中国で医療労働者と住民の「病院を守る」闘いが大勝利
6月13日、中国・貴州省の省都の貴陽市にある貴陽第一人民病院の医師・看護士らは、貴陽市政府が病院用地を開発業者に売り渡し、病院を街の郊外に移転しようとしていることに抗議して、「命を懸けて第一病院を守る!」と横断幕を掲げて闘争に決起した。
貴陽第一人民病院は、1919年の設立で100年近い歴史を持ち、現在約700人の医療関係の労働者が働いている病院である。病床も805床あり、医療技術も中国でトップクラスと認定されている。いま中国では、「改革・開放」政策の中で、病院は資本と官僚のすさまじい金儲けの場となり、暴利をむさぼる病院に対する労働者の激しい怒りが存在しているが、そんな中で貴陽第一病院は、医療の質といい、良心性といい、労働者住民の厚い信頼を得ていた。
ところが貴陽市政府は、この病院の用地を街の開発業者に売り渡してボロ儲けをし、そのために病院を郊外の龍洞堡に移転させようとしたのである。このことを知った病院の医者や看護士らは、13日の昼から闘争に立ち上がり、抗議書を病院にたたきつけるとともに、「病院を守る! 人々のための医療を守る!」「医療用地を商業用地にすることに徹底抗議する!」などの垂れ幕を病院の建物に掲げ、病院を訪れる労働者住民と合流して反対署名を公然と集めた。住民にとっても、この病院が郊外に移転することなど絶対に許せなかったのだ。「あくどい民間の病院に行けというのか!」と、ある人は言っている。この問題は、付近住民にとっては事実上の病院の民営化問題ともいえるのだ。
これに対して病院側は警察などを動員して弾圧をしようとしたが、医療労働者と住民の合流の前になすすべもなかった。
この闘いの中で17日、病院長は辞職に追い込まれ、市政府は、闘争に参加した医者・看護士は「違法行為であるが」処分は一切しないとした。そして「事実に誤解がある。龍洞堡に建てられるのは、この病院の分院であって、新院ではない」として、“移設もなければ開発業者への売り渡しもない”との旨を明らかにした。
だが一方で市政府は、この事件に関する話題について病院関係者に緘口令を敷こうとし、ネットで流したり、議論することを禁じようとし、また実際にネットにこの事件について情報を流した人物を警察は逮捕し、10日間の拘留処分にしているのである。
貴陽第一人民病院の医者・看護士の闘いは、労働者住民と合流して、市政府による病院用地の売却と移転をいったんは阻止した。これは、すばらしい勝利である。しかし一方で市政府が売却を完全に断念したとも思えず、この勝利の上に、新たな闘いは必至になろうとしている。「病院を守る! 人々のための医療を守る!」という医者と看護士の闘いは、今後も継続的に闘われていくだろう。(G)
この記事へのコメントはありません。