市東さん農地裁判、萩原事務局次長が再び証言
2月4日、千葉地裁民事第3部(多見谷寿郎裁判長)で市東孝雄さんの農地裁判(農地法裁判・行政訴訟を併合)が開かれ、三里塚芝山連合空港反対同盟事務局次長・萩原進さんが再び証言台に立ち、農地収奪攻撃と闘う農民の根底的決意を明らかにした。
裁判に先立つ午前11時30分、千葉中央公園に労農学市民150人が結集し、反対同盟呼びかけによる決起集会がかちとられた。萩原富夫さんの司会で、最初に北原鉱治事務局長が発言に立ち、「2013年の闘いが今日の裁判から始まった」と参加者を鼓舞した。
続いて、動労千葉の長田敏之書記長が、三里塚と連帯して外注化攻撃を粉砕する決意を述べた。さらに全学連の斎藤郁真委員長が、成田軍事空港粉砕へ市東さん農地決戦をともに闘う決意を明らかにした。
シュプレヒコールで集会を締め、「農地は私たちの命、多見谷裁判長は空港会社の手先になるな」と色鮮やかに大書された横断幕を掲げ、ただちにデモに出発した。先頭には市東孝雄さん自身が立っている。「市東さんの農地を守り抜くぞ」「農地強奪を許さないぞ」のコールが千葉の繁華街に響き渡り、デモ隊の発するただならぬ真剣さが沿道の人びとの視線を集めた。ビラが多くの人に手渡され食い入るように読まれた。デモは千葉地裁前を制圧し、多見谷裁判長によるNAA側を利する偏った訴訟指揮に、強い怒りをたたきつけた。
午後1時30分開廷。ただちに萩原進さんの証言が始まった。
自らが住む東峰部落において、轟音を発してジェット機が頭上40メートルを離着陸していること、営農と生活に不可欠の東峰の森を破壊して東側誘導路が造られ、しかもそれが現在ほとんど放置されている現実が怒りを込めて暴かれた。「今朝、成田市長、芝山町長らが集まって、騒音を実体験すると称して調査を行っているが、そこにずっと住んでいる者と、別のところへ帰れる者とでは同じ騒音でも意味がまったく違う。この騒音はとんでもない犯罪だ」と萩原さんは語気を強め、現在進められている深夜早朝の飛行制限緩和策動を弾劾した。
尋問は、市東さんの農地の耕作権解約手続きの問題に入っていった。NAAは耕作者である市東家に秘密裏に旧地主から底地を買収し、十数年も隠し続けた上に、06年に突然地主の顔をして表れて農地法をたてに「耕作権を解約するから土地を明け渡せ」と迫ってきた。「こんなことがあっていいのか! 農地法の精神から言ってありえない」と萩原さんは激しく弾劾した。成田市農業委員会と千葉県農業会議はNAAの言いなりとなって耕作権解約申請を通した。最初から結論ありきの進行だった! 本来農業を育成すべきなのに農地転用機関へと成り下がっていることを、萩原さんは強く批判した。
市東さんが明け渡しを求められている土地の面積は、南台・天神峰合わせて9260平方メートル。この大きさは、71年の第2次強制代執行において大木よねさんが奪われた土地約1900平方メートルの5倍だ。「強制的手段は誤りだったと言いつつ、いまだかつてない規模で農民の土地を収奪しようとする暴挙に、身震いするほどの怒りを覚える。こんなことを許していいのか」と、萩原さんは真正面から裁判長の顔をにらみつけた。
「雨の日も風の日も雪の日も、赤ん坊を育てるように土を耕してきた。それを奪うというなら死を覚悟しても守ることになる。土地は農民の命そのものだ」「戦後の貧しい開拓農民の土地なら札束でたたけば簡単に取れるだろうと踏んで、空港計画を三里塚にもってきた。そのとんでもない思い上がりが、今の市東さんへの攻撃にまで続いている。だからこの空港は完成しないのだ! 空港が国策だというなら、農業は何なのか。国策と言いつつ目先のことばかり追って、その結果が今の成田であり福島原発事故ではないか。食糧をまかなうことは社会の絶対的な基礎にある。農民はそのことに誇りをもってやっている」。かみしめるように語られる一語一語に、法廷内の共感が高まった。
萩原さんは、一昨年の団結街道をめぐる闘いの中で市東さんへの不当逮捕を強行したことを鋭く弾劾した。さらに戦後の農地解放、農地法の制定から、日本農業が衰退の危機に直面している今日までの歴史を振り返り、今こそ農民の連帯、農業の再生を目指すべきことを情熱を込めて訴えた。そしてその中心にあるのが市東さんの農地を守る闘いであり、この闘いの中に、食糧、農地・農民問題の答えがあると大局から語る一方、破綻している成田国際空港の現状を批判してその「公共性」の虚偽を暴いた。
およそ4時間にわたる証言の最後に、萩原さんは「三里塚の地でともに農民としてやっていこうと市東さんを引っ張ってきた責任が、自分にはある。自分が若いときにシルクコンビナート事業への参加を空港建設でつぶされた時に味わったような思いを、市東さんにはさせたくない。市東さんを守ることは全国の農民を守ることだ。私は現代版佐倉惣五郎の気持ちとなって直訴したい。裁判長、あなたが一人の人間としてこの問題を受けとめ判断されることを!」と決意を述べ、傍聴席から大きな拍手が起こった。
若干の確認事項の後に裁判長が閉廷を宣しようとした時、市東孝雄さんが挙手して発言を求めた。「前回の法廷でもNAAに謝罪を求めたが、地主から土地を買収しておきながら秘密にしていたこと、私を一方的に悪者扱いにしてマスコミにさらしたことなど数々の悪行を絶対に許さない。生きる権利をかけて闘う」と意見を述べた。その険しい形相を、NAAの代理人らはまともに見ることもできない。
閉廷後近くの会場で、法廷に入りきれなかった人びとを含めて報告集会がもたれた。葉山岳夫弁護士が顧問弁護団を代表して、萩原証言の大成功を語り、次回2月18日(月)の市東さんの本人尋問、さらに3・24三里塚全国総決起集会への大結集を訴えた。最後に北原事務局長があいさつに立ち、弁護団全員の大奮闘を心から讃え、参加者一同をねぎらい一日の闘いを締めくくった。2月18日、千葉地裁を人民の海で包囲する大結集を実現し、市東さん本人尋問の成功をかちとろう。(TN)
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