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成田空港拡張差し止め裁判―「運航計画未定」と開き直る被告国・NAA

空港拡張差し止め裁判閉廷後に行われた報告集会(7月8日 千葉県弁護士会館)

千葉地裁民事第3部(岡山忠広裁判長)で7月8日、成田空港拡張差し止め裁判が開かれた。この裁判は、三里塚芝山連合空港反対同盟が被告の国とNAAに対し、「成田空港の更なる機能強化」に伴う国の施設変更許可(2020年)の無効確認とB滑走路延伸(3500メートル化)、新滑走路(C)建設など一切の工事の差し止めなどを求めるものである。
この間被告の国は、原告である反対同盟の伊藤信晴さん(芝山町白桝地区在住)に対し「原告適格がない」などという許しがたい主張を行ってきた。
反対同盟顧問弁護団は今回、準備書面57を陳述し、以下の内容で反論を行った。
2020年の施設変更許可の主な内容は、飛行場の総面積を1198万平方メートルから2297万平方メートルにするという巨大な拡張計画であるから、2500分の1程度の「工事設計図書」=地図を必ずつくったはずなのに、被告の国はそれを今もって明らかにしていない。直ちに裁判所に提出せよ。
その一方で国は原告伊藤さんの自宅とC滑走路予定地の位置関係を示す粗い図面を提出したが、これを見ただけでも、伊藤宅から約150メートルの近くに「空港敷地境界線」が走っており、伊藤さんの生活環境を破壊的に激変させることは明らかだ。伊藤さんら関係住民に対し、いまだに工事計画の説明もしていない国の態度は許しがたい。

岡山忠広裁判長・千葉地裁民事第3部

また被告NAAは、「今後滑走路Cを新設し、Bを北延伸した後の航空機の運航計画は未定であり、現時点で航空機騒音の影響を論ずることはできない」と主張する。
だが被告NAAはすでに「年間発着回数50万回化のための機能強化」として、深夜早朝の発着回数を「22時台~0時半に90回」「朝5時台~6時台」60回、計150便という予定を発表しているのだ。
運航計画が「未定」などととぼけることできない。
またNAAは、伊藤さんに対し、この訴えを行う上での「法律上の利益を有するとは認められない」と繰り返している。航空法では空港の設置について、「他人の権利を著しく害することにならないものであること」とされているが、これを狭く解釈し、土地などの所有権があるかないかだけを問題にしているのがNAAだ。だがこれは周辺住民の人格権を無視した、まったくの誤りだ。この巨大滑走路によってもたらされる騒音がどれだけ住民の生活を破壊し健康をむしばむかを無視することは許されない!
さらに弁護団は北海道大学大学院助教の田鎖順太博士が作成した「成田国際空港周辺の2015年度から2019年度までの夜間騒音暴露状況と住民の健康影響に関する意見書」を、裁判所に提出した。この中で田鎖博士は最新の科学的知見を踏まえ、深夜騒音による睡眠妨害のリスクを検討し、結論として「現在計画されている成田空港の機能強化は、住民の健康を保護するという公衆衛生の観点からきわめて危険である」と断定している。
千葉県弁護士会館で伊藤さんの司会で報告集会が開かれた。
岡山裁判長は被告国に対し、騒音被害への補償や女性の具体的手続き、機能強化後の運航計画がいつどのようにきまるのかなどを、次回までに明らかにするよう求めた。住民無視の姿勢を当然のようにとり続けてきた国とNAAの代理人は、無表情を装っているが、内心の動揺は隠せない。
次回期日を10月3日、次々回を1月20日と確認して閉廷した。
千葉県弁護士会館で、伊藤さんの司会で報告集会が開かれた。
顧問弁護団がそれぞれ発言し、空港周辺住民の生活と健康への破壊をもたらす機能強化、年間50万回発着を絶対に許してはならないことが強調された。
また、千葉地裁で不当判決が出された耕作権裁判について、一件記録が東京高裁に届いたこと、高裁の第14民事部への係属が決まったこと、一審だけで十数年間も長く続けられてた裁判であることから控訴理由書の提出期限を来年3月までとするよう弁護団が申し入れたことが報告された。
さらに、7月25日に千葉地裁で団結街道裁判判決が岡山裁判長によって出されること、また9月19日には東京高裁で国鉄1047名裁判控訴審の第一回が開かれること、一発結審を許さぬために動労千葉から高裁を包囲する大結集が呼びかけられていることが確認された。(TN)

◎第3滑走路建設阻止・フィールドワーク 7月16日(水)午前10時 成田市天神峰 市東さん宅前集合 呼びかけ/三里塚芝山連合空港反対同盟
◎団結街道裁判 7月25日(金)午後2時開廷 判決 千葉地裁

成田機能強化・空港拡張計画

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