第3誘導路裁判で弁護団が国・NAAの暴論を粉砕する圧倒的陳述
5月17日、千葉地裁民事第3部(阪本勝裁判長)で、第3誘導路裁判の弁論が開かれた。三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、支援の労働者・学生・市民は、農地強奪のために造られた第3誘導路への怒りを新たに、この日の闘いに臨んだ。
被告の国と成田空港会社(NAA)は前回、天神峰で営農を続ける市東孝雄さんへの個人攻撃を一段とエスカレートする主張を行ってきた。
「原告市東は、自らの自由意思で空港敷地にとどまっているから騒音を受忍すべき」「法律で騒音防止措置を規定しているのは、空港周辺についてであり、騒音の発生源である空港敷地内は保護の対象ではない」「市東の住む土地は収用されるべき土地であり、人の居住を予定しないから、騒音防止措置は無用だ」
一字一句を許すことができない文章だ! これらの暴論を徹底的に打ち砕くために、顧問弁護団は総力で準備書面を用意し、以下の内容でこの日の陳述を行った。
市東家は3代にわたって営農を続けてきた。日本の農業は就業人口の減少、高齢化、耕作放棄地拡大などの深刻な危機に直面しているが、その中で市東さんが農業を継ぎ守っていることは称賛に値するものであれ、土地を追い出されるいわれはまったくない! 国・NAAの主張は市東さんの人権を否認する憲法違反だ。
市東さんの居宅は周囲を滑走路・誘導路に囲まれ、健康に害を及ぼすほどの激しく深刻な騒音被害を受けている。そもそも空港の三里塚への位置決定と建設の過程が、暴力行使と既成事実の積み上げによって進められてきた。市東家にしてみれば、自分の土地を空港に使われるなどということは予定していない。それを「自由意思で空港敷地にとどまっているから騒音に堪えろ」とは、盗人猛々しい言い草だ! まして、市東さんの住んでいるところを〝空港周辺ではなく騒音発生源だから〟などと切り捨てるのは、航空機騒音防止法などの趣旨をねじ曲げる際立った珍論だ。
また〝収用予定地で人が住むことを予定していない〟などと言うが、用地取得のために農家の軒先まで工事を進め、機動隊の暴力を背景に立ち退きを迫るというこれまでのやり方に、まったく反省がない鉄面皮な主張だ。その破産が事業認定の失効となった。そして今は民事裁判を使って市東さんの耕作地を強制的に奪おうと策動し、何の反省もない。
市東さんは父の遺言に従い、実家に戻り農業を継いだ。金や暴力に屈せず農業を続けることが市東さんの自由意思だ。
成田は空港間競争で敗勢に追い込まれ、旅客数・貨物量とも衰退している。この時「地元の要請で第3滑走路建設が期待されている」などと虚構を語り、〝空港の公共性〟を押し出すのはインチキの極みだ。被告側の主張は一切認められない!
この陳述が、居並ぶ国・NAA代理人を完全に圧倒した。裁判長は傍聴席に対し「拍手するな」などとたびたび警告を発し、あせりの色をにじませた。
さらに弁護団は、北海道大学の松井利仁教授の騒音被害に関する意見書を提出した。
国の代理人は「次回までに反論できるところは反論を出す」などと言う。次回期日を7月19日として閉廷した。
千葉県弁護士会館で、伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれ、葉山岳夫弁護士を始め陳述した全弁護士が発言に立った。昨年末の阪本裁判長への突然の交代に乗じて、被告側は早期結審をもくろんで市東さんへの攻撃を急激にエスカレートした。だが、この策動を今日の全力の奮闘で完全に粉砕したことを勝利感をもって確認した。
そして、翌日の18日に最高裁に向けて農地取り上げ反対署名の第2次提出行動を行うことを確認し、さらに7・3三里塚闘争50周年東京集会の成功へ奮闘することを誓い合った。(TN)
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