三里塚 市東さん農地裁判「明け渡せ」の不当判決。「仮執行宣言」を粉砕
7月29日、千葉地裁民事第3部・多見谷寿郎裁判長は、三里塚芝山連合空港反対同盟・市東孝雄さんの農地裁判において、成田空港会社(NAA)の請求をほぼすべて認めて市東さんに農地の明け渡しと建物の収去を命じる反動判決を言い渡した。千葉地裁は正義、公正の体裁すらかなぐり捨て、完全に農民殺しの空港建設の手先に成り果てたのだ。
そして、NAAが求めていた判決確定を待たずに強制執行を行える「仮執行宣言」については、これを付けることができなかった。
市東さんと反対同盟顧問弁護団は、ただちに控訴して闘うことを明らかにした。
全国・全世界の労働者・農民・学生・市民の皆さん! 腹の底からの怒りを込めて大反撃をたたきつけよう! 一層闘志を燃やす市東さんと反対同盟に連帯して、農地を守る闘いに立ち上がろう!
朝から時おり激しい雨が降る中、千葉市中央公園において午前10時30分から、判決を前にした総決起集会が反対同盟の主催で開かれた。平日にもかかわらず、全国から280人の労農学人民が結集した。
萩原富夫さんの司会で集会が始まり、北原鉱治事務局長のあいさつに続き、市東孝雄さんが発言に立った。「この裁判そのものを私は認めていません。空港のためなら何をやってもいいなどということは許されるはずがない。判決の結果にかかわりなく、私はこれまで通りの生き方、闘い方を続けていきます」。この簡潔な決意が全参加者の胸を打ち、千葉地裁とNAAへの怒りをかき立てた。
顧問弁護団の葉山岳夫弁護士、萩原進事務局次長が判決を迎え撃つ檄を飛ばし、シュプレヒコールで集会を締めくくってデモに出発した。
「耕す者に権利あり/農地を奪う判決を許すな」と大書された横断幕を市東さんをはじめ反対同盟が持ち、デモの先頭に立った。宣伝カーからは婦人行動隊の宮本麻子さんが千葉市民に向けて、反動判決を許さぬアピールを訴え続けた。
雨に濡れながら拳を突き出し、叫び、前進するデモ隊の迫力と一途さが伝播し、沿道の多くの人びとから真剣な眼差しが返された。デモは繁華街から地裁前を、多見谷裁判長を激しく弾劾しながら進んだ。
デモ終了後、参加者は大挙して千葉地裁前に陣取り、市東さんとともに「農地死守・実力闘争」で闘う決意を込め、シュプレヒコールを繰り返したたきつけた。
そして一同の鳴りやまない拍手と大歓声を受けながら、市東さんを先頭に反対同盟と顧問弁護団は、横断幕を広げ、報道陣のカメラの放列の前を堂々と地裁の建物に入っていった。
午後1時30分、601号法廷は傍聴席はすでに満席で、正面に向かい左側には市東さんと顧問弁護団が座っているが、右側にいるのは千葉県の代理人だけで、NAAの代理人は人民の怒りを恐れて欠席を決め込んだのだ。何という卑劣!
ついに多見谷裁判長ら3人の裁判官が現れ、緊張がピークに高まった。多見谷はこわばった表情のまま、判決主文を早口で読み上げた。
「①市東さんが求めていた、千葉県知事の農地賃貸借解約許可処分を取り消せという請求を棄却、②市東さんが耕作する南台と天神峰の農地(計7284平方㍍)をNAAに明け渡せ、③天神峰の土地上の物件(出荷場、離れ、ビニールハウスなど)を収去せよ、④仮執行宣言は付さない」
ただちに法廷は裁判長に対する怒号に満たされた。1分もかからぬ読み上げののち、多見谷は閉廷を宣し即座に逃亡。法廷と連帯し地裁前で待っていた人びとのもとにも第一報がもたらされると、地裁に向けて不当判決徹底弾劾のシュプレヒコールが巻き起こった。
再び反対同盟を先頭に、参加者は千葉市中央公園からデモ行進を行った。「不当判決弾劾!」「仮執行宣言を粉砕したぞ!」のコールが市街に響き渡った。
千葉市民会館の地下ホールで記者会見と報告集会が開かれた。
動労千葉の田中康宏委員長が連帯発言に立ち、「判決を満腔の怒りで弾劾する。反動判決は敵の強さではなくあせりだ。労働者・農民を支配できなくなった支配者の悲鳴だ。高裁での闘いの勝利に向け、東京へ打って出よう」と呼びかけた。
全国農民会議共同代表の小川浩さんは、「農地を守り空港を廃港に追い込むために、市東さんとともに闘う」と決意を述べた。
さらに関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会、沖縄・市東さんの農地を守る会が連帯発言を行った。
北原事務局長は、「今日の闘いは勝利だった。判決に仮執行宣言を付けられないところまで追いつめた。農民が安心して生きられる社会をめざして闘おう」と訴えた。
市東さんが万雷の拍手に迎えられて登壇し、声明文を読み上げた。「控訴して闘います。NAAの不当な請求を認める判決は私から農地を奪うと同時に農民としての誇りを奪い、死ねと言うに等しいものです。私には闘う以外に農民として生きる道がないのです。不当判決には絶対に屈しません。農地の取り上げに体を張って闘う覚悟です」。この揺るぎない姿勢に感動し、全員が三里塚の勝利を確信した。
葉山弁護士は、反対同盟と顧問弁護団連署の声明を読み上げて反動判決を弾劾し、「全力を尽くした裁判闘争、署名運動、現地全国集会、千葉集会、デモ闘争、街宣活動は、ついに仮執行宣言を阻止した」と高らかに宣言し、ただちに控訴して闘うことを表明した。さらに弁護団全員が発言して、判決全文に書かれた諸論点が矛盾だらけであること、例えば、明け渡しを求めている土地に空港敷地外の土地が含まれている問題については、「わずか16%にすぎないから大勢に影響ない」などと、裁判所が勝手にNAAが述べてもいない主張を押し出していることなどを断罪した。記者からは熱心な質問が相次いだ。
最後に萩原進事務局次長が、怒りを全身で表しながら発言した。「この1年間の署名・情宣・集会などの闘いで、仮執行宣言を付けられないところに押し返したが、これは裁判所がNAAと綿密に打ち合わせて書いたとんでもない反動判決だ。絶対に許してはならない! 控訴審の闘いになるが、現闘本部の控訴審判決の時、東京高裁内で起きた50人一斉不当逮捕・弾圧への怒りをわれわれは忘れない。市東さんの悔しさを本当に自分のものとして闘おう。空港のみじめな現実をとことん暴いて、周辺地域から住民が続々と反対運動に参加する情勢をつくりだそう。三里塚は福島・沖縄の闘いと手をつなぎ、日本を変える大きな原動力である労働者の闘いと結合して進む。ともに闘いましょう!」。この激しく熱い訴えに参加者全員が会場を揺るがす大きな拍手で応えた。
最後に司会の伊藤信晴さんの音頭で団結ガンバローを三唱し、意気高く締めくくった。(TN)
この記事へのコメントはありません。