きな拍手で応えた。(TN)

市東孝雄さんは、ごまかしの答弁に終始した成田市長への怒りを表した

※単発騒音暴露レベル(single event A-weighted sound exposure level)
鉄道や航空機など間欠的、単発的に発生する騒音を、同じエネルギー量を持つ継続時間1秒間の定常騒音の騒音レベルに換算し表す。

スケジュール
◎耕作権裁判 5月13日(月)10時30分開廷 千葉地裁(強風・大雨が予想され、千葉市内デモは中止になりました
◎空港拡張差し止め裁判 5月24日(金)午前10時30分開廷 千葉地裁

2019年2月4日に開かれた4者協議会で、小泉一成成田市長はA滑走路発着制限の1時間延長を率先して受け入れ、記者会見で、「今日は国、空港会社から環境対策、地域振興策を推進するためのいっそうの協力が確認されたことで、騒音地域、とりわけ空港南側地域の不安が払拭され、多くの住民の皆さんのご理解が得られるのではと受けとめております」と述べた

 

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