成田空港拡張差し止め裁判―Ｃ滑走路建設中止せよ！

芝山町白桝地区に４６年住み続けてきた伊藤信晴さんに対し、被告・国は「原告適格がない」と不当な決めつけを行っている（３月１４日　千葉県弁護士会館）

千葉地裁民事第３部（岡山忠広裁判長）で３月１４日、成田空港拡張差し止め裁判が開かれた。
三里塚芝山連合空港反対同盟はこの裁判で国と成田空港会社（ＮＡＡ）に対し、①Ｂ’暫定滑走路の２５００メートルへの延長（２００６年）と第３誘導路建設（１０年）の違憲・違法性を追及し、②「空港機能強化策」を掲げた施設変更許可（２０２０年）により現在進められているＢ’滑走路の再度の延伸（３５００メートル化）、第３（Ｃ）滑走路建設などの空港拡張工事の差し止めを求めている。
反対同盟顧問弁護団は前回までに被告・国に対し、原告の一人である伊藤信晴さんの居宅と第３滑走路予定地との位置関係を明確にするため、「２０２０年許可処分にかかる２５００分の１の計画図面の提出」を求めた。これに対し国は３月７日、「変更許可の時にそんな地図は提出の必要はないし、ＮＡＡからも出されていない」と白を切りながら、原告が作成した空港全体の図面に「伊藤信晴の居宅」位置として雑なマル印を書き加えて提出してきた。こんな大雑把でいい加減な地図で何を分かれと言うのか。実にふざけきった対応だ。
今回弁護団は、こうした国の不誠実な姿勢と対応をあらためて厳しく追求する準備書面５６を陳述した。
原告・伊藤信晴さんは、芝山町の白桝地区に１９７９年から４６年間も居住し続け、反対同盟事務局員の一人として活動している。新Ｃ滑走路は、白桝から東側約１キロの位置に南北方向に建設が計画されている。これが完成すると、白桝はＡ、Ｂ、Ｃという３本の滑走路に囲まれ極限的な騒音被害にさらされる。直接にＣ滑走路の敷地ではなくても、白桝には「全戸移転攻撃」がかけられているのだ。騒音、飛行機墜落、落下物などの恐怖によって威迫され、生活共同体が分断され、いたたまれなくなった農家が「自主的に」離れていくという形がつくられている。かつてＮＡＡ＝空港公団は、「私たちは空港を造らせて下さいとお願いする立場」と殊勝な物言いをしていたが、今やそれをかなぐり捨て、企業城下町の城主然として君臨し、関係自治体の行政を支配下に置いているのだ！
　以上のように現状を描き出し、弁護団はあらためて、変更許可申請の中で提出されたはずの２５００分の１の空港予定図を直ちに証拠提出するよう強く求めた。
さらに弁護団は、航空機騒音による健康被害問題について、ＷＨＯ欧州地域事務局によって明らかにされた「夜間騒音ガイドライン」に基づく最新の知見を解説した。
「住民には１日８時間の睡眠確保、そのための１０時間の睡眠時間帯が必要」「高感受性群である子どものために、特に夜間は早い時間から睡眠妨害が生ずるような騒音を制限すべき」「夜間騒音による睡眠妨害が住民の虚血性心疾患、冠状動脈性疾患などのリスクを引き上げる」
これらの重大な事実を具体的な数字、図表をも使って示した上で、さらに「他の市町村における死亡原因第１位ががんであるのに対し、騒音被害を最も受けている芝山町の第１位は心疾患である」という事実を衝撃的に突き出した。
そして「空港拡張計画の実現によって、朝５時から深夜０時半まで飛行機が発着し、年間発着容量も３０万回から５０万回へと拡大されれば、住民は睡眠を取れなくなり、甚大な健康被害が発する。２０２０年許可処分に基づく成田の拡張計画は違法で無効というべきであり本件工事は直ちに差し止められなければならない」と被告らに迫った。
国の代理人は２５００分の１地図の提出を求められたことについて、まったくやる気のない態度で「持ち帰り検討します」と応えた。岡山裁判長は、「白桝地区の騒音被害の大きさを、滑走路、飛行ルートなどとの関係で立証するということなら、今回被告から出された『ポンチ絵』のようなのではなく、詳細な地図がほしいと原告が求めるのはわかる」として、国に提出を促した。自分らの出した図面を「ポンチ絵」呼ばわりされた国の代理人は意気消沈し、首うなだれている。
次回期日を７月８日、次々回を１０月３日と確認して閉廷した。

閉廷後の記者会見にマスコミ各社が参加し、熱心な質疑応答が行われた（３月１４日　千葉県弁護士会館）

千葉県弁護士会館において、３月２４日の耕作権裁判判決に向けた記者会見が反対同盟と弁護団によって開かれた。弁護団が耕作権裁判の経緯、争点などについて詳しい解説を行った上で、質疑応答に移った。集まった各社記者は全員若く、初歩的初心者的な質問も目立ったが、弁護団は一から懇切丁寧に説明した。親子三代１００年にわたって天神峰で耕してきた市東孝雄さんに揺るぎない耕作権があること、ＮＡＡが市東さんを「不法耕作者」呼ばわりして土地の明け渡しを迫るのはまったく不当であること、小作者の承諾・同意なく地主から秘密裏に底地を買収し、証拠となるべき文書を秘匿しているＮＡＡこそ違法脱法の当事者であることなどを解説した。
この日、開廷に先立って三里塚支援連絡会議は千葉地裁前で情宣活動を行い、「農民殺しの判決を出すな！」と訴えた。（ＴＮ）

スケジュール
◎耕作権裁判判決　３月２４日（月）正午　千葉市中央公園集合→市内デモ　午後２時開廷　千葉地裁６０１号法廷
◎３・３０天神峰現地闘争　３月３０日（日）午後１時　市東さんの南台農地集合　ＮＡＡ本社へ向けてデモ　主催／三里塚芝山連合空港反対同盟

開廷に先立ち、伊藤さんを先頭に反対同盟と支援連は情宣活動に立ち、千葉地裁へ向けて「市東さんの農地を奪う判決出すな！」と迫った（３月１４日　千葉地裁前）