成田拡張差し止め裁判―「原告適格なし」に怒りの反論
千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で12月24日、成田空港拡張差し止め裁判が開かれた。
三里塚芝山連合空港反対同盟はこの裁判で国と成田空港会社(NAA)に対し、①B’暫定滑走路の2500メートルへの延長(2006年)、第3誘導路建設(10年)の違憲・違法性を追及し、②「空港機能強化策」を掲げた施設変更許可(2020年)により現在進められているB’滑走路の再度の延伸(3500メートル化)、第3(C)滑走路建設などの空港拡張工事の差し止めを求めている。
まさに空港の存在そのものを問い直すこの裁判で、被告の国はこの間、B’滑走路の着陸帯の幅が国際民間航空条約(シカゴ条約)で定められた国際標準を満たしていないことについて「遵守義務はない」とし、「我が国の国際競争力強化や訪日外国人旅行者の受入拡大は、経済的価値がある。滑走路延伸には公益性がある」「防音工事の助成や移転補償はNAAがやってる」「航空法は、空港による騒音被害、生活への支障、生命・身体への危険から周辺住民を守るためにあるわけじゃない」と、全面的な居直りの姿勢を表してきた。
そして、原告の一人である伊藤信晴さん(芝山町・白枡地区在住)について「原告適格がない」と難癖をつけ、「いかなる財産権を有しているか明らかにしろ」などと求めてきた。
この日、反対同盟顧問弁護団は、準備書面(55)を陳述し、伊藤さんが1979年に土地を賃借して家を新築し、現在までそこに住み続けてきたこと、地主に地代を支払い、芝山町に固定資産税を納税し続けてきたこと、2024年に建物の登記が行われたことを明らかにした。さらに伊藤さんが住む白枡集落にはNAAによる「全戸移転攻撃」とも言うべき買収交渉がかけられていることを述べ、伊藤さんの居宅と第3滑走路予定地との位置関係を明確にするために、「2020年許可処分にかかる2500分の1の計画図面の提出」を国に求めた。
また弁護団は、周辺住民の深刻な騒音被害を軽視し、データの提出を拒んでいるNAAに対して、WHO欧州が制定した夜間騒音の指標であるLnight(エルナイト、等価騒音レベル)についての見識をただした。
さらに全面的な追及は、次回以降となる。次回期日を3月14日、次々回を7月8日として、閉廷した。
千葉県弁護士会館で報告集会が開かれた。最初に司会の伊藤さんが、79年から住み続けてきた自身の家について語った。「反対同盟の83年3・8分裂で、土地所有者の方は熱田派に加わり、私は敷地内とともに闘う道を選び、考え方では袂を分かった。だが引き続き自分が白枡に住み続けることを認めてくれた」と当時の事情を説明した。
続いて弁護団がそれぞれ発言し、白枡に住み続けてきた伊藤さんに「原告適格がない」などと決めつける被告の国とNAAに対して再度怒りを表した。そして地域を分断し騒音被害を深刻化させる空港拡張に対して、徹底的に闘う意思を表した。
動労千葉、関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会の連帯発言を受け、年度内判決が予想される市東孝雄さんの耕作権裁判についても、必ず勝利することを全体で誓い合った。
集会後、反対同盟と支援連は千葉地裁前に陣取って情宣活動に立ち、「齊藤顕裁判長は農地強奪判決を出すな!」と訴えた。(TN)
スケジュール
◎2025三里塚新年デモ&団結旗開き 1月12日(日)午前10時30分 市東さんの南台農地集合・デモ出発/旗開き 正午開場 福祉センター「やすらぎの里」芝山町飯櫃126‐1 主催 三里塚芝山連合空港反対同盟
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