香港職工会連盟が国安法で解散/〝理念と団結精神は失わない〟
2019年に始まった香港の民主化運動の爆発に対して、中国政府と香港政府は今、昨年6月30日に公布・施行した国家安全維持法(国安法)による民主化団体への激しい弾圧を繰り広げている。
民主化団体・労組指導者を次々逮捕
昨年来、民主化人士を次々と逮捕、勾留、起訴し、8月にはこれまで大規模デモを主催してきた民間人権陣線(民陣)、および香港最大の教育労働者の組合である香港教育専業人員協会を解散に追い込んだ。民主派の労働組合総連合である香港職工会連盟も10月3日に大会を開き解散を宣言した。
また香港で六四天安門事件の集会を主催し、その記念館を運営してきた香港市民愛国民主運動支援連合会(支連会)も9月25日の総会で解散を決定した。
この支連会の解散に対して、獄中にある李卓人氏(支連会主席)は「いかなる政権も人民の記憶と良識を奪うことはできない。支連会の理念はそれぞれの香港人の心の中に生き続ける。炎がある限り、希望はある」とメッセージを送っている。また職工会連盟も「職工会連盟の理念と団結精神は、失われることはない」と訴えている。
多くの民主化団体が自主解散を選んだのは、執行部のほとんどが逮捕され、団体の今後の運営自体が事実上困難な状況に入っていることが大きい。
「徹底的に闘いを堅持する」と宣言
だが、これに異議を申し立てたのが支連会副主席の鄒幸彤氏であった。鄒氏は「今の状況では自主解散の方が良い」との主張に対し、「最終的に解散は避けられない。しかし自主解散は、即かつ不可逆的に支連会が声を上げる権利を失うことを意味する」「独裁政権下では、過去の多くの団体が非公認下で正義の声を堅持し上げ続けてきたのだ。これこそ『民心が死ななければ抗争は続く』という民主化闘争の取るべき態度である」「私は〝失わず、忘れず、離れず、捨てず、徹底的に闘いを堅持する〟立場を選択する」として、「解散反対」を獄中から公開レターで会員に訴えた。鄒氏の不撓(ふとう)不屈の訴えは、多くの香港の人々の心を揺り動かした。
明らかに今香港の運動には歴史上最大ともいうべき大弾圧が襲い掛かり、次々と反体制人士が逮捕・投獄され、厳しい状況に入っている。だがこの困難な中で、香港の闘う人々がさまざまな意見の違いを生み出しながらも闘いを総括し、次の段階へどう進むかの議論を必死に主体的に開始している。このことが何よりも重要だ。
「労働者が職場にいる限り、労働運動は続く」などの書き込みがネットでは現れている。この2年間で決起した数十万の人々を沈黙させ続けることなど絶対にできない。まさに「今までの闘いは序章だ。解散は終わりではない、新たな始まり」(職工会連盟)とならなければならない。
香港の闘いがやむことはない。今の困難を乗り越える闘いは始まっている。一方で恒大集団の危機に示されるように中国スターリン主義の危機は深まっている。香港の労働者民衆の勝利は不撓不屈の闘いの中で必ず切り開くことができる。
台湾・桃園市産業総労働組合が香港との連帯訴え
台湾の桃園市産業総労働組合は10月4日に声明を出し、中国政府による弾圧に激しく抗議するとともに、「職工会連盟はしばし解散するが、香港の労働運動は終わらないと信じる」と明言し、台湾・香港・韓国の労働運動の連帯を強く訴えた(以下に全文掲載)。戦争と革命の時代の激動の中で、香港の闘いは中国、台湾につながり、全世界の労働者と必ずや結びついていく。未来をかけて、11月労働者集会を成功させよう!
桃園市産業総労働組合/香港職工会連盟の解散に対する声明
香港職工会連盟は、香港最大の自主労働組合のナショナルセンターの一つで、17万人を超える会員がいる。何年にもわたって、労働者の権益を勝ち取るために各種の抗争・活動を積極的に行ってきた。しかし中国共産党当局は、度々「国家と政権を転覆しようとストライキを先導している」などのでっち上げの罪名で告発し、多くの幹部を起訴し、有罪にしている。国家のこのように暴力的な弾圧の下、職工会連盟は10月3日に大会を招集し、解散を宣言した。
桃園市産業総労働組合は、何年にもわたる職工会連盟との労働運動上での仲間であり、中国共産党政府による香港労働運動団体への弾圧をここに強く非難するとともに、香港労働運動、民主運動が受けている弾圧に憂慮を感じている。
2005年12月、世界貿易機関(WTO)第6回部長級会議が香港で開催され、台湾を含む世界各国から、グローバル化する国家と民間資本の結託に反対するデモ参加者が、香港で激烈な抗争したが、それはその後の15年を超える艱難辛苦にして壮麗に輝く職工会連盟の歴史を告げ知らせたように思える。職工会連盟は、2007年の鉄筋組立労働者の賃金改善とより多くの休憩時間を勝ち取ったストライキ、2013年の埠頭労働者の賃金の改善を勝ち取ったストライキ、2018年の清掃労働者(の待遇改善を求める)ストライキ等以外にも、最低賃金の立法化、基本的労働時間の立法化に尽力し、17日間の法定休暇などを勝ち取り、団交権を回復し、全人民の退職後の保障制度確立などを推進したことは言うまでもない。職工会連盟は多年にわたって民主運動で貢献し努力し、また桃園市総労働組合では多年にわたって学習の対象になってきた。
かつて桃園市総労働組合は、国民党政権期に工場閉鎖に対する労働者の抗争を支援し、民主党政権期に中華航空とエバー航空の客室乗務員のストライキを支援した。最近ではミラマーゴルフカントリークラブのストライキを支援したが、香港職工会連盟は常に海を越えて声援を送ってきた。これは国境を越えた正義の支えあいにとどまらず、さらに権力を持つ政府の問題について現場労働者がきっぱりと批判していく路線を(双方が)同じように堅持することになった。職工会連盟との協力と交流によって、私たちは職工会連盟の現場労働者に対する援助が正真正銘であることを深く理解するに至った。中国共産党当局の多くの攻撃は、正しいものを悪とするためだけではなく、さらに現場労働者の力を恐れた弾圧である。
同じようなことがもう一つある。韓国最大の労働者のナショナルセンターである民主労総は、最近失業した労働者を救おうと闘いに立ち上がって、委員長が逮捕されている。台湾、香港、韓国の三つの地にすべて労働運動があり、またすべて政権当局の猜疑と弾圧を受け、汚名を着せられている。私たちの社会は急激に拡大する貧富の差に直面しているが、しかし政府は人民の生活を直視せず、逆に言論と結社の自由を制限しようとしていることが背景にある。これは完全に間違った方向である。
歴史は、以下の何人かの権力者のデタラメと嘘を記録するだろう。最近桃園市産業相労働組合と関係のある戦闘的路線の労働組合は、民進党とその側に立った勢力の攻撃によって、何度も中国共産党と同じ路線の人物と党派とされた。しかし最近香港政府と中国共産党の意をくんだメディアの報道の中では、職工会連盟が台湾に来て私たちと交流している写真を取り上げて、これは(職工会連盟が)台湾独立勢力、さらには民進党と結託している証拠とされたのである。私たちは党派でもなく何派でもなく、単純に現場で働く労働者の権益のために活動しているが、違う権力者の必要性によって、さまざまなでたらめなレッテルが貼られている。政権を執る者の目には現場の人民を援助する人を見ることができず、彼らは永遠に敵となることを、この事実は完全に証明している。
労働者と人民の闘いを弾圧した政府は、ただその逆の結果を得るだけだと、桃園市総産業労働組合は信じる。“批判を恐れて言論を封じる”ということは、“川の氾濫を恐れて、川を塞ぎ、川を潰す”ことよりもひどいことであり、現場労働者は圧迫の下で反抗に立たざるを得ない。桃園市総労働組合は、中国共産党が香港職工会連盟とすべての自主労働組合の抗争に弾圧を加えることに反対し、中国共産党政府が労働者の集会、結社の自由に制限を加えることを停止することを訴えるとともに、香港の民主社会の発展に関心を持つすべての現場労働者が共に職工連盟の精神を保持し、継続して権益を勝ち取ることを訴える。
職工連盟はしばし解散するが、しかし香港の労働運動は終わらないと信じる。世界中の労働者の一人として、桃園市総労働組合は永遠に皆さんと共にあり、職工会連盟の仲間達が決してあきらめないことを願う。ここには、職工会連盟の皆さん同様に基層人民の権益のために闘う者たちが永遠におり、皆さんのことを忘れない。
桃園市産業総労働組合
2021年10月4日
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