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三里塚団結街道裁判―最終弁論で廃道の違法性を論証

団結街道裁判開廷に先立ち、反対同盟、支援連、現闘、全学連は千葉地裁正門前で、「耕作権裁判で不当判決出すな!」を訴える情宣活動を行い、最後に地裁に向けて怒りのこぶしを突き出した(2月28日)

千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で2月28日、団結街道裁判が開かれ、15年続いた裁判が今回で結審した。
成田市天神峰の市東孝雄さんにとって、自宅と南台農地を直線で結ぶ団結街道(成田市道・天神峰―十余三線)は営農と生活に必要不可欠の道路であったが、「3本目の誘導路をつくるのにじゃまだ」との成田空港会社(NAA)の意を受けた成田市は、2010年6月にこの道を暴力的に封鎖し、その土地を格安でNAAに売り渡すという暴挙をはたらいた。市東さんはじめ住民が原告となり、その違法を追及し廃道処分の取り消しを求めてきたのがこの裁判だ。
被告の成田市は前日付けで準備書面を提出し、「市東をはじめ原告には原告適格がない」「市東が代替道路を往復することによる時間増加は一日10回往復しても60分程度だから問題ない」となど厚顔無恥の主張を行っている。
反対同盟顧問弁護団は怒りを胸に、この裁判の集大成となる最終弁論に立った。
被告成田市の団結街道廃止は、道路法10条1項(一般交通の用に供する必要がなくなつたと認める場合においては、当該路線の全部又は一部を廃止することができる)に違反する。団結街道は現に市東さんだけでなく近隣住民に利用されてきた。「廃道当時、1日平均120台前後の車が頻繁に通行しており一般通行に用いられていた重要な道路」であった(市東さんの証言)。市は「総合的考慮の結果だ」と強弁するが、実際に交通量も調べておらず、空港機能強化のために住民の生活を犠牲になってかまわないということだ。
「機能補償道路」を造ってやったから問題ない、という居直りも許せない。市が市議会に廃道の議案を提出したのが2010年2月16日。だが、この時点では機能補償道路はまったく完成しておらず、実際に供用されたのは1カ月後だ。
本件道路廃止は、09年7月の四者協議(国交省、NAA、千葉県、周辺9市町)で決定され、第3誘導路建設に間に合わせようとしたものだ。その責任は空港利益第一の市政を続けてきた小泉一成市長にある。

破壊された団結街道、市東さん宅、南台農地、そしてB滑走路、第3誘導路の位置関係

かつてこの法廷で、市の中村壽孝元土木部長が証言したが、何を聞いても「知らない」「覚えていない」「分からない」の繰り返しで、証言の体をなしていなかった。それはこの道路廃止を「政治案件」として扱い、住民の生活は眼中にない小泉市長の「専権」で進められたからだ。
被告成田市とNAAは、成田空港の機能強化(敷地拡張、さらなる容量拡大)に公共性があると主張するが、実際には地元住民の圧殺、生活破壊であり、公共性の名による公共性破壊だ。年間発着回数30万回化を掲げた第3誘導路建設、そのための団結街道廃道は違憲・違法だ。
日本経済の伸びは現在止まったままであり、「増大する航空需要に応えた機能強化、それが日本経済成長を活性化させる」などということももはや空語だ。
公共性とは、それなしには人間社会が存在しえないという生存基盤にこそ宿るのだが、NAAという企業の営利追求のための空港は公共性破壊の存在だ。市は空港依存の現状をやめ、人民の生活と権利を守る自治体の原点に帰るべきだ。
農業にこそ公共性がある。新東京国際空港が成田に決定される前年1965年に北総地帯は、耕地面積において県全体の約50%を占め、農業生産額も全県の50%を生産する農業地域であった。東京市場における野菜入荷量の20%を千葉県が占めているが、その主産地は北総地帯であり、まさに「首都圏の台所」としての機能を果たしてきた。農林省自身が65年に「三里塚とその周辺の畑作農業は、日本の農業の一つの将来像を託するに値するところと考えられる」と位置づけていた。
今、天神峰・東峰の農家が、空港によって苦境を強いられ、市東さんに至っては生産手段としての農地そのものがはく奪されようとしている状況だ。
しかし農業を営む権利として、「営農権」が憲法的権利の保障として認められなければならない。市東さんの農地に対する小作権は「営農権」の一側面をなす「生存権的財産権」に当たる。市東さんから農地を奪うことは生存権の否定、そしてそれにとどまらず市東さんの人間性の否定だ!
以上のような弁護団の根本的な批判・追及に追いつめられ、被告の市とNAAの代理人は視線を手元に落としたままだ。
さらに弁護団は、機能強化によって生じる騒音の激化が、空港周辺住民の生活と健康に及ぼす影響の甚大さについて具体的に明らかにし、騒音総量で成田は厚木基地の10倍にもなることを突きつけた。そして市東さん自身が巨大な騒音被害を被っていることに対して、被告らが「そういう場所だと分かって天神峰に戻ってきたのだから市東は人権享有の主体ではない」と切り捨てた暴言を確認し、心底から断罪した。
違法な団結街道廃道処分を取り消すよう迫り、弁護団は陳述を終えた。
また弁護団はこの日、元立教大学教授の石原健二さん(農業経済学)、専修大学教授の内藤光博さん(憲法学)の意見書を裁判所に提出した。
岡山裁判長は弁論の終結を宣言し、判決日を7月25日、午後2時開廷と指定した
裁判報告集会が千葉県弁護士会館において伊藤信晴さんの司会で開かれた。

千葉地裁民事第3部・岡山忠広裁判長

弁護団がそれぞれ発言し、3時間に及ぶ陳述を余すところなくやりぬいた勝利感を湛えながら、しかし油断はできないこと、引き続き判決日まで千葉地裁に不当判決を出させない闘いの継続が必要であることを強調した。
連帯発言で動労千葉副委員長の中村仁さんは、「鉄道を必要とする人が一人いれば廃線からそれを守り抜くのが公共性。一方で空港が『公共性』を振りかざして一人の農民の農業を妨げるならそんな空港はいらない。市東さんの農業を続ける決意を受けとめて、判決日に向けともに闘おう」と訴えた。
市東さんの農地取り上げに反対する会に続き、全学連の渡辺祥英書記次長が発言に立ち、不当逮捕されていた京都大学7人の学生全員がこの日奪還された勝利を報告した。続けて、「団結街道裁判や耕作権裁判が始まった時はまだ生まれていなかった仲間も、全学連の隊列に参加している。成田を中国侵略戦争へ向けた軍事空港にさせない。反対同盟とともに3月24日の耕作権裁判判決に勝利し、今年前半の反戦闘争を爆発させ、南台農地決戦、団結街道裁判の勝利へ闘う」と鮮明な決意を表した。
最後に伊藤さんが「京都大7学生の奪還、関西生コン支部の無罪判決、この波に乗って3・24判決の勝利へと進んでいこう!」と全員に呼びかけた。
開廷に先立ち、反対同盟、支援連、現闘、全学連は千葉地裁前情宣活動に立ち、「耕作権裁判で不当判決出すな!」と熱烈に訴え、最後に地裁に向けて怒りのこぶしを突き出した。(TN)

スケジュール
◎空港拡張差し止め裁判 3月14日(金)午前10時30分開廷 千葉地裁
◎耕作権裁判判決 3月24日(月)正午 千葉市中央公園集合→市内デモ 午後2時開廷 千葉地裁601号法廷
◎3・30天神峰現地闘争 3月30日(日)午後1時 市東さんの南台農地集合 NAA本社へ向けてデモ 主催/三里塚芝山連合空港反対同盟

閉廷後の報告集会で反対同盟顧問弁護団があいさつ

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